神戸市と福岡市の比較(廃棄物分野)(1)


1. はじめに

循環型社会を作るためにはリデュースはとても大切ですが、自治体別にリユースやリサイクルなど3Rに関するデータが環境省から公開されています。そこでは神戸市と福岡市のリサイクル率がそれぞれ12%と7%となっています。かなり大きな差があります。政令指定都市では、そこを比較していきます。

2. 2022年のデータから

環境省のデータをみると2022年に大きな変化がありました。「差があります」ではなく、正しくは「差がありました」です。下の図は、環境省のデータから作成した2018年から2022年の5年間のリサイクル率の推移です。ずっと7%台でした。そもそも神戸市と福岡市を比較したのは人口規模が150万くらいほぼ同じなところから比較することにしました。

図1 神戸市と福岡市のリサイクル率の推移

人口50万以上の都市ではリサイクル率が最も高い都市は千葉市です。千葉市のリサイクル率が34%台なので2021年までの福岡市の5倍以上差がありました。それでは、福岡市が3Rの実践で劣っているかと言えば、またそれは違うと考えます。

3. 都市によって異なる廃棄物回収

理由としては、福岡市のHPでも掲載されている「ふくおかの環境(環境に関する年次報告書)」は、2022年から10年間はリサイクル率が30〜32%で推移しています。一方で、神戸市ではやはりHPでごみ量の推移・速報値から見ることができます。ここでは、リサイクル率は書かれていません。しかし缶・びん・ペットボトルや容器包装プラスチックはリサイクルされます。また、燃えないごみなども一部が分別されてリサイクルされることになります。また、新聞や雑誌などの古紙はカウントされていません。下の写真のように地区で集められ回収業者に渡されます。地区によっては町内会で同様に回収されます。

図2 古紙や段ボールの集積場(神戸市)

4. 環境省が定義するリサイクル率

環境省ではリサイクル率は、次のとおりです。
リサイクル率 R=(直接資源化量+中間処理後再生利用量+集団回収量)/(ごみ処理量+集団回収量)×100
神戸市のデータは少し読みにくいのですが、環境省から出ているものを見ると14%となっていました。比較しやすいので2022年と2021年の福岡市のデータと環境省に掲載されたデータを突き合わせてみます。

① 環境省のデータから

環境省のデータはでは、ごみの総排出量は2021年が49.5万トンから52.5万トンに増加しています。特筆すべき箇所は直接資源化量が11トンから31,649トンと大幅に増加しています。内訳として11トンは紙類のみだったのが、2022年には紙類が10,694トン、その他20,901トンに増加しています。集団回収や中間処理後では大きな差がなく、この項目が前年度から大幅なリサイクル率の上昇の要因になったことがわかります。

② 福岡市のデータから

福岡市の報告書では、2021年と2022年のごみ処理量はそれぞれ51万トン、50.6万トンになります。そこにリサイクルされるごみ発生量は、は74.8万トン、72.5万トンでうちリサイクルされるごみがそれぞれ24.1万トン、 22.1万トンに推移しています。
ごみの発生量=ごみの処理量+リサイクルしたごみ量ー重複分
リサイクルしたごみ量とごみの発生量で割ったものをリサイクル率
としています。福岡市のデータでは、2021年から22年に大幅に増えたものはありません。4つの数字を見るとまず数値が異なることが明らかです。環境省のごみ総排出量と福岡市のごみの発生量の数値がかなり異なります。環境省の直接資源化量と中間処理後再生利用量と集団回収量の総和も大きく異なります。推測できることは、福岡市の基準で計算するリサイクルと環境省が作った全国統一の基準では計算方法が異なるためだと考えられます。実態として〇〇が特に良くてなどは特別な場合を除きあまりないと考えます。

まとめ

政府の環境政策から地方公共団体間の条例とは整合性があるので、都市間での政策にも類似性があると考えます。もしそうであればリサイクル率が3〜5倍も違うということはないと考えた方が良いです。実際に複数の自治体職員にインタビューしたときは、統計上の数字が高くなったり低くなったりすると言うことを聞きました。次回は神戸市と福岡市のごみ収集について書きます。


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