毎週ショートショートnote【豪華絢爛仕事納め】

俺の会社も仕事納めの日がやって来た。

さあ、大変だ。社員は、一斉に美容室に駆け込む。

男性は、タキシード姿
独身女性は振袖、既婚者は、訪問着に着替えなくてはいけない。

そして仕事納め会場に移動すると、そこは、ものすごい装飾が彩られ天井にはシャンデリア、ミラーボール🪩も輝き、照明は色とりどり、まるで80年代、バブル期を思わせる派手派手しさに酔いそうだ。

そこで社長の挨拶が始まる。　
社長の姿は、もちろんタキシードだが、お腹が出ている分、前のボタンが飛び散りそうだった。

そして、誰も社長の話など聞いていなかった。女性たちは、それぞれの着物を褒め合い、タキシード姿の男の社員を眺めている。
「ほら、あの人、あんなに素敵な人だったかしら？」
普段の顔とは違う独身男女社員の姿は、何やら婚活パーティーの様になっていく。

『仕事納め、え、何それ。私は彼を見つけたいわ』

そう思う独身女性は、多かった。

やっと社長の挨拶が終わると、無礼講となり、皆、目当ての男、女の元に駆けつける。

「ふむふむ、これでワシの仕事も納まると良いのう」

社長は、あえて豪華絢爛な仕事納めの場を設け婚活の手伝いをしていると、はっきり明言したのだった。

「今年は何組のカップルが出来るか楽しみじゃわい」