不妊治療のこと②
しばらくまた不妊治療のことを書いておりませんでしたが、色々なことがまたこの1ヶ月の間で起こったのでまとめてみたいと思います。
この間書いた時は確か不妊治療のうち、ICSI(顕微授精)にあたって、採卵(Eientnahme, Punktion)の前の準備をしていた時だったのだと思います。そうそうホルモン漬け(なんか意味違うけど)で心身の調子がぐわんぐわんだった時です。
ホルモン注射の期間を経て、ベルリンの病院にて超音波検査(Ultraschaluntersuchung)を受ける日。ホルモンはもうもう注射していなかったけど、ホルモンというやつは尾を引くというか、ずっとだるい感じがしたり、あとは採卵にあたりいくつも卵子を成長させなければならないため下腹部が膨らんでいるような重いような感じが数日続き体調は良くはなかったんですが、病院で検査を受けるとお医者さんに「うん!今確認しただけでも10個上卵子は育っているね。とても良いです。」と言われ安心。そして10個以上卵子が育っているということは、お腹に痛みや違和感を感じるのは当たり前なのだなと思いました。さらにお医者さんから「多分採卵の時にはもっと増えていると思います」と言われ心の中でひえー!と思いつつ、ここをクリアするのに大変な思いをしている人もいるのだからと思いました。次の週の最初に検査をし、血液検査の結果も良好で採卵の日を決めました。
採卵
採卵の二日前、最後の事前検査をした日に排卵誘発剤(Ovitrelle)を注射し、いざ出陣。事前に麻酔師さんとも連絡をとり、朝一に採卵となりました。麻酔代が350ユーロ。高い...まあ仕方ないですね。ちなみに麻酔はポリープの手術の時よりもずっと短い軽いものだけど全身麻酔で、二日くらい怯えましたが、麻酔師さんから麻酔を注射されながら「なんか楽しいこと考えてねー」と言われ「え、楽しいこと、え、なんだなんだぁ〜…ガクッ」って感じで眠りにつきました笑
施術自体は10分から15分ほどとのことで、施術が終わって数分後にはもう目覚め、どうやって病室(Wachraum)に戻ったのか忘れたけど、とりあえずベッドに横になり1時間ほど水分を大量摂取しながら夫の迎えを待ちました。麻酔師さんには全身麻酔後立ちくらみなどの症状(全部まとめてKreislaufproblem)があることを伝えていたので、目が覚めた瞬間から「はい、ここにお水置いとくね」と言われ、10分ごとくらいに「はい水」と渡されていました。片耳に割とごつめのピアスをつけていたあの麻酔師さん、本当すごくありがたかったなあと、今も書きながら思っています。
まだ本調子ではないけど大量のお水のおかげか立ちくらみなどはなく、お腹がちょっと痛いなという感じだったけど比較的体調も良い状態で、担当のお医者さんとお話しすると、なんと、18個採卵ができたそうです。18個!そりゃお腹も重いし痛かったわけだわ。ただ、18個全部が育っている(reifとドイツ語では表現します)ということは極めて珍しいので、取り出した卵子の状態をみてまた連絡します、とのことでした。また、採卵翌日からプロゲステロン(Cycrogest)膣剤を朝1錠・夜1錠使用するようにと言われました。
尚、この日に一部前払いで1500ユーロ(もう少し細かい数字でしたが、1500ユーロ台)を支払い、残りの代金は後日ということになりました。
胚盤胞移植(Transfer)
次の日卵子の状態について報告があり、なんと18個中14個がreifということで、うち9個を授精させましたと報告がありました(残りは培養液?に入れた"in die Kultur reingetan"と言われましたが、どうなっちゃったんだろう)。単純に考えれば9個受精卵があるってことかと思うのですが、9個全部が胚盤胞(Blastocyste)にまで育つことは珍しく、私の今回の場合、受精卵5つをそのまま5日間細胞分裂させた結果、1つが胚盤胞になりました。お医者さんによると、これはごく普通のことなので、気にする必要はないとのことでした(でもチャンスが…と思っちゃいますよね、どうしても)。この後さらに採卵後の卵巣の状態を見て、胚盤胞として育ったものを卵巣に戻すという流れになるのですが、私の場合、まだ水が少し確認できるものの痛みもなかったので、新鮮な胚盤胞を戻す(胚盤胞移植=Transfer)ことになりました。ちなみに卵巣の状態が採卵後良くなかったり、痛みが酷かったりする場合、1周期休んで自然周期で胚移植を行うということもあり、調べてみるとこの方が成功率が高いそう。
胚盤胞移植当日の夜とてもかなりお腹がちくちく痛くてしんどかったのですが、痛み止めなどは飲まずに着床痛であることを祈りました。ちなみに胚盤胞を移植して1日から2日で着床が起こるそうです。
尚、この日に残りの代金の請求書が渡されましたが、計3000ユーロもの金額が…!たけえええええええええええ。この日のために貯金してきたけど…でもたけええええええ。さようならお金。という気持ちになりました。
ちなみにお医者さんからは「最高で3900ユーロだから」とか言われていたけど、もうこの時点で600ユーロ越えちゃってるよ…と思ったけど、よくよく請求書を確認すると、残り4つの受精卵の保管だったり、培養士さんたちが卵子をあれこれしてくれたりしたお金なのでした。でもそれならその分の額も最初の見積書に書いておいてくれえええええ。
胚盤胞移植後
胚盤胞移植後は何をやってもいいけど、飲酒、喫煙、レントゲンはしないようにとのことでした。あと、長い入浴も良くないとの事でした。また膣剤は妊娠検査(Schwangerschaftstest)・血液検査を行うまでは続けるように、とのことでした。
胚盤胞移植数日後、私自身はあまり体調が良くなくて、吐き気や軽い頭痛、食欲不振などが起こりましたが、あまり気にも止めておらず、お腹が受け付けるものを食べていましたが、待ちきれない夫の希望で胚移植から8日後フライングで検査薬を使うと、なんと初めて検査薬陽性の反応が!ただ、フライングでかなり薄いということもあり、とりあえず毎日検査してみることにしました。でもこれが何日経っても濃くならない。確かに排卵誘発剤Ovitrelleには、hCGという妊娠検査薬で陽性反応を示すホルモンが含まれているのですが、排卵誘発剤を打ってすでに19日が経過していたし、今までも排卵誘発剤は打っていたけど検査薬で偽陽性すらも出たことないから…と期待。数日間陽性反応が出て、ある1日は陽性の線が前の結果よりも濃くなったりしたので「これはうまくいったかも!」と思っていました。
ところが、婦人科での妊娠・血液検査を予定していた日。陽性反応が出なくなってしまいました。フライング検査薬にはまだうっすらと陽性は出ましたが、最初の時のように薄く...。嫌な予感はするもとりあえず婦人科に行き、血液検査を受けるも、結果はなんと次の週の月曜日にならないと出ません!と言われヤキモキ。ところが、翌々日おりものに血が混ざってしまい、日曜日からきちんと出血してしまい、ダメだったことのだなあということを認識しました。
もう出血が確認できた日はわんわん泣きました。こんなに心身辛くて、それでもダメだなんて…私妊娠できるのかな…と3日くらい落ち込みました。しかも追い討ちをかけるように婦人科から連絡があり「hCGの値だけど0.3未満でしたよ」と言われ、着床すらもしてなかったってこと?じゃああの陽性反応は排卵誘発剤だったってこと?気持ち悪かったのも思い込みだったの?と惨めで仕方ない気持ちになってしまいました。
ベルリンのお医者さんにもダメでしたと連絡すると「とても良い胚盤胞だったし、子宮内膜((Gebärmutter)Schleimhaut, Endometrium)も良い状態だったからうまくいくと思ったけど、それでも40%の確率なのよね...」と言われ、まあ仕方ない、次に向けてまた前向きに頑張ろうと思うことにしました。
その後、3日後くらいにまたも血液検査を受けた地元の婦人科から電話があり、出てみるとなんと担当のお医者さんご本人からの電話で(先生から直接連絡来ることはほとんどない)、「実はあなたがこの前うちのスタッフから聞いていたhCGの値、今回の検査結果ではなくて、前回の結果だったの…。本当にごめんなさい。それで今回のhCGの値は15だったので、緩やかな陽性反応が出ていたの。」と言われました。そりゃないよー。月経が来たことを話すと「そう…残念だったね。でも排卵誘発剤をいくら使ったとは言っても、その期間から言ってこの値は着床が起こっていたと私は判断するよ。化学流産(biochemische Schwangerschaft)だったのだと思う。あなたはいつも『私妊娠できるのかな』と言っていたけど、ほら、妊娠できるってことよ!」と言ってくれて、惨めだと感じていた気持ちがスーッと薄れていきました。まあそれでも上手くいかなかったことを思うと、残念な気持ちは大きいのですが。
ということで、ぬか喜びとなってしまうことを考え、次回以降は事前に検査薬を使わない!ということに夫婦で決めました。ベルリンのお医者さんと話し、まずは1周期休んで、心身リフレッシュして、また改めて前向きな気持ちでトライしたいなと思います。
最後にこれだけはどうしても伝えたい
実は今回の治療中、ホルモン注射中を含め、夫が都合により家にいられなかったのです。夫を今責めるつもりは全くないし、後日きちんと夫婦間で話し合っています。でもこれだけは言わせてください。
この方法はホルモン注射を打ったり、採卵を受けたりする体を持つパートナーの方にどうしても心身的な負担がかかります。もちろん全カップルがそうではありませんが、妊活中も不妊治療中も、上手くいってからの妊娠中も、どうしても子どもを身籠る予定のパートナーが、独りで取り組んでいるような気持ちになりやすいです。
そこで私が言いたいこと。妊活中、不妊治療中、身体の変化や不調を感じるパートナー、こんなにたくさんのお金を払っているのに上手くいかなかったら…と不安になったり、自分は一生妊娠できないのではないかと絶望したりするパートナーのことを慮ってほしいのです。妊娠中だって流産の可能性がある、上手くいってもずっと不安を感じる人もいて、その一番そばにいるのがもう片方のパートナーであるあなたなのです。どうか、あなたがパートナーのことを心身ともに支えてほしいのです。
妊娠を体験しない予定のあなたが物理的にできることは少ないかもしれません。ホルモン注射を受けていたり、また真っ白な妊娠検査薬を見るパートナーの気分の上がり下がり(Stimmungsschwankungen)がどうしても激しいのは、その時には残念ながらどうしようもありません。どんな声をかけてもあなたのパートナーは悲しかったり不安だったりするかもしれない。それでもあなたがそばにいる、そのことがとても大切なのです。また、妊活や不妊治療以外のストレスをできるだけ少なくするというのもとても大切なことです。
妊娠は一人の体ではできません。精子と卵子どちらも必要です。自分より相手の方が子どもがほしいんだから、というのは言い訳でしかありません。なぜなら妊活や不妊治療をしている限り、親の一人になる予定のあなたもそこに関わっているからです。子どもを生み、育てるというのはそういうことなのです。だから、もし、妊活や不妊治療を始める時は、お互いの仕事の都合、プライベートの都合などをきちんと把握し、お互いがお互いをサポートできるような状態がほぼ保証できる状態で行うようにしてください。それでもどうしても急な出張があったりするかもしれません。それは仕方ないことでしょう。でも前もって忙しい時期がわかっているような場合は、きちんと二人で話し合って決めてほしいのです。これらが上手くいって妊娠してからも同様に、子どもが無事生まれてくるために、二人で支え合うというのはとても大切なのです。
当たり前のことを言っているし、もう聞き飽きた、見飽きた言葉だと思います。でも、どちらかが「独りで妊活・不妊治療をやっている」と感じたら、それはもう一度二人で見直さないといけないことなのです。二人のことだから。
不妊治療は特に長い長い道のりになることが多いです。私たちはまだ1年半程度ですが、もっともっと長く取り組むカップルもいます。長くなれば長くなるだけ、ストレス、不安、絶望といったネガティブなものがついてまわるのです。どうかそれを二人で乗り越えるんだという意識を持ってほしいな、と心から思います。
それでは、不妊治療について、次の方法が始まったらまたまとめたいと思います!良い週末を♪
*今回の素敵な紫陽花の写真はshima_photoさんからお借りしました。ありがとうございます!