モーションデザイナー、ハードウェアを作る
このnoteは、モーションデザイナーがハードウェアをデザインするという刺激的で苦難ありの経験をまとめた記事となります。
前段
ロボティクス企業 パルスボッツ社 と 弊社ハイジ・インターフェイスが共同開発した、
フィギュアを〈しゃべる化〉させる台座「STARGE」
のハードウェアデザインを私むらかみ。が担当しました!
僕はハイジ・インターフェイスで映像制作を中心に担当していますが、3DCGもスキルとしてあるので、設計デザインをさせていただくことができました。
今回はハードウェアのデザインということでディスプレイの外、現実世界に作り出さなければなりません。今まで経験してきた平面デザインとは違った奥深さと大変さを知ることができました。いやーほんと大変だった。
序: リファレンス
デザインコンセプトは、
1.フィギュアを乗せる台座。
2.形状は2種類、流線的フォルムと無骨なフォルム。
Pinterestで台座を調べると、
…なんか違う
探し方を工夫して、
「花瓶」や「陶器」などで検索してみたら丁度良い感じの流線的参考を発見。
無骨なフォルムに関しては、
「植木鉢」に行き着いて良い感じの参考を見つけることができました。
ありがとう植木鉢、、、
破: 設計
鬼門の1つの設計です。
僕はcinema4Dという3DCGソフトを使用して映像制作をしていますが、今回は立体物の設計なのでFusion360という3DCADソフトを採用しました。
3DCGと3DCAD違いとしては、
イラストレーターなどのデザイン要素を立体的にするのが3DCG
寸法の入った図面を三次元に発展させた製図ソフトが3DCAD
ちょー大雑把に言うと3DCGは表現重視、3DCADが設計重視(諸説あり)
↑が最終的な外装デザイン。
自分でデザインしておいてアレですが、ちょーカッコいいです。
想像以上のデザインが出来て満足しています。しかしプロダクトデザインにおいては量産・コスト・素材を念頭においた設計が必要なので見た目のカッコよさだけでは良いプロダクトと呼べません。
特にSTARGEでは中にマイクやスピーカーなどを内蔵させるため内部構造・開閉の設計がちょーーーー需要となっています。
こういった設計の知識はもちろんネットで調べてもたくさんありますが。一番勉強になった方法は、既存のプロダクトを分解して分析するでした。
例えば100円ショップなどで万歩計や時計を買って分解します。
分解して調べると、「このフタはこういう構造なのか!」など実際の内部設計を知ることが出来ます。ネットで調べるだけではわからない実際の構造・サイズ感を知れたのは大きな収穫でした。
あと100円ショップの有り難さを改めて実感できます。
「こんな構造の商品がたった100円で売ってるのか!?」と毎回感動してました。100円ショップすごい。
急: 出力
設計が出来たら最後の工程、出力です。
今回は3Dプリンターを会社で購入してもらい、それでトライ・アンド・エラーを、最終出力は専門の3Dプリントサービスを利用しました。
やっと自分のデザインが現実世界に生まれる瞬間です。僕自身ワクワクでしたが、ここからが本当の地獄です。
モノづくりはトライ・アンド・エラーの繰り返しなので、3DCADで「完璧だ!」と思ってデザインした設計も実際に出力して構造の不具合・寸法のズレ・耐久力不足・3Dプリンターの調整不足など見えなかった問題が山程出てきます。
しかもイラレやPhotoshopのように修正してすぐ出力、とは行かず出力に週日を要する場合があります。3Dプリンターのフィラメント(素材のこと)代も馬鹿になりません、、、
↑検証時の失敗作
すべてにおいて試行錯誤の連続でしたが、納得のできるデザインを完成させることが出来て達成感が半端なかったです。映像などと違って現実に制作物を生み出す感覚は特別なモノを感じました。
終
いろいろ試行錯誤して完成させたSTARGEですが、ありがたいことに多くのメディアに取り上げていただきました。
STARGEは今年発売を予定しているのでフィギュアを持っている人も持っていない人も要チェックしてくださいね。