いろいろとわかりづらいデパート
そのデパートは、8階建てだった。
そして、3階と4階の間に中3階があった。3階からは行けずエスカレーターで4階まで進み、階段を降りると中3階に着く。
中3階は、インテリア、家具、ベッドが陳列されてあり、高級品ばかりで値も張るものばかりだ。
客は母親と娘の二人連れが多かった。理由は嫁入り道具を選ぶためにやってくるようだった。婚礼家具、桐の箪笥、ドレッサーなどを選ぶ。二人ともブランド品を着こなしているから裕福な家の娘の嫁入りなのだろう。
さて、中3階に入ると、エスカレーターは無い。階段は中3階に降りてきた4階へ行く階段に戻るしかない。4階に行くと、3階からの昇りのエスカレーターがあるだけだ。下りのエスカレーターがない。あちこち探すが無い。
3階だからと階段を利用すれば1階にいくことは出来る。
実は中3階には、隠れたエレベーターがある。大型ソファが並ぶ後ろにあるのだ。
中3階をぐるぐる回ると見つけることが出来る。
何故、こんな迷路みたいなデパートが出来たのか、それは創業者の希望だった。
『隅々まで見てほしい』
その思いだけで、こんなデパートになってしまった。
1階でさえ、エレベーターを探すのは難しい。エスカレーターは、上りしかない。地下には美味しい物がたくさんあるのだが、階段でしか行けない。
もちろんエレベーターは、ある。
しかし、見つける人は少ない。
こんな迷路のようなデパートは、流行らないだろうと思うが、結構繁盛している。店員さんの皆が愛想良く、
店員に「エレベーターは何処?」と聞くとすぐに教えてくれるからだ。
それを知らない人たちがデパート迷子になり、出口がわからない!となってしまうのだ。
わからないことは、どんどん聞きましょ。
「今日の特売は何?」
全階の特売、教えてもらえます。
おしまい