マガジンのカバー画像

文学。多様性とあいすること。

13
短編から中編小説を公開。
運営しているクリエイター

#イロカワ文学賞

アイオライトの果て(短編小説)

アイオライトの果て(短編小説)

 ぼくはねむっているとき、いつでも宇宙にいけます。いちばんはしっこの銀河のはてにもいけます。鉱物みたいにきらきらしているところで、ぼくはすきです。でも、ママはあぶないからいっちゃだめといいます。鉱物は、宝石になるまえのきれいな石で、石じゃないのもあります。パパとママはいっしょにけんきゅうをしています。パパは全もうなので、ぼくがみえません。でも、ぜったいにぼくがわかり、ぼくはうれしいです。このまえ、

もっとみる
まっしろなブルー(短編小説)

まっしろなブルー(短編小説)

 目尻のしわ。加齢による劣化は多少なりとも覚悟していたはずだが、いざみつけてしまうと動揺するものだなと、他人事のように考える。左右非対称なのが忌々しい。右と左でまるで顔が違うのだ。しわが目立っているのは、左側。人間の美というものは、いかにシンメトリーに近づけるかである。お隣の奥さんは完璧なほどそれに近いというのに、私は。
 たどっていくと、ほくろがある。泣きぼくろともいえない中途半端な位置。ここで

もっとみる