競馬撮影について
はじめに
以前競馬の撮影について書き残しました。
ただ、情報というものはアップデートされることもあり、もう一度競馬撮影について書き記します。内容の相違する部分が出てくると思いますが、今現在の認識と考えていただければ幸いです。
※基本事項ですが競馬撮影におけるフラッシュ撮影、もしくは三脚や踏み台を使った撮影は厳禁です。
競馬撮影への心構え
まずは自分なりの競馬撮影観について整理します。
心構えとしてただレースを撮影するのではなく、シチュエーションを決めることで、競馬撮影の幅を広げていきます。
その上で、競馬撮影に向かう際はどのようなレースが行われるか、強く意識します。
例えばG1レースならば、観客数が多いので撮影場所は限られてしまいますし、重賞がメインレースでない開催の場合、場所の確保よりもどこで撮影するか?に焦点を置きます。
事前にシミュレーションすることが何より大事です。たった数秒の世界ですがそこまでに考える時間は遥かに長い…気がします。
競馬場はとにかく広いので、最適な場所を探すために大げさな表現をすると1Kmは歩くこともあるかもしれません。言い換えれば、それだけ撮影スポットは存在する、ということです。
撮影場所を変えるだけで世界が全く変わります。ゴール前での撮影は数cmの勝負へのアプローチですし、ゴールから少し離れた場所は勝利に向けてのせめぎ合いを撮ることができます。
つまり、無数の表現ができる…ということなのです。私の場合は競馬場に到着する前に撮影ついてある程度の整理をして、逆算して撮影場所を決めています。基本は目標レースで撮影したい場所が良いですよね。何度かシミュレーションした方が結果として良い作品を撮れるはずです。
あと、競馬新聞などで出走馬を確認しておくことも必要です。そこから展開を予測したり、撮影したい馬を探すことができるからです。
展開の予測についてですが、例えば先頭の馬を撮影したい場合、事前にある程度予測しておくことで、どの位置を通過するのか考えることができます。
コース幅が20m~30mあるので、どこを通過するかは本当に大切な要素なんです。
もちろん、予想なので外れてしまうことはありますし、こだわりすぎて見当違いのレースになった場合の対応も考える必要もあります。
この辺りは本当に感覚的なものが特に強いので、過信しないことも重要です。
何(シチュエーション)を撮るのか
このテーマについても、競馬を少し学ぶことで見えてくるとは思います。競馬の流れは下見(パドック)~返し馬(準備運動)~レース~口取り(記念撮影)~表彰式と流れていきます。その流れを分割して、どのシチュエーションに焦点を置くのか考えることが絶対条件となります。
前段でも述べた通り、場所取りが本当にシビアかつ重要なポイントなので、全部を隈なく撮影することはほぼ不可能です(比較的狭い地方競馬場かつ空いている場合はこの限りではありません)。
パドックの撮影についても最前…もしくは遠巻きに撮るかで雰囲気は変わってきます。超望遠レンズを使用する場合は最前にこだわなくても良さそうです。上記の写真は約250mmの焦点距離で、後方から撮影しています。
馬はカメラを向けると目を合わせてくるので、それもまた楽しみの一つというか…。とにかく楽しく撮れるスポット、実はパドックかもしれませんね。
次に返し馬についてですが、これは事前にレースの走行距離を把握して、馬がどちらに向かうかを把握する必要があります。どこの地点からスタートするかで走り出す方向が違うためです。
基本的には誘導馬について歩き、ゴール板を通過後に走り出すというルールがあるようですが…。
→違っていたら申し訳ないです。
気性が荒い馬はそのまま走り出してしまいます。先出しといって、誘導馬が出てくる前に走り去ってしまう馬もいるので、気性も把握するべきかもしれません。
とにかく競馬撮影は確認事項がとても多くて、最初は何もできないまま終わってしまうことも多々あります。
特に昔は観客の人数も多くて、現代競馬ほど余裕を持って撮影できませんでした。当時を思えばかなり楽になった…とは思います。
※ ここではレースについて割愛します
続いてレース後の口取り(記念撮影)、表彰式についてですが、これはもう場所取りだけです。競馬場によってウイナーズサークル(表彰式等を行う場所)は異なりますし、基本はレースが終わったらみなさまダッシュしています(苦笑)。自分も撮りたいときは同様です。
ただ、どことなくオフショット感が強くて、これだけを撮っている方々の心情はなんとなくわかる気がします。
レースの撮影について
競馬撮影の醍醐味であるレース撮影。これはもう経験を積む他ありません…。私自身も何度も失敗していますし、まだまだ経験不足なのでお話できることは少ないです。
ただ、その上で考えることはできます。先程も申し上げた通り、展開を予測しながらどのような動きになるのか、常に考えながら撮影しています。
レースは主にモニターを見ながら追っていきます。長年競馬を見ていると、どの馬が良い勝負をするのかは割とわかりますので、その予測をもとに馬群が迫ってくるのを待つ形です。
レースの撮影でやはり気を使うポイントはシャッタースピードです。時速60kmで走り抜ける競走馬を撮影するにはなるべく高速シャッターにしないとブレた写真となってしまいます。
そこで活躍するパラメータがISOやF値ですが、これも過信は禁物で、なるべく明るい設定にしつつ、シャッタースピードを稼ぐ…という意識で良さそうです。
設定一覧
AF-C
フォーカスエリア ワイド
シャッタースピード 1/800s以上
f/2.8~8.0(F値の限界によって変動)
ISO/800以上
AF追従感度は敏感寄り
最近の設定は上記のとおりです。目的は明確なので、詳細設定も組み立てやすいです。
後は焦点距離…これが一番難しくて、何度も失敗しています。
競馬場によって感覚が変わりますし、都度現場で確認するのかないですよね…。
この写真は少し引き気味(100mm)に撮影しています。俗に言う置きにいった撮影です(苦笑)もう少しズームして騎手にスポットライトを当てても良かった気がします。
こちらは単純に距離が遠いため、最大限にズームしてもこのような構図になっています。これもまた、味のある写真ですよね。
これはなかなか良いバランス。混戦の空気感が表れています。こちらも最大限ズームしています。
作例をいくつか上げましたが、どの写真も最も気を使うポイントはやはりピントです。
この点だけは修正が効かないので、これはいい写真!と確認したときにピンぼけしていると泣きそうになります…。
そして、本当に好みによるところが大きいですが、この一枠に込める意図次第によって、雰囲気が変わる撮影が競馬撮影かな…と考えています。
個人的には遠目から馬群全体を撮る写真も好きです。
機材について
こちらはどうしても触れなければならないテーマです。それは機材はどうするか、というお話。個人的には明るいレンズさえ使用すれば、カメラはどれを使っても良さそうな気がします。但し、連写性能はこだわりを持ったほうが良さそうです。
欲を言えばフルサイズの一眼レフがベストだと思いますが、予算の都合もあるでしょうし、望遠撮影という観点からはAPS-Cセンサーのカメラが強いような気もします(ナイターは少し厳しいかもしれません)。
焦点距離は少なくとも200mm以上はほしいところです。地方競馬場(大井競馬場除く)では200mmでも十分だと思いますが、広い競馬場ではどうしても300mmは必要だと感じます。
予算の範囲内で、できるだけ望遠+連写性能の良い機材を揃えることがベストな選択ですね。
最後に
ここまで矢継ぎ早に書き記しましたが、結局のところ競馬撮影に必要なことは忍耐力+瞬発力です。
場所取りからレースを待つまでに相応の時間を要しますし、レースが始まってからはここぞのタイミングでシャッターを切る必要もあります。
更に競馬撮影を再開から強く感じることは、広い屋外の現場では天候に苦しめられることも多いということです。夏場はとてつもなく暑く、冬場はとても寒い…これはかなり堪えます。雨天時はカメラを壊さない配慮も必要で…。
それでも競馬撮影が止められないのは、なにより撮影という行為においてスポーツの要素を感じることが大きいです。
体力勝負の側面もあります。
最後になりましたが…動く被写体の代表格の一つ、競馬撮影をこれからも続けて、写真技術をさらに向上させたいですね。
それでは、長文駄文失礼いたしました。そして、お読みいただきありがとうございます。