理系大学院から文系就活
研究職を目指す人が多い中で…
1. プロフィール
国立大学薬学部 (4年制) を卒業し、同じ大学・研究室の大学院に進学。周囲が製薬企業の研究職を目指す中で、文系就活をもくもくと続け、最終的にスカウトを頂いた製薬企業から、MR (Medical Representative, 医薬情報担当者、おおよそ営業職) としての内定を頂きました。
運に恵まれていた就活であったので、再現性はあまりないかもしれませんが、同じく理系院から営業職や総合職を考えている人に届いたらいいなという思いで書きました。
こんな人もいたよ、くらいに読んでみてください~
2. きっかけ
ぶっちゃけ、実験が向いていなかった。
学部の研究ではもの足りないと院進しましたが、新規性やデータの追求が常に求められるのがきつかったし、きれいな結果が出ず実験やり直しを求められ、実験を繰り返す度にこれは無理だとという思いが強くなっていきました。また、周囲に優秀な同期や後輩が多く、自分の下手さに嫌気がさしてしまいました。
一方で、自分の強みが「人と話すこと」「説明したり教えたりすること」「英語でディスカッションすること」であったため、研究職ではないと考えました。私自身、もっともやりがいを感じたのが、オンライン英会話講師や飲食店での接客業でしたので、より人と関わる機会の多い職種に就きたいと考えました。
また、OB訪問で営業職としてお勤めの方にお話を伺い、給料やキャリアの幅も文系職の方が恵まれているように感じていました。
3. 実際の就活
出遅れたくないとの思いから、動き始めは早かった方だと思っています。修士課程に進んですぐに、インターンの情報を集めたり、ESを書き上げたりしていました。ESは学校内の添削サービスを何度も利用したり、先輩方にお願いして辛口コメントをもらいつつ、修士1年秋までには仕上げました。
ただ、やりたいことがはっきりしていなかったので、自己分析に多くの時間を割きました。なにに興味を惹かれるか、実験が好きになれないという感情はどこから来るのか、ノートを相手に何度も書いて整理しました。
OB訪問も業界を絞らずに、いろんな社会人に会いました。薬剤師、MR歴30年のベテラン、ベンチャー企業の社長、総合商社・専門商社の社員複数名、メガバング・大手保険会社の営業マン、外資系コンサルタント、人材会社の若手社員、メーカーの総合職として勤務されている方など。50人は超えていると思います。
しかし…
修士1年3月の就活が山場を迎える頃になっても「自分がなにをやりたいのか」の答えは見つからなかったため、本選考でも業界を絞らずにエントリーしました。商社・金融・メーカーなど計40社くらい。
OB訪問した方の1人から、内々定もらってから行くかどうかは考えればよいのだから少しでも気になるところは出しておけ!と言われたので、数で勝負しました。
面接していくうちに、この業界は違うと気付くことがあり、悪くはない戦法だったと思います。
また、スカウト型の就活サイトOffer Boxへの登録も行いました。あまり名の聞かない企業からしかオファーが来ないので、参考程度にしていましたが、とある有名メーカーからお声がかかったのをきっかけにプロフィールを丁寧に埋めるようになりました。
これが救いとなるだなんて思ってもいなかった!!
4. 大変であったこと
営業職採用に理系院卒は不利であったので、やはり面接で詰められると厳しかったです。
院卒の新入社員は、高い初任給をもらえますが、大学院での2年間は営業職に応用できるスキルを習得するわけではありません。それゆえ、企業が給与を多く出すメリットを見出せないといった理由からです。
また、理系院卒で総合商社に採用されていた内定者やOBOGは、成し遂げたいことが大きすぎて、自社製品のみを扱うメーカーの研究職では叶えられない、といった前向きの理由でした。一方、文系就活の本音が「研究から逃げたいから」であった私は自然と困難な戦いになりました。
それゆえ企業数をこなさなくてはならず、落ちた面接のたび疲弊してしまいました。大学院の研究が半年ほど手つかずでしたが、幸い先生からサポートをしていただけました (就活後必死に巻き戻しました)。
また、人間性が特に評価される文系就活では、自分に強いガクチカ (学生時代に力を入れたこと) がなかったため、学部時代の数少ない経験からエピソードを作る必要があり、ネタが尽きてしまったことも。小・中・高時代からどんな人だったかを聞いてくる面接もあり、塾・予備校漬けだった自分は、もっとあんな挑戦こんな挑戦しておけばよかったと後悔しました。
5. 内々定まで
40社ほど受けましたが合格をもらったのは、CRA (臨床開発モニター) 2社、IT外資 (営業職) 1社、内資製薬 (MR) 1社のみ。CRA2社とIT外資1社は、選考時期が早かったため、面接練習として受けていたからで、なぜそこを受けたのか特別な理由はなかったです。
結果だけ見ると、薬学系を専攻し、MRとして製薬企業に就職するというよくあるルートであり、商社や金融からの内々定を取ることはできなかったので、文系就活が成功したとはやや言い難い。総合商社の最終面接までいくこともできましたが、おそらく熱量が足りなかったのでしょう。
内定先となった内資系の製薬企業では12月にOfferBoxよりスカウトを頂き、1月に面談、3月から選考を受けました。国内外で医薬ビジネスやりたいと言って、唯一自分を認めてくれた企業でした。
製薬企業が文系職種として新卒に門を開けているのはMR職のみであり、基本的にMRメインのキャリア、海外に行く機会はまずない、MR不要論が叫ばれているといった理由、さらに理系はもう向いていないんだという思い込みから、製薬企業はここ以外受けませんでした。
6. なぜその企業にしたか
行きたいと思える企業の内定は1社だけであったからです。
中堅製薬企業として経営基盤が強固であり、株価も高く、給与も年々上がっているので期待が持てました。大手でも新薬開発が順調ではなく、MRを筆頭に大量リストラ・早期退職が行われている企業もあることを踏まえると安心材料になりました。
また、内定先の企業は少数精鋭であり、私の最終面接時「ぜひ君には英語力を生かして、入社5年を目途に海外へ行ってほしい」と言ってもらえ、嬉しかったのも決め手でした。
7. 面接で聞かれたこと
1次面接
学生3人で集団面接。医薬品に関するテーマで15分ほど簡易的なGD (グループディスカッション) を行いました。
主導権を取りにいったこと、自分の意見を述べつつも他2人に意見を促したことが高評価につながったのかもしれない。
2次面接
ベテラン社員2名と。はじめに自己PRを3分間程。それに基づいて質問をいくつか。面接は5月上旬であったので、自分の「雛型」というものは決まっており、それに沿って胸を張って伝えました。
2人の面接官の方に英語学習をほめていただき、
「なぜ英語をやってきたの?」
「英検1級はどうやって勉強したの?」
と私の大好きなお題について話した。終始朗らかな雰囲気でした。
MRの方と座談会
現役MRの方2名とお話しました。MRに絞った就活をしていたわけではないので、仕事のやりがいや失敗談など気になることを時間の許す限り教えていただきました。これまで人事のスタッフとしか話してこなかったけど、温厚な人柄な社員が集う企業だというのは伝わってきました。
最終面接
5月下旬頃。役員の役員の方2名と。ほぼ内定が確定していたのか、ずっと笑顔でいてくださり、雑談して終了。
役員の方がその場内定を下さいました。初めてのことだったらしく、人事の人があたふたしていました笑。まだ受けたい企業あるなら、そちらを見てきてからでもいい、私達待つので。これほど自分と働きたいと心から伝えてくれる企業に出会えて本当に良かったです。
海外駐在している社員との座談会
最終面接で合格をもらったのが5月下旬で、総合商社の面接が6月からなので、それまで待っていただきました。人事の方から、会いたい社員はいないか、日程を調整するのでと言われ、お言葉に甘えて、アメリカ駐在中の社員とZoomでお話ししました。
漠然と海外で働きたいと思っていましたが、海外オフィスの雰囲気や実際の業務、英語での会議の頻度等を聞いて、具体的なイメージを掴むことができました。特別に時間を割いてもらったことに感謝しています。
なお、海外で働く場合はMRとしてではなく、MA (Medical Affairs, 製薬会社において、新薬の開発から市販後のマーケティングまでを行う) やMSL (Medical Science Liaison, 製薬企業と臨床現場との中立的な立場から情報提供し自社製品や自社の価値を高める仕事を行う) などとしてです。
8. 就活を振り返って
内定先の企業での面接では、なぜMRになりたいのか、理系院卒なのに研究職ではないのかは聞かれませんでした。一貫して「国内外で医薬ビジネスをしたい」と伝えていましたが、企業の求める人物像とマッチしていたのではないかなと想像します。
結論、英語をやっておいてよかった。マジで救われました。
今後の就活生にアドバイスするならば
・勉強や研究以外にもバイトや留学など多くの経験をしよう
(私は自分を表す具体的なエピソードが少なくて苦労したため)
・学生の特権を活かし、社会人にたくさん会って視野を広げよう
(質問力も鍛えられるし、一石二鳥です)
かなり大変な就活でしたが、選んだ道を正解にしていきたいと思います!
春からも頑張るのだ~