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奈良+αへ【旅記録】

旅の発端

 唐招提寺の鑑真和上像特別公開でともに見ることができる東山魁夷の障壁画を見たかったから。

ちょうどキャンペーン中だった

一日目

①唐招提寺

写真撮影不可のところが多かった

 偶然にも鑑真大和上の入滅された旧暦5/6に参拝することができた。まずは本尊である盧舎那仏を拝み、続けて左右の薬師如来立像、千手観音像にも手を合わせる。夏も近づく真昼のこと、人も多く周囲の声も聞こえるというのに、金堂内の三像の静謐な空気がひんやりと肌に伝わってきた。
 御影堂では、存分に東山魁夷の障壁画を堪能した。宸殿の間では国宝である鑑真和上座像に順番に祈りをささげることができるのだが、人によってはとても熱心に手を合わせる人もおり、今なお信仰を集める鑑真大和上の遺徳に感動した。宸殿の間は「濤声」の襖絵に囲まれており、隅から隅まで観察した。東山魁夷の水の表現は素晴らしい。青の使い方が幻想的で惚れ惚れする。隣の上段の間の「山雲」の障壁画もとても良かった。黒に見えるほどに深い青みどりの山間から立ち昇る霧は見た者に日本の伝統と自然の神秘を教えてくれる。つい、記念に障壁画の写真はがき数枚と一筆箋を購入した(ちなみに御影堂への拝観する際に記念品として不定形の写真はがきを貰える)。他にも素敵な襖絵があるので、気になる方は是非行ってほしい。毎年6/5~6/7に御影堂は公開している。

新宝蔵

 新宝蔵では奈良時代の仏像などを見ることができる。有難いものだとわかっていても腕のかけた像などが少し怖かった。

②薬師寺

 唐招提寺の隣近所にあるお寺。敷地が広く、東塔(国宝)と西塔を有する薬師寺式伽藍が壮大で美しい。御朱印を書いていただいた人の筆運びがこれまで見たことがないほど流麗であり、とても強く心に残っている。

驚いたことにコラボしているらしい
「薬屋のひとりごと」面白くて好き
来年、アニメ二期があるので楽しみだ

③Café 橿乃杜

ヤマトポークの冷しゃぶ野菜うどん

 橿原まで移動して少し遅めのランチ。
 橿原神宮境内 崇敬会館内にあるカフェで休憩してから参拝へ。

④橿原神宮

 二回連続お寺がつづいたからか、橿原神宮についたときには明らかにお寺とは空気が違うと感じた。神と仏、どちらの教えに対しても無知であり、霊感もない自分でも何かを感じることがあるのだという発見があって面白かった。

 境内には深田池というため池があり、橋の上で手を振ると餌を貰える思った亀がたくさん寄ってくる。何なら、歩くとついてくる。近くの森は鳥の声が激しく、森近くの地面には鳥の糞が大量に落ちている。愉快でスリルある自然が楽しめる。

⑤久米寺

 橿原神宮近くにあるお寺。名前に惹かれてお参りした。
 久米仙人伝説という面白い由来があったり、空海ゆかりの寺だったりと色々と縁起の多いお寺だった。

⑥中谷堂

 宿に向かう途中、駅前の人だかりを何だろうと見たら和菓子屋さんだった。つきたてのよもぎ餅を購入。ほっかほかもっちもちで薫るよもぎの風味が最高だった。財布をしまう前によもぎ餅を受け取ろうとしたら店員さんがしまってからでいいですと親切にして嬉しかった。帰宅後のテレビで外国人に高速餅つきが人気だと紹介されていた。

⑦しゅん坊

利き酒
鳥の刺身ハーフ

 夜ご飯に居酒屋もとい利き酒がしたくて入店。利き酒は一番右端の春鹿が好みだった。お冷がなくなるとすぐに注いでくれるため、悪酔いせずにすんだ。これ以外にも丁寧なサービスが随所に見られ、ひとり客だったが肩身の狭い思いをせず、ゆっくりと食事を楽しむことができた。

二日目

①シアトルズベストコーヒー

紅茶とセサミクロワッサンハム&チーズ

 野菜の入った健康的なものを朝ご飯にしたいと思い、入店。ゴマの香ばしさがパン生地と具材を引き立てており美味しかった。東京にもあるようなので、また行きたい。

②東大寺

 奈良といえばここを行かずにどこへ行く!
 朝一だったため、人が少なくて自由に観光できた。同じタイミングで大仏を見に来た小学生の一群は「これはお金を出す価値がある!」と興奮した様子でお賽銭を出してお参りしていた。

手前の一本、私が立てました
蝋燭も奉納
柱の穴くぐり
最初の一回はうまくできず、親切な夫婦に引っ張ってもらった
鐘楼(国宝)
二月堂
法華堂(三月堂)

 東大寺は大仏殿以外にも様々なお堂が敷地内にある。
 写真のほかに四月堂にも参拝し、各場所で御朱印をいただいた。できれば正倉院も見に行きたかったが、遠かったので断念。

③東大寺ミュージアム

ミュージアム前にある東大寺大仏さま実寸大の手

 常設展からして、重要文化財から国宝のオンパレード。奈良の文化の深さを思い知った。この前後の寺社巡りも含めて、一生分の仏像を見た気がする。

④茶房 暖暖(Sabo Nonnon)

ほうじ茶の茶粥御膳

 奈良の名物を食べたいと思い、訪問。
 茶粥は思った以上に量があるうえに熱々で、食べきるのが大変だった。普段は食べないような味でなかなか新鮮な体験だった。

⑤志賀直哉旧居

 志賀直哉自らが設計し、9年間暮らした住宅。
 どの部屋も明るく開放的で、住み心地がよさそうだった。文豪は家にこだわる者が多いが、その中でもシンプルかつ機能的な家ではなかろうか。本人の気質が伝わってくるようだ。

「記念碑の類は断れ」という遺言により遺品などの展示はない
志賀直哉らしいな、と少し思った
二階からの景色

⑥新薬師寺

入り口に「鹿が入らないように」とあり、
奈良ならではだと思った

 薄暗い中、照らされた十二神将立像の姿には迫力があり、実に見事で不可思議な力が空間に満ちているようだった。信心深くなくとも圧倒される何かがあった。もし自分が仏の教えに深かったならば、何か見えただろうか。

⑦春日大社

三千基もあるらしい灯篭

 寺の暗がりから出てきたためか、異様に明るさを感じて眩しかった。
 鹿みくじを引いたが末吉だった。うん。鹿が結ばれたおみくじを食べていて、止めていいものか悩んだ。止める前に食べるのをやめた。これまでの寺社仏閣のなかで一番外国人観光客が多かったと思う。

⑧kakigori ほうせき箱

大人の抹茶DX(ラム酒抜き)

 奈良といえば、かき氷ということで入店。
 こういったかき氷は初めて食べたが、とても良かった。食べても食べても、抹茶の味が尽きないうえに中にはマスカルポーネクリームが入っている。上にのったミルクエスプーマも滑らかで美味しかった。

⑨興福寺

 仏像は昔、色や金箔が全身にあったというが、ここでは全身が金色の釈迦如来坐像を見ることができた。これまで色の落ちた仏像ばかり見ていたからか、どこか不思議な感じがした。

➉元興寺

色の変わっている瓦が飛鳥時代のものだという

 参拝券を買う際に職員の方が見所をすべて教えてくれたので、楽しく参拝することができた。

⑪今西清兵衛商店

 500円で5種類の利き酒をすることができるお店。
 最後は奈良漬けも食べることができる。

⑫鹿せんべい

よく見ると三匹いる

 奈良に来たら、鹿せんべいを鹿にあげなくてはいけない。
 そう思った自分は17時以降も鹿せんべいを売っている場所を見つけるために東大寺付近まで歩き、鹿せんべいを購入。鞄に即座に仕舞うと、何食わぬ顔をして広場の奥まで進み、なるべく鹿の少ない場所まで行った。あまり人に興味なさそうにだらけて座っている鹿を見つけて、鹿せんべいを解放。解放時、手間取っているうちに目の間の鹿が覚醒。立ちあがって近寄ってくる。最初の一枚は直に口許に加えさせることに成功し、二枚目をやろうとしたとき、遠くから走って近寄ってくる鹿二号を発見。さらに反対方向から鹿三号も登場。もはや恐怖でどうしようもなくなり、残った鹿せんべいをすべて地面にばらまいて逃走。三匹は鹿せんべいを争い、前足で相手を蹴りつけるなどして狂暴化。写真は鹿せんべいをすべて食べ終わったにも関わらず「何やお前」とにらみ合う二匹+一匹(遠くから撮影)。

⑬カフェ コジカ

大和牛と大和ポークの特製煮込みハンバーグ

 ハンバーグが食べたかったので入店。煮込みハンバーグで雑穀米が進む進む。美味しかった。

三日目

①長谷寺

 花の御寺として多くの参拝者が集うお寺。このときはちょうど紫陽花の時期であり、信じられないほどの人でごった返していた。
 高所にあり、山に囲まれているため景色がよく爽快だった。その分、駅から遠く、行くのは大変だった。見事の紫陽花は種類が豊富でどれも綺麗であり、自分のお気に入りを見つけては写真に撮っていた。ご本尊の十一面観世音菩薩も大きく立派であり、苦労して来たもしくは辛い修行をしたと思った人ほどこの仏のお姿に圧倒されて有難く思えるのだろうなと感じた。

②今東光資料館

 学生時代からの川端康成の友人であり、新感覚派のうちの一人でもあった今東光。展示にも勿論、随所に川端康成の名前がある(新思潮に今を参加させないなら自分も出ないと菊池寛に直談判した話など)。意外なことに交友関係のところに横光利一の名前もあった。『金の話』という随筆が良いと褒めていたようだ。直木にも借りがあったり、吉川を激推ししていたなど、文士との関わりは多い。今は川端に対して並々ならない友情を感じていたようで、肉声が聞けるコーナーでは一部川端のことを話しているものがある(かなり褒めている)。中尊寺貫主になったのち、中尊寺に訪れた川端とともに歩く写真があった。

③川端康成文学館

 企画展では源氏物語と川端康成の関わりを展示。川端が学生時代や戦中に源氏物語を耽溺していたことや源氏物語の訳を試みようとしていたことは知っていたが、実際のところ源氏物語の内容に触れた話はほとんどないことは知らなかった(浮舟について触れたくらいのようだ)。これから訳にとりくもうとしているんです、と言って各帖の名称だけ並べて書いたものを見せたというエピソードが可愛い。『山の音』『千羽鶴』には源氏物語の影響がみられるとのことで気にしつつ読みたい。
 コロナで長らく使用禁止となっていた映像装置が使えるようになっており、時間の許す限り堪能した。まだすべての映像を見られていないので次の楽しみとしたい。
 常設展は少し展示物の配置が変わったようだった。お気に入りの展示物(雑誌『ひまわり』エッセイ「美しい言葉」国語の教科書への憂いが綴られている)が奥にいってしまい、字が読めなくて少し残念。川端康成青春文学賞入賞作品集二冊をいただく。

④一蘭

 初めて行った。旅行の終わりはしょっぱいものが食べたくなる。
 ちょっとアトラクションみたいで楽しかったし、ラーメンは美味しかった。また行きたい。

帰宅

 今まで仏像を何となく見ていたが、今回さまざまなお寺を巡るうちにその違いに興味が出てきて、仏像に関する本を図書館でかりて勉強している(その本にはこの旅行で見た仏像もたくさん出てきて、読んでいて楽しい)。こういった興味関心や好奇心を大事にしていきたい。

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