
名作劇場「童話の世界から:日本編」vol.5「花咲かじいさん」
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人は子どもがいなかったので、シロというイヌをとてもかわいがっていました。
ある日、シロが畑でほえました。
「ここほれワンワン、ここほれワンワン」
おじいさんがほってみると、なんと、地面の中から大判小判がザクザクと出てきたのです。
この話を聞いた、となりの欲ばりじいさんが、
「わしも、大判小判を手に入れる。おめえのシロを、わしに貸してくれや」
欲ばりじいさんは、シロを無理矢理畑に連れて行きました。
そして、いやがるシロがキャンキャンないたところをほってみると、くさいゴミがたくさん出てきました。
怒ったよくばりじいさんは、なんと、シロを殴り殺してしまったのです。
おじいさんとおばあさんは、なくなく、シロを畑にうめてやると、棒(ぼう)を立ててお墓を作りました。
次の日、シロのお墓の棒が、ひと晩のうちに大木になっていたのです。
おじいさんとおばあさんは、その木で臼(うす)を作って、おもちをつきました。すると不思議な事に、もちの中から宝物がたくさん出てきました。
それを聞いた、欲ばりじいさんは、「わしも、もちをついて宝を手に入れる。おめえの臼を、わしに貸してくれや」
と、臼を無理矢理かりると、自分の家でもちをついてみました。
しかし、出てくるのは石ころばかりで、宝物は出てきません。
怒った欲ばりじいさんは、臼をオノでたたきわると、焼いて灰にしてしまいました。
おじいさんは、「枯れ木に花を咲かせましょう。パアーッ」と、いいながら、次々に灰をまいて、枯れ木に美しい花を咲かせました。
とても有名な民話で、ジャンルとしては「動物報恩」と「隣の爺型」に分類されます。
室町時代末期から江戸時代初期にかけて成立したとされる勧善懲悪のお話です。
元ネタは、韓国の昔話では灰をまいて雁をおとしたり、花を咲かせることはないが、中国の南部には最後に花を咲かせる話がある。 こうしたアジアの昔話が日本に伝わり、『雁取り爺』が『花咲か爺さん』へ姿を変えていったのだ、とのこと。
純粋な気持ちではなく、お金目当てで行動するとろくな目にあいません。
同じ行動をしていても、欲張りな夫婦は利益のために心優しいおじいさんの
行動だけ真似ます。
しかも、シロを死なせたり、人のものを奪ったり、自分勝手な行動ばかり。
そんな人間には、良いことは起こらないということが描かれています。