Mystic Strategist
※この物語はHYBE、およびBTSと何一つ関連がございません。
人々は俺のことをこう呼ぶ。
‟神がかった戦略家”と。
だが、俺は別に特別なことをしている訳ではない。基本を押さえていれば道もまた自然に開かれるものだ。
だからこそ、自分に道が見えているのに、周囲にそれが見えていない時、俺はどうしようもない不安に駆られる。
「あぁぁあぁ、予言者様ぁぁああ‼私は何か間違ったことを言ったのでしょうかぁあああ‼」
そんな時に、唯一心を癒してくれるのは、行きつけの予言者のところだった。路地の奥まったところにある一角の部屋で、看板も掲げずに経営されている。
それでも繁盛しているのか、紫色の壁紙や彼の真後ろにある青地に赤い菱形が連なっている壁紙は安上がりなものではなく、彼の後ろにずらりと並んだ燭台や香炉などは見るからに高価なものばかりだった。
だからこそ、信頼に値する人物だった。
「静かにしてください。集中できません。」
例え、辛辣な言葉を掛けられても、耐えることが出来る。俺は叫びたくなる衝動をグッと堪えるために、くるぶしの辺りで足を組み、バンダナに手を置いた。頭に手を置いていると安心するのだ。
「動き回られても集中できません。」
彼は、水晶から目を離さずにそう言った。俺は思わずこう言い返した。
「でも、予言者様、まさか、復讐の内容を私に送りつけて来るだなんて思わないじゃないですか⁉ジンからのメールを開けたら『진기』とだけ書かれていて、耳にこびりついて離れない、おどろおどろしい音楽…。音楽が終わったと思ったら、『貴方は呪われました』っていう文字が浮かび上がってくるんですよ⁉確かに、私が予想した通りの結末ですが、こんな理不尽な仕打ち、耐えられません‼私はジンと友情を続けても平気でしょうか⁉」
一気に言葉を捲し立てたため、目の前の予言者は目を閉じて眉間に皺を寄せている。
「ジンという人物は、人に悪戯を仕掛けるのが好きなようですね。」
「はい、そう言った気質はあると思います。」
「そして、貴方は見かけに似合わず、怖がりであると。」
「まぁ、否定はしません。」
予言者は目を開けた。
「ならば、答えは分かっているのでは?」
そう言うと、予言者は大きな溜息を吐いた。あからさまに俺に帰って欲しそうである。こんな態度が取れるのも繁盛しているからだろう。
「呪いなどありません。一度聞いてしまった音楽はなかなか忘れられないかも知れませんが、貴方が絶交する理由には値しないでしょう。」
彼はそう言って、この部屋に似つかわしくないスマートフォンを取り出した。
「現に、貴方が呪われていれば、私も呪われています。」
聴いたことのある恐ろしい音楽が、彼の部屋を支配した。先ほどまでは高価で輝いて見えていた燭台や香炉が、まるで悪魔の儀式に利用するようなものに見えてくる。
「さて、この無関係な人物にまで及んでいる悪戯を、貴方の頭で解決する術はありますか?」
悩み相談をしていたのは、俺のはずだったのに、目の前の予言者はまるで挑発するかのように涼しげな顔をしている。
道は明らかにこの中にある。
俺はしばらく考え込み、おもむろに口を開いた。
「見つけた!」
元の動画はこちら→BTS 2022 SEASON’S GREETING SPOT