観る将歴30年のつぶやき「社団戦」
前話で書いた通り、先日、社団戦の主将会議に行ってきた。
主催者である東将連側は、リモートでの参加を呼び掛けていたが、私は敢えて直接東将連の本部(御徒町将棋センター)で会議に臨んだ。
社団戦とは、社会人団体リーグ戦の略で、一昨年までは年に5日開催の、アマチュア将棋愛好家が大勢集う大会のことだ。
その参加人数は1000人を超え、1チーム7人のチームが百数十も参加する大掛かりなものだ。
規模的には、日本将棋連盟が開催している職団戦の次に大きく、今や首都圏の指し将で参加したことが無い人を探す方が難しいくらいの大会だったりする。
そんな社団戦だが、運営している東将連(東京アマチュア将棋連盟の略)の理事が、10人に満たないことを知っている人は少ないと思う。
「1000人以上が参加する大会を運営しているのが、10人に満たない組織?」
驚くべきことだが、事実なのだ。
しかも、理事は基本的に手弁当での活動……。
もしくは、持ち出しで尽力している状態。
つまり、社団戦は理事達のボランティアで成り立っていると言える。
私は社団戦に30年ほど参加している。
最初に参加した時には高校生だった。
以来、一昨年まで、ずっと参加している。
昨年を除いて……。
昨年、参加しなかったのは、コロナ禍のためであった。
社団戦自体は交流戦(通常開催と異なり、1チーム5人で行われた親睦大会)が開催されたのだが、チームメンバーの中に基礎疾患を持った者が数人いて(私もその中の一人)、メンバーの身の安全を考えたらとても参加する訳にはいかなかったからだ。
ずっと参加してきただけに、断腸の思いで不参加表明したのだった。
ウチのチームは、チームの責任者である私よりも、社団戦に懸ける気持ちの強いメンバーが多い。
中には、わざわざ新幹線で社団戦の度に上京してくる者もいるし、また、飛行機で沖縄から参加するようなメンバーもいたりする。
遠隔地に異動になったメンバーが、夏休みを利用したり有休をとって参加してくれることも少なくない。
何れも、チームとして集い、チームとして将棋を指し、チームで打ち上げをすることを何よりも重んじてくれている。
勝った負けたももちろん大事だが、それよりは、毎年、チームとして集えることに喜びを感じている者の方が多い。
そんな社団戦だが……。
残念だが、ウチは、今年も不参加になることが決まった。
チームメンバーに参加の可否のアンケートを取ったところ、
「不参加でやむなし……」
という声が圧倒的に多かったからだ。
やはり、どんなに感染症対策をしても、広い会場に大人数の人を集めて大会を催すのは難しいとの判断なのだ。
少なくとも、ウチが参加するのは反対と言う意見がほとんどだった。
主将会議に直接参加した人は、私ともう一人の二人だけだった。
その他は理事の方々……。
参加者より理事の方が多いと言う異例の状態だった。
多くはリモート参加だったそうだが、それでも会議参加者の総数は昨年より遥かに少ない。
直接参加した人も、昨年より激減した。
会議では、昨年の交流戦が40チームほどの参加であったことと、会場のキャンセルが利かず大赤字になったことが報告された。
大会会場は、規模が大きいので押さえるのが大変なため、事前に予約金を払う形となっている。
だから、昨年の時点ではキャンセルはほぼ不可だったのだ。
予定通り大会を行えなかった上にキャンセルが出来ず、会場代や固定費が降り積もって大きな赤字を計上したのだと言う。
まあ、無理もないことだとは思う。
今年も交流戦を行うのだと言う。
昨年とは違い、参加チーム数が少なければ、一か月前なら会場のキャンセルが可能だからなのだそうだ。
つまり、赤字になるような開催にはならないから、やれるなら交流戦をやった方が良いという判断のようだ。
しかし、東将連が存続していくためには、毎年掛かっている固定費を出さなければならない。
そのためには、社団戦が通常開催規模で行われなければ、固定費の分が赤字になってしまうのだ。
個人的に思うのは、
「交流戦が単体で赤字にならなくても、固定費が降り積もれば同じことなのではないのかな?」
ってことだ。
多少、交流戦で黒字になっても、残念ながら固定費を補うような利益には繋がらない。
そもそもが手弁当や持ち出しで運営されている団体だ。
だから、赤字が数年積もってしまったら、潰れるか運営不能になることは想像に難くない。
そう、社団戦及び、東将連は、存続の危機を迎えているのだ。
その危急の時に……。
わずかばかりの利を求めて、交流戦をやっていて良いのだろうか?
会議での理事の方たちの説明の中に、この疑問の答えがあるようにはとても思えなかった。
一生懸命やってくれているのは百も承知だが、このままではどうにもならない気がする。
助かる方法は多々あると思うのだが、その可能性を理事の方々が模索しているようには思えなかった。
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