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【Teleddy文庫】 『ツナグ』 著者:辻村深月

月曜日になりました、恒例の【Teleddy文庫】のお時間です。
今週もよろしくお願いします。

今回も先週や先々週と同じ者の担当ではあるのですが、
この【Teleddy文庫】という連載がスタートしたことをきっかけに、
先日、実に数年ぶりに書店で文庫小説を2つほど買いました。

私がかつて小説にどハマりしていた数年前までは、kindleの広告が結構出ていたなあくらいで、小説や漫画をスマートフォンで読む時代にはまだ程遠いかなという印象でしたし、その時はもちろん紙で読んでいました。

時代が変わり2020年。今はむしろ小説や漫画どころか、映画もスマホで見る時代になりました。

それでも小説は紙で読み、映画はちゃんとDVDを買ってパソコンに繋げて見る派の私は、おそらく少しだけ時代からズレているように見られてしまうのかなと思ったりもします。

別に電子化を否定するつもりは毛頭ないのですが、やはり指で実際に紙に触れて、触覚で読んでいくことで、なんかこう内容が一層入っていくような気がします。
また、スマホやパソコンを使う日常から切り離させて、読書という時間を特別なものに仕立て上げられるような気もしますし、何より読んだ量が可視化できるのもいいですね。

前置きが少し長くなってしまいましたが、では本題に参りましょうか。


著者の情報


著者は辻村深月(みづき)さん。山梨県生まれです。
2004年に、処女作『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞します。この時わずか24歳でした。

デビュー後も、今回取り上げる『ツナグ』は第32回吉川英治文学新人賞を受賞2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞を受賞している他、2018年『かがみの孤城』でその年の本屋大賞を受賞するなど、今の日本を代表する若き天才女流作家です。


作品との出会い


今回は前回や前々回と異なり、こちらの連載がきっかけでした。
これまでは、私が小学生時代に購入した本、つまり2000年代のものばかりでした。そして私が読書を趣味としていた中学生の頃と、現在までの間に大きなブランクがあり、その間でも新しい作家の方々が登場してきました。

そういった中で、私はその頃のブランクを埋めたかったのでしょう。
とりあえず「辻村深月」という名前は知っていたので、その方の作品をとりあえずなんでもいいから取ってみよう、そしてそこを切り口にして読んでみようと思い、真っ先に目に入った、この『ツナグ』を選んだわけです。

動機が薄くてすみませんw

今回のお話に関しての感想は、端的に説明すると、「感嘆寄りの感動」「スタンディングオベーション」といった感じでしょうか。例えるなら、数年前に話題になった「君の名は」のように、「何回も読みたくなるお話」といったところですね。

とにかく、

辻村深月半端ないって!あの人半端ないって!!
ストーリーの構造とか設定とかめっちゃ緻密に作り込んでくるもん
そんなんできひんやん

という感想でした。

こんなにも読み応えのある作品は、すごく久々な気がします。
是非皆さんお買い求めください!!これは本当におすすめ!!


あらすじ・考察


この『ツナグ』は約450ページあり、「心得」という形式で、5つの短編から構成されています。

今作はこれまでのオムニバスのような形式ではなく、全て同一人物である『使者(ツナグ)』の存在が軸となっております、悠長して3つ目の「心得」から読むことがないよう。

以下に、この「使者(ツナグ)」についての特徴を書き記しておきます。

・『生者』と『亡者』を会わせることが出来ます
・イタコのように『亡者』の霊を他の生者や『使者』に降霊させるのではなく、ご存命の頃のような出立で、実態を持ちます。
・特定の『亡者』に会いたい時は、電話をかけて一度『使者』に対して、「誰に会いたいか」「会いたい相手の死亡時期」などを話す機会を設けます。
・その後、『使者』は「会いたい」と言われた『亡者』に対して、「この生者があなたに会いたいと願っているのですが会いますか?」と確認を取り、会うのであれば日程のヒアリングを取ります。
・そして実際に会えるのは夜間のみで、日の出になると『亡者』は消えていました。
・この最初の『生者』に対してのヒアリングは病院内で、そして『亡者』との面会は、品川駅近くの高級ホテル内の一室で行われていました。
・『使者』を介した『生者』と『亡者』との面会、通称「ツナグシステム」は、生者のときに1度、死後に1度しか利用できず、また死後の場合はこちらから『使者』にお願いすることが出来ないです。死後に「ツナグシステム」を介して特定の誰かと会いたいと思っても、その人が「ツナグシステム」を使って自分を指名してくれるのを待つしかないです。
・この「ツナグシステム」は無料ではありますが、面会が終わり『使者』のいるフロントに戻った時、必ず一言感想を求められます。

<『使者』の特徴>
・電話での受け答えはおばあさんの声
・ヒアリングや死者との面会時の誘導・死者への誘導などは、10代から20代くらいの若い青年が取り仕切っています。声だけおばあさんというわけではなく、声も青年です。
・青年はブランドものである藍色のダッフルコートを身に纏い、古びて表紙にシミがついた大学ノートとヒアリング用のレポート用紙を常に持ち歩いていました。説明に関しても、無機質でカンペ丸読みのような部分が多く、メカニズムもあまり話してくれないです。
・青年個人の情報(学校に行っているのかなど)については、聞いても話したがりませんでした。

こんな感じです。

要は、「生者」と「亡者」の面会というSF的なベースがあります。「亡者」もまた1度きりしかこのシステムを行使出来ないという意味を踏まえると、そこの「亡者」との面会を終えることは、二度と「亡者」が現世と接点を持たなくなりますし、詰まるところこの面会は、「生者」からすると「自分の手で自分にとって身近な存在を殺める」という残酷な意味にもなります。

それを通して、「屍を踏み越えて生きていく」という生き方、死生観
についてを示しているというものです。

この物語の面白いところとしては、

① 特定の『亡者』に会う理由
② 会ってからの変化
③ 上記の細かい設定
④ 『使者』の変化

の4つだと思います。

この作品では、4人の『生者』が「ツナグシステム」の利用者として描かれています。

「仲間内で溶け込むことが苦手であり、家族も含めた人間関係に悩んでいるOL」と「数ヶ月前に急性心不全で、享年38で亡くなった、学はないけど世渡りが上手な人気タレント」

「一家の長兼地元工務店の社長」と、「かつて『ツナグシステム』を利用したことがある彼の母親」

「演劇部所属のJK」と「不慮の事故で亡くなった、同じ部活所属の親友」

「7年前に行方不明になった交際相手のことが忘れられない男性会社員」と「経歴に謎が多いその交際相手」

この太字で記した方が『生者』です。彼らは面会の前にどのような思いを抱え、どのような思いで面会を望み、面会を通してどのようになったのか。
もちろん全員が全員ハッピーになればいいのですが、そんな美味しい話もないでしょう。

面会を通して聞いた事実、新たに知った事実、『亡者』からの最後の言葉を聞いて、彼らは何を思い、これからどう生きていくのでしょうか。

そして『生者』と『亡者』の面会に立ち会う役割を持つ『使者』もまた、話を通じて徐々に変化が生じていきます。終盤では謎多き『使者』のベールも剥がされます。

ここから先は、皆さんの目でお確かめください。


最後に


やっと、紹介文らしくもなってきたかなと思います。
こちらの作品、まだ書籍化されてはいないのですが、続編がある雑誌の連載として2014年に記載されていたみたいです。興味のある方はそちらもチェックしてみてください。

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