【Teleddy文庫】 『小さき者へ』 著者: 重松清
毎週月曜恒例の【Teleddy文庫】、今回も「私」がご案内いたします。
「って言っても『私』って誰やねん」って話ですけどね、「私」は「私」です。それ以上でもそれ以下でもないです。
今回もまた例の如く、「私」の部屋にある本棚の中に所狭しと敷き詰められた本たちのうちの1つから、傑作を持ってきましたのでこちらをご紹介したいと思います。
作者の情報
著者は重松清さん。光村図書の国語の教科書を使っていた方は、小学5年生頃に「カレーライス」という作品で馴染みがある方かなと思います。
岡山県出身で、1993年に『ビフォア・ラン』でデビュー。
その後、「奥手で言いたいことを言うのが難しい人」と「なんでもズバズバと言ってしまう強気な人」を軸として複雑化していく登場人物の心情や人間関係を、いじめや暴力・家族問題などを絡ませつつ描いた作品が多く、数多くの賞を受賞します。
1999年 『ナイフ』で坪田譲治文学賞・『エイジ』で山本周五郎賞
2001年 『ビタミンF』で直木賞
2010年 『十字架』で吉川英治文学賞
2014年 『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞
この他の作品として、5年ほど前に西島秀俊主演でドラマ化された『流星ワゴン』などもございます。これ以外にもこの【Teleddy文庫】で重松清作品は紹介していこうと思っておりますので、そちらもお楽しみに!!
作品との出会い
理由は前回の『泣けない魚たち』と同じようなものです。購入した小学5年生の時は、受験のためだけにこういった文庫本を買って読んでいたと言う感じなのでww
重松清の作品も同様中学受験ではテッパンの作者で、こういった経緯もあって「私」は重松清作品を数多く持っていたのですが、いくつか紛失しましたww
本の中身自体は、小5の私にはやはり難解だった記憶しかないです。
このため今回も前回同様改めて読み返してみました。やっぱ大人になって読み返してみると新しい発見だらけですね。
一応このストーリーにオチというオチはあるかと聞かれると微妙ではあるんですよね。一応「考察」の部分では、各ストーリーのあらすじを説明します。
ただ考察についても前回同様ストーリーのオチの部分に触れることがないように注意はしますが、ネタバレを避けて読みたいよという方のために、以下に出版元のリンクを貼っておきます。こちらからお買い求めの上、読んで頂ければと思います。
考察
この『小さき者へ』は、表題作を含めて6つの作品が収録されており、ページ数も460と長めではあります。
今作共通のポイントとしては、
・「あまり強く言えず、言いたいことがなかなか言い出せない、気弱で引っ込み思案な男性」と「反対になんでも思ったことを行動や発言に反映させることができる強気で感情的な人(主に女性)」との触れ合いによって自分を見つめ直す。
・社会問題や家庭問題を織り交ぜつつ表現される、家族内の対立や親と子の関係性の揺れ動き。
・シークレット
です。
実はこの「シークレット」が最も重要で、本文中にも実はしっかりと触れられています。ネタバレ防止で伏せさせていただきますので、ご自身の目でお確かめください!!
各種表題作のあらすじだけでも紹介させていただきます。
『海まで』
妻と正反対の性格の幼い息子を二人持つ、都会在住の一家の大黒柱が主人公。夫に先立たれて残された農家を一人で守り抜く年寄の母の実家に一家で帰省するお話。
注目するべきは、「田舎の実家から都会に家を構えた主人公」と「夫に先立たれてもなお嫁ぎ先である実家(夫の家)を守り続ける主人公の母」の関係性。そしてこの関係性が、外様である妻や二人の子供との接し方によって垣間見えたり変化したりと言った感じですね。
『フイッチのイッチ』
主人公は、「言いたいことがなかなか言い出せず気が強い人が苦手な」、母子家庭の男子小学生。離婚がきっかけで転入してきた、気が強めで少し素っ気ない女の子と接し、「離婚」とは何かについて考えていくお話です。
注目するべきは、転入生の女の子が発した「ケッソン家族」という言葉です。母子家庭歴が長い者と離婚したばかりの者、大人と子供とで、「親」はなんのためにいるのかという考え方に差異があるところが、「ケッソン家族」という言葉に対しての反応やその後のストーリーにも強く影響が出ているかと思います。
『小さき者へ』
主人公は、失われた20年で経営危機に陥っている会社に勤めている男性。俊介という14歳で家庭内暴力・自室に引きこもりがち・不登校の息子に対して、自分がかつて14歳だったときのビートルズのアルバムを巡ったエピソードとともに手紙の形式で話が進んでいきます。
注目するべきは、主人公がまさに「言いたいことがなかなか言い出せない」男性というものを反映した性格で、それがあらゆるところに表現されている中で、「どのようにして乗り越えるのか」「そもそも乗り越えることができるのか」という部分だと思います。
『団旗はためくもとに』
主人公はJK。お父さんが大学時代にゴリゴリの応援団長をしていたこともあってガタイがよく威圧感も高いものの、娘である主人公には特に強く言えないような感じです。ひょんなことから「高校を中退したい」という気持ちが生じたことでストーリーが始まっていきます。
注目すべきは、文章中に時折表現として用いられる、「髪の毛の先っぽを、指に巻きつけたり伸ばしたりする」の表現が持つ意味だと思います。応援団出身の父の
『青あざのトナカイ』
主人公は元チェーンピザ屋の店長兼2児のパパ。チェーンピザ屋を妻の反対を押し切って開店したものの、開店当初から売れ行きは悪く、そのまま閉店しその後は無職のまま1日を寝るかお酒で過ごしています。
注目すべきは、「閉店した後のテナントを含めた商店街の動き」です。商店街との交流や商店街関連の出来事をきっかけにして、主人公の心情が大きく変化していくことが読み取れます。
『三月行進曲』
主人公は仕事の傍に少年野球チームの監督を務めている一児のパパ。中学進学をきっかけに少年野球チームを引退した小学6年生のうち、何か悩みや複雑な事情を抱えている3人に対して、一緒に春の選抜高校野球の開会式を観に夜行バスに乗って甲子園に行くことを提案します。
注目するべきは、「なぜ主人公も小6の3人とともに春の選抜高校野球の開会式に行ったのか」です。単純に「3人に万が一のことがあった時のために」「これまで行ったことがなく、行ってみたいと感じたから」などでは済まされない、複雑な理由を探ってみてください。
最後に
ネタバレを避けてお話をしようとしたところこのように曖昧な表現になってしまいました。申し訳ございません。
かつて塾講師として子供と接した経験がある「私」ですが、そういった経験を通してまた読んでみると、子供の時に感じた難解さとは打って変わって、すごく親近感や子供の無邪気さ・個性を大人の目線として考えることができた他、「ああ私も子供であると同時に、大人にもなったんだな」と感じました。
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