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空が綺麗と教えてくれた

靴のかかとを踏んじゃいけないよ、とか

肘をついてご飯を食べちゃいけないよ、とか

君をちゃんと愛しているよ、とか

そういうのが大事だと思った。
散々みんな教えてくれていたのに、
今やっと、ちゃんとそう思った。

今更かな、やっぱりちょっと遅いかな
かけ間違えたボタンを、今から直してもいいかな。

遅すぎたかもしれない
君はもう、愛想を尽かしたかもしれない。

あまりに不安で、優しくしたらいいのか
いつも通りの無愛想なままでいようか
効率の悪いことばかり思いつくよ。

君に沢山のことを教えてあげたいのに、
愛してるよって伝えたいのに、
かける言葉は何も思いつかない。

何か成せた気にもなれずとも、夜が近づく。
部屋の中の闇は少しずつ深くなって、
君の顔の陰影ばかりが濃くなっていく。

ダメな私で。ごめんね。
謝るのも、違うか。
えーとね、だからさ、あのさ。

やっぱり私なんかが言ってもあれか。
話せることなんか、何もないか。
だから、えーと

「見て、空が綺麗だね」

となりにいる君が、指をさして教えてくれた。

いつもと変わらない明るい口振りで、
私に向かって教えてくれた。

多分今の私は、物凄い間抜けな顔をしている。
重たい頭を捻って窓を見る。

窓から見える夕日が、夜と交ざって
紫みたいなピンク色だった。

薄い紺色の夜を水彩画のように薄く伸ばして
夕日を吸った雲の上に塗られていた。

6月に良く似合う、紫陽花みたいな空だった。

君が好きそうな色だった。

「本当だ、そうだね」

大した返事もできなかったけど、
涙が出るほど嬉しかった。

君の好きな色した空を、
大好きな君が教えてくれたこと。

それが私への「大好きだよ」であること。
「大丈夫だよ」であること。

君の方がきっと全てを知っている。
ちゃんと愛してるよって、
本当の意味で伝えてくれる。

君なんかのとなりが、私なのはもったいない。
本当に情けなくてしょうがない。

もっと優しくいられるようにするよ。
私の好きな色も教えるから、
もっと君のことを教え続けてよ。

この先もずっと
空が綺麗なことを教えあっていたいよ。

最低なことして最高になろうよ