ストア哲学の好きなところ
ストア哲学とは
ストア哲学(ストア派)は、紀元前3世紀の古代ギリシャでゼノンによって始められた哲学の一学派です。前期・中期・後期の3つに分けられていて、主に後期の哲学者による著作が残っています。
後期ストア派の哲学者には、セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウスなどがいます。エピクテトス自身は著作を残していませんが、弟子のアリアノスがエピクテトスの講義や思想をまとめたものが残っています。
ストア哲学の好きなところ
私が今のところストア派哲学者の本で読んだのは、マルクス・アウレリウスの「自省録」と、エピクテトスの「語録(一部のみ)」「要録」です。岩波文庫のタイトルは人生談義ですが、これは語録と要録をまとめたものです。
最初に自省録を読んで面白かったので、続いて人生談義を読み始めました。自省録を読むとマルクス・アウレリウスが当時の学問を広く修めていたことが分かるのですが、その思想はエピクテトスに大きな影響を受けているといいます。
なので、この記事の内容はストア哲学の好きなところというよりは、後期ストア哲学あるいはエピクテトスの思想の好きなところといった方が正確かもしれません。エピクテトスの要録が短くまとまっていて読みやすいので、要録を引用しながら話を進めてみます。
実行することに重きを置いていること
ストア哲学の好きなところの一つは「実行することに重きを置いていること」です。哲学といえば抽象的で、何を言っているのか結局のところよく分からないというイメージがあったのですが、ストア哲学にはそのような部分が少ないです。
実行することを重要視していることが、ストア哲学の分かりやすさにつながっています。なぜかというと、どういう状況のときに何を考え、何を行うべきかが具体的に書かれているからです。いい意味で哲学らしくないと言えるかもしれません。要録から、実行することの重要性について書かれた部分を抜き出してみます。
蛇足だと思いますが、少しだけ要約させて下さい。まず49章では「書物を解釈するだけで実行しなければ、哲学者ではなくて文献学者である」「説明はできても行動と一致していなければ恥ずかしい」と言っています。
52章では、哲学を3つの領域に分けて考えています。3つの領域とは、実行すること、論証、論証に関する理論で、後のものは前のもののためにあると書かれています。論証に関する理論とは、ここでは論理学のことを指していますが、現代的に解釈すれば科学的・統計的な手法等を含んでよいかと思います。そして、私たちは嘘をつくべきではないという論証をしながら嘘をつくというようなことをしがちで、それは本末転倒だと指摘しています。
…めちゃくちゃ分かりやすいですよね!?最初に読んだときは、2000年前に書かれた文章だとは思えなかったです。
あとがき
ストア哲学が実行を重んじることについて書いてみました。生きることは、意識的にしろ無意識にしろ、何かを考えたり実行したりすることです。私は生き方に関する納得できる考えが知りたかったので、実践を重んじるストア哲学はその期待に応えてくれました。
肝心のストア派の思想、つまり何を実行するべきなのかについては今回はほとんど触れられなかったので、考えがまとまったら続きの記事を書きたいと思います。
エピクテトスの要録は50Pほどと短くまとまっていて、一時間もあれば読めるのでおすすめです。要録は、人生談義の下巻の最後に載っています。他に載っている本については以下の記事に詳しいです。
入門書としては、要録の一部を漫画を使って解説している次の本も分かりやすかったです。