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【ネタバレ注意】ミュージアム映画レビュー【令状は拳銃】

 

⚪︎概要

 『ミュージアム』という映画をアマプラで鑑賞した。ガンダムを勧めてくれた友人からおすすめされて観る運びとなった。
 主演は小栗旬、主人公沢村久志(以下サワムラ)の妻は尾野真千子、犯人のカエル男は妻夫木聡、主人公の上司に松重豊など俳優陣はそうそうたる顔ぶれである。
 原作は週刊ヤングマガジンで連載されていた巴亮介氏の漫画である。漫画原作の実写化は未だに賛否があるが、この映画は割とお金を掛けて作った様な印象で個人的には楽しめた。いくつかツッコミどころみたいな所があるがそこを楽しめるなら面白く感じるかもしれない。


⚪︎終盤以外はテンポ◯ 次々人が死ぬ

 最初の殺人からとにかくサクサク人が殺され、観る側が飽きずに見続けられる。犯人は「〇〇の刑」といった紙切れを残して何やらめんどくさそうな猟奇殺人犯であることを事前に匂わせてくれる親切設計である。
 主人公のサワムラが犯人宅に侵入した辺りからは地味に話が引き延ばされている感があって苦しい。日本が銃社会じゃないことの悪い面がすごい出てる。すぐ撃とうよ! みたいなクソデカ感情になる。

 

⚪︎とにかくグロい、すんごくグロい

 殺された人の遺体がそのまま映されるからとにかくグロい、しかもちゃんと特殊メイクなどをしているのか何だか現実っぽい(こういう時死体なんて見たことないのにリアリティについては語れるのは何でだろう)。最初の殺人では犬の餌にされるのだが、食べる犬の方がつらそうだ。どうかもっと美味しいものを食べて欲しい。


⚪︎一人一人こだわりを持って殺される被害者たち

 その後も氷漬けにされたり針を千本飲まされたりと各々で無惨に殺害される被害者たちだが、刑にいちいち手間がかかっていて「もう流石に犯人側がメンドそう」的な感情にちょっとだけなる。これがゲージュツってやつか。そんな綺麗に縦真っ二つなのすごい。切った相手が白黒ハッキリつける仕事の裁判官だからか? 右側が有罪で左側が無罪みたいな区別があったり……するわけないか。

 

⚪︎「オタク死すべし慈悲はない」とばかりにステレオタイプのオタクもいます

 二人目の犠牲者は見てるこっちからしても「オイオイオイ」「死んだわアイツ」「ほう仕事抜き小太り引きこもりオタクですか……」と言いたくなるような風体で謎の懐かしさに襲われる。今でも秋葉原には案外いるんだろうか。
 まあ何というか寸分も同情の余地が無いのがちょっとだけ悲しい。別にザマァとかもないけど「さえない風体のキャラが意外な活躍をしてギャップが良い」とかもなく、親一人子一人の家で働きもせず引きこもっているのは複雑な気持ちになる。おでんも犯行現場に持って行ってたからてっきり熱々おでんで殺されるのかと思ったら違った。


⚪︎アレ? なんか一人雑に殺されてない?

 過去の事件で自分の犯罪(犯人は作品と呼んでる)が他人の物扱いされた事に激昂、当時裁判官制度で選出された裁判官たちを無惨に殺していく話である。犯人には殺しに関する目的意識や哲学、美学がハッキリしている。当然追加であまり関係ない誰かが殺されることはなく、その殺され方が「捕まった側はもう少し上手いこと抵抗できなかったんか?」的な感じじゃないはずだ。サ、サワムラ? 犯人が横をトコトコ歩いて逃げて行ったけどいいのか?

 

⚪︎サワムラさすがにポンコツすぎる説

 導入から悪夢に襲われていたり、同僚を目の前でビルの屋上から落とされたり、妻と子供を誘拐されて半狂乱で単独行動をとり、挙句車を走らせている所に襲撃を受けてしまったり。犯人宅を突き止めて侵入しておきながら返り討ちに遭い、捕まってヘンテコなゲームに興じるなど。サワムラはこの物語で終始散々な目に遭い続けている。
 いやいや差し入れのハンバーガー美味えじゃないのよ。パズルやって謎解きじゃないのよ。散々のんびりとした時間を過ごした後に実は肉が妻と子供だったと思わされるような悪趣味な一幕も、そもそもそれまでのサワムラのポンコツさ加減が頭をよぎって仕方がない。「だからエビワラーにしとけって言ったのに」なんて空手王もにがり顔だ。


⚪︎サワムラの良い所はここにあるっ!(拳銃カチャー)

 前述の通り中々見せ場に恵まれないのサワムラだが、犯人が入院していたと思われる病院を訪ね、院長に詰問する際の一幕

 「捜査令状もないんでしょう?」
 「捜査令状ならここにあるっ!(拳銃カチャー)」

 自分はここでスタンディングオベーションをした。いやいやサワムラやれば出来るじゃん。何の説明にも根拠にもなって無い単なる脅しだけど、初めてくらいにサワムラが優勢の展開に視聴者も盛り上がりポイントだった気がする。思い返してみると、サワムラはこういうパッション系というか感情を爆発させている時が一番輝いている。犯人確保も後からきた同僚たちによるものだし、サワムラは実務で成果を出すよりも、みんなを盛り上げるのに向いている幸福の置き物的な立ち位置なのかもしれない。そういえばサワムラ嫁もパッション系だったな、パッション系同士の家庭は楽しそうだ。リア充爆発しろ。


⚪︎結論 ツッコミどころは多々あるけどなんだかんだで面白い

 一回止まって考える部分がそこそこ出てはくるのが勿体無いなと思う部分はある。しかし次々と新たな事件が起きたり、グロテスクな死体が映されて視覚的に刺激が強かったり、定期的なサワムラのパッションで眠気が吹き飛んだりと映画らしい派手さや飽きさせない工夫が行き届いているのが良い。
 アマプラで視聴したが映画館で見るのも良い刺激になりそうだななんて思いで見ていた。皆さまもグロ寄りのクライムサスペンスが欲しくなった際には是非『ミュージアム』いかがでしょうか。

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