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4.夏休みの終り、ぼくらは集まる
小学校の同級生にちょう美少女がいた。たいていの男子はその子を気にしていたと思う。思うというのは、その子のきれいさがあまりにも「ちょう」だったからで、そうなってしまうと「かわいい」とか「好きだ」とかいう言葉はあまりにも陳腐で、相応しくない。だから、そういう言葉は、誰も彼女に対してはつかわなかった。男子は彼女についてほとんど何もいわない。評さない。ウワサもしない。いわないけれど、そこに特別な人がいると
もっとみる3.キャラメルコーンと蛇
路地に蛇の抜け殻が落ちていて、小学生男子が座り込んで見つめていた。「蛇が脱皮したんだよ」「毒はない?」「ないと思う」といったら、指先でつまんで持っていった。そして予想通り、彼の家からすぐ母親の大きな叫び声が聞こえてきた。ぼくは記憶力が悪いのか、10歳くらいまでのことをあんまり覚えていない。覚えているつもりの記憶も、両親や妹に確認すると「そんなことはなかった」と否定されることが多い。だからきっとこれ
もっとみる2.甥っ子友だちのお母さん
出身地から離れて暮らしているので、甥っ子兄弟に会うのはお盆と正月くらい。半年ごとに顔を合わせるだけのおじさん(ぼく)は、たいていビール片手に顔を真赤にして酔っ払っているから、彼らはタイムラプスムービーみたいにちょう高速に育っていく感覚になっていて、トテチテ歩きはじめた長男が次の瞬間には中学二年になっていた。小学校低学年のときに将棋の入門書と一手詰めの本をあげたときは全然ピンと来てなかったのに、いつ
もっとみる1.掃除をサボったときの話
小学2年生くらいだったと思う。同級生にイトウさんという少し癇の強い感じの女の子がいて、とくに仲が良かったわけではなかったのだけど、同じクラスで、同じ班だった。教室の掃除当番にあたったある日、いつもなら教室にいるはずの担任の先生が何故かいない。当然ながら魔が差したぼくらは、誰が先導するでもなく、床のぞうきんがけをサボった。そして当然ながら小2が考えるアリバイ工作はびっくりするほどズサンで、ぞうきん濡
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