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わが弥陀は名をもつて物を接したまふ

「いはんやわが弥陀は名をもつて物を接したまふ。」元照律師



最近、暇があれば動画配信サイトのユーチューブでサッカーを見ています。もっぱら久保建英くんの動画です。9歳でバルセロナの下部組織に入り、15歳で日本でプロデビュー、18歳であのレアル・マドリードへ移籍し、19歳の今はヘタフェというチームで活躍しています。私は彼がまだバルセロナの下部組織にいる頃から、注目していましたから、応援にも熱が入ります。

 先日、あるお宅にご法事で伺いました。その家のじいちゃんの7回忌でした。私がお勤めを始めようとした時に、奥の襖がさーっと開いて畳の部屋からご高齢のおばあちゃんが這うようにして出てきました。部屋には布団が敷かれているのが見えました。後から聞いた話では、年齢は90歳で、ほとんど寝たきりの生活をしていらっしゃるそうで、今日は大事なおじいちゃんの年忌だからと無理して出てきてくれたそうです。法事が終わって、お茶をもらっていたら、そのおばあちゃんが開口一番に、「若さんサッカー好きだろう?小さい頃によく公園でボール蹴ってたなー。久保建英って選手知っているか?あれはうまいね。外国の選手を何人もかわしてパスしたり、ゴール決めたり。久保建英はすごいねー」と熱く語りはじめました。まさか90歳のばあちゃんの口からスペインで活躍している19歳の"久保建英”の名前が出るとは驚きで、しばしサッカー談議に花を咲かせました。日本にいる90歳のおばあちゃんとスペインにいる19歳の久保くんはまったくの接点がありません。しかし、接点のないところにも、その名前は届いていました。

 話は変わって、昨日のテレビでお笑い芸人のユリアンレトリィバァさんの遠い親戚を探してゆくという番組をしていました。行き着いたのはオール阪神さんでした。オール阪神さんがユリアンレトリィバァにこのようなエールを送っていました。「あんたの名前を知らん人がまだまだたくさんいます。世界中にその名前が届くようにこれからもっと頑張ってください」と。そのエールを聞きながら、名前というのはその持ち主がすばらしければ、たとえそこに接点がなくともどこまでも届いてゆくものなのだなと再確認しました。

浄土真宗で大切にしている阿弥陀仏(あみだぶつ)という仏さまは、煩悩にまみれ、仏を見ることもできず、感じ取ることもできない。いわば仏とはまったく接点のないものに届いてゆきたいと願われました。そして“名前”に注目され、ご自身のお徳のすべてを南無阿弥陀仏(なもあみだぶつ)という名に込めていわば、名前のすがたの仏になられました。

この口に「南無阿弥陀仏(なもあみだぶつ)・・・」とお念仏を称えている姿は、名のすがたとなられた仏が、私のところに届いてくださり、今ご一緒している姿です。  


「たれだれも、煩悩のうすくこきおもかへりみず、罪障のかろきおもきおもさたせず、ただくちにて南無阿弥陀仏ととなえば、こゑにつきて決定往生のおもひをなすべし・・・」 西方指南抄


法然聖人は、『この口から南無阿弥陀仏とお念仏がこぼれたら、この声について、この命が終わったならば間違いなくお浄土(じょうど)へ生まれさせていただけるのだと思いなさい。』とおっしゃりました。

この私のくちからこぼれた南無阿弥陀仏は、必ず私を浄土(じょうど)へ生まれさせると誓われた仏さまです。


薩摩川内市願生寺 亀田信暁

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