出版業界にいるワケだし、本に関するアレコレを同僚とゆる~く語っちゃお!
こんにちは! TEKIKAKU社員の山﨑です。
皆さんは日頃「本の話」ってしていますか? 私は読書が趣味で本の話をするのも大好きなのですが、周囲に同じ趣味の友人がいないため、なかなか満足するまで本について語る機会がありません。
でも「この本のここが好き」とか「昔こんな本を読んで……」とか話したい! 他の人からも聞きたい! そこで、「出版業界で働いているんだし、本のこと好きだよね?」と同僚に圧をかけ、本の話に付き合ってもらうことにしました。
◆この記事に登場する人◆
山﨑:書いた人。2019年に新卒入社。ミステリと夏目漱石先生が好き。
中川:話に付き合ってくれた人。2022年に中途で入社。
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山﨑:今日はお付き合いいただき、ありがとうございます! うぇへへ、なんかソワソワしちゃいますね……。
中川:あれ、そうですか?
山﨑:自分から誘っておいて言うのもアレなんですけど、本のことを他人に話すのって緊張しません? 人間性のすべてがバレてしまうというか……。
中川:そう言われると緊張してきますね……。「そんな本読んでるの~?」みたいなマウントを取られるのも嫌だし。
山﨑:今日はそういうのナシで、楽しくゆるくお喋りしましょう! よろしくお願いします。
中川:はい、よろしくお願いします!
①まず本に関する基本情報を伝え合おう
山﨑:さっそくですが、最近、面白い本読みました?
中川:実は、最近はあんまり本を読めていないんですよねぇ……。でも、去年の末に読んだ『古代ギリシャのリアル』という本は面白かったです!
山﨑:あらっ、ギリシャ神話か何かに興味がおありなんですか?
中川:というよりは、著者の藤村シシン先生に惹かれて購入しました。シシン先生は、YouTubeでギリシャ神話を題材にしたゲームの解説をしているんですよ。それがすごく面白くて。
山﨑:動画が入口だったんですね! 当世風だ。
中川:語り口に特徴がある人なんですが、文章でもそれが見事に再現されていました。シシン先生が喋っているのが脳内で再生できるレベルです。山﨑さんはどうですか?
山﨑:私は袋とじ付きのミステリ『死と奇術師』を読みました! 心惹かれる謎の連続で面白かったですよ。いまは『円周率の日に先生は死んだ』というミステリを読んでいる最中です。
中川:ミステリがお好きなんですねぇ。
山﨑:大好きです! あとは近代文学をちょっと読むくらいでしょうか。中川さんは普段どういうジャンルの本を読むんですか?
中川:美術書が多いかなぁ。小説の場合、特にジャンルの拘りはなく、文章のテンポがいいコメディ作品が好きですね。
山﨑:お好きな作家は?
中川:森見登美彦さんですね。『夜は短し歩けよ乙女』が特に好き!
山﨑:まさに軽妙な文章を書かれることが多い作家さんですよね。自分で聞いておいて何ですが、好きな作家を答えるの、難しくないですか? 私は<ホーソーンシリーズ>や<カササギ殺人事件シリーズ>を書いているという点においてアンソニー・ホロヴィッツという作家が大好きなんですが、この人が書いている他のシリーズはあまり読まないんです。それって「アンソニー・ホロヴィッツが好き!」って言っていいの?
中川:音楽でもそういうことあるかも。同じアーティストでも、この曲は超好きだけど他はあんまりハマらない……みたいな。全曲しっかり聴き込んでいるファンもいるので、「この人が好きって言っていいのかな」って躊躇うことはあります。
山﨑:誰に迷惑をかけるというワケでもないので、本来は気兼ねする必要はないはずなんですけどね……。「私にハマる作品を書くことが多い作家」という視点から言うと、横溝正史とか芥川龍之介が好きかも! 夏目漱石先生は人間として好き。
山﨑:先ほど動画を入口にして面白い本と出会ったというお話しをされていましたが、普段はどんな媒体から本に関する情報を入手しているんですか?
中川:SNSがほとんどですね。チョロい面があるので、ほかの人が「この本面白かった!」とレビューしているとついつい気になってしまうんですよ。
山﨑:私もSNSが主な情報源なんですが、出版社や著者など大元の発信を参考にする点では違っていますね。私と本の間に第三者を挟むのが嫌で……。本はどこで買っていますか?
中川:まずは本屋。次にAmazonに頼ります。
山﨑:紙派ですか? それとも電子書籍も全然OK?
中川:紙派ですねぇ。眩しいのが苦手なんですよ。紙の本の場合も、綺麗な状態でないとダメで……。
山﨑:ということは、中古本NGなんですか?
中川:基本的には買わないです。新品の状態をできるだけ保ちたいんですよね。なので付いてくる帯もそのままにしています。
山﨑:ご提供いただいた蔵書の画像を見たんですが、どれも綺麗なままですよね! 栞紐が全然パヤパヤしてない。
中川:栞紐より財布に入ってたレシートや紙幣を使っちゃいます。読書中は飲食もしないんです。どうしても食べたい場合は、本と食べ物の距離をできるだけ離します。箸も必須!
山﨑:やばい、真逆や……。私はまったく気にならないです。帯は毟り取るし栞紐もめちゃくちゃパヤパヤ。紙の栞はすぐに紛失するので、カバーのソデを栞代わりにします。読書中に平気でおやつも食べちゃう。他人に同じことをされても気にしないです。
中川:え~!
山﨑:本は読めれば良いと思っているので……。というか、読むことこそ大事! 買ったらすぐ読むし、ボロボロになっても一生懸命読み返します。弊社では積読に関するリレー記事を書いたこともありますが、中川さんはどうですか? 積読、あります?
中川:あります、あります。 ほかに気になる物事があると、読書の方がストップしちゃうので。そうでなければ1冊を1週間くらいで読めるんですけどね。年間読書量は10冊前後です。
山﨑:たしかに別の趣味があるとそっちにリソースを取られますよね。「ながら読書」で熟読ってなかなか難しいし。頭と腕が増えたら、と常々思いますよ。そうすれば料理や裁縫をしながら本も楽しめるのに~!
中川:テクノロジーに頼らず人体を作り変える方向に行くんですね。
山﨑:素直にAudibleを使えという話なんですけどね。でも読むのと聴くのって違うから!……中川さんってそもそも、本が好きなんですか?
中川:えっ、この段階でその質問を?
山﨑:すみません、ここまで「中川さんは本が好き」という前提でお話しを進めていたんですが、勝手な思い込みかもしれないと思い至りまして。もし嫌いだったら、これ以上お付き合いいただくのも申し訳ないので……。
中川:好きは好きですよ! 嫌いだったら出版業界に転職しないですから!
山﨑:よ、よかったぁ~!
中川:でも、本が一番というわけじゃありません。映画や音楽など、ほかにも好きなものがあるので。何か興味のある物事があって、それをより深く知るために本を読むという感じですね。
山﨑:そうだったんですね! 他の人から本との関係性を聞くの、なかなか面白いなぁ。自分と全然違う。本屋に行ったときも、本の選び方がまるで違いそうですね。
中川:目的なしに本屋に入るということをしない派なんですよ。新規ジャンルを開拓することもない。
山﨑:そうなんや! 私は本屋があればとりあえず入る派です。ちなみに、おいくらまでなら本にお金を使えます……?
中川:本当に「いい」と思った本なら、いくらでも払いますよ!
山﨑:まぁ、気っ風のよろしいこと。私も本屋に入ったからには何かしら買うのですが、お財布にお金が入っていないときは負け犬のように引き下がります。その瞬間ばかりは貧乏というのが本当に嫌になりますね。
中川:最近は本も値上がりしてますしねぇ……。
山﨑:財布に常に100億円入っていればいいのになぁ~。
②本の「好き」についてもっと話そう
山﨑:ここからは、中川さんが好きな本についてもうちょっと深くお聞きできればと思います! 「ジャケ買い」なんて言葉もありますけど、蔵書のなかで特に表紙が気に入っている本は何ですか?
中川:『ちいさな手のひら事典 クリスマス』です! イラストがレトロな雰囲気で可愛いんですよ。しかも小口の部分がゴールド!
山﨑:温かみがあっておしゃれですね! 色づかいもキュート。クリスマスの本って可愛いものが多い気がします。2022年版『クリスマスの殺人』とか。中身の話にいきますと、これまで読んだ本のなかで、特に印象に残っている文章はありますか?
中川:そうですね……。まずはこちらです!
中川:森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』の一節です。
山﨑:「のべつまくなし」とか「ド阿呆」とか、森見登美彦っぽい!
中川:節が効いてますよね。「聖人君子などはほんの一握り」って、本当にそうだなって。もうひとつのお気に入りの文章はこちら。
中川:『十五少年漂流記』に登場する一節ですね。習い事で演劇をしていたとき、『十五少年漂流記』に取り組む際はみんなでこの言葉を覚えて復唱したり、卒業の時に先生からこの言葉を送られたりしました。
山﨑:めっちゃ青春~! すごく良い人間になれそう。
中川:実行できているかは別ですからね! 山﨑さんはいかがですか?
山﨑:そうですねぇ……。たくさんありますよ。『八つ墓村』の「繰り返す細胞の歴史は執拗である」とか、『駈込み訴え』の「イスカリオテのユダ」とか。エンタメ的な意味で上げるとするなら……『或敵打の話』のこちらの一節です!
山﨑:この文章、めっちゃ「動」じゃないですか!? 文章なのに映画のアクションシーンみたい。
中川:躍動感がすごいですね! 「動画」という概念がない時代にこんな動きのある文章が書けるんだ。
山﨑:真面目な意味で心に留め置いているのは、こちら。
山﨑:『レ・ミゼラブル』の一節です。いまって、赤の他人の「やらかし情報」が否応なしに目に飛び込んでくる時代ですよね。
中川:SNSでの炎上とか。
山﨑:そうそう。そういう情報を目にして義憤に駆られそうになったとき、この文章を思い出すと冷静になれるんですよね。過ちを犯した誰かを叩く前に、まず自分が善く在ろうと思える。……この質問、人間性がバレバレになってちょっと気恥ずかしいな。
中川:物事をどんな風に捉えているかとか、何を大切にしているかが一発でわかっちゃいますよね。
山﨑:面接でされる質問みたい。ちなみに、「この登場人物好きだな~」みたいなのってあります?
中川:うわ~、迷うなぁ。何度も名前を出しますけど、『夜は短し歩けよ乙女』に出てくる人たちですかね。「先輩」とか。恋とかいろんなことに、阿呆のように一直線に進んでいく姿が好きなんです。後悔なんか一切してない。「こちとら阿呆だがそれが何か?」って感じで開き直っているのも痛快です。
山﨑:傍から見ていても気持ちの良い人なんですね。
中川:人間臭さもあって愛せるんですよ。山﨑さんはどうですか?
山﨑:……
中川:あれ、聞こえてます?
山﨑:……すみません、この質問については沈黙させていただきます……。
中川:急にどうしたんですか。
山﨑:もう勘付いていらっしゃると思うんですが、自分と好きな物の間に第三者が挟まるのがとにかく嫌で……大大大好きな登場人物はいますよ。でも、ここで名前を出すことによって、その人がとやかく思われるのを想像すると……。
中川:同担拒否みたいなもの? よくこの企画をやろうと思えましたね。
山﨑:好きな本の話をする機会が少ないというのは、この頑なな態度のせいでもあるんです。「態度を改めろよ」と言われりゃそれまでなんですが。
中川:わかりました……。ちなみに、言ってもギリギリ許せる範囲ではどうです? 好きな登場人物、いますか?
山﨑:ギリギリ許せる範囲……。女性なら『夜長姫と耳男』の「夜長姫」かな。残酷で、少しの罪悪感もないところが良い。「しょうがない子なんだな」って思います。男性なら金田一耕助ですね。
中川:「じっちゃんの名にかけて」の「じっちゃん」だ!
山﨑:そうです! この金田一という人は愛嬌があって実にカワイイんですよ。刑事さんに煙草をねだるちゃっかりした面もあれば、急に破滅的な気分になってフラッと姿を消してしまう繊細な面もある。単に「どうしようもない人」が私の好みなのかも。
中川:ダメ男にはまっちゃう人みたい。
山﨑:本命は別にいますけどね!
山﨑:以前お伺いしましたが、中川さんはご友人と死について話すことが多いんですよね?
中川:どんなお葬式がいいかとか、そういう話はよくしますよ。冠婚葬祭が気になるお年頃ですからねぇ。
山﨑:自分が死んだとき、お棺に入れてほしい本ってありますか? 私の場合は『レ・ミゼラブル』と旅行のお供の『海底二万里』ですけど。
中川:考えたことなかったなぁ……。自費出版で自分の人生をまとめた本を作って、それを入れてもらおうかな。あの世に行ったときの履歴書代わりになるし。
山﨑:タイトル決めるの難しそう! でも一冊あれば閻魔様も大助かり間違いなしですね。
③本との思い出を振り返ってみよう
山﨑:続いて、本との思い出についてあれこれお聞きできればと思います。中川さんは、よく本を読む子どもでしたか?
中川:いまより子どもの頃の方が読書をしていた気がします……。
山﨑:そういう方は多いみたいですね。大人になると何かとやることが増えるし、趣味の幅も広がるし。どんな本が印象に残っていますか?
中川:昔は重い内容の本ばかり読んでいたんですよね。特に印象に残っているのは『ハッピーバースデー~命かがやく瞬間~』という小説です。
山﨑:明るそうなタイトルじゃないですか。
中川:これ、虐待を題材にした物語なんですよ……。主人公の女の子は虐待を受けた影響で自分の喉を摘まむ癖があるんです。そのせいで喉に痣ができてしまって……。
山﨑:ひぇ……
中川:その痛々しさが妙に頭に残っています。同じく虐待をテーマにした『“It”と呼ばれた子』も読んでいましたね。
山﨑:『“It”と呼ばれた子』、クラス中の子が読んでいたかも。小~中学校ってシリアスな本が流行する瞬間ありますよね。デスゲームものとかも皆読んでいた気がします。
中川:それほど物がわかっていなかったからこそ読めたんでしょうね。いまは心がしんどくなっちゃって無理……! 山﨑さんは本好きということで、小さい頃からたくさん読書をしていたんでしょうね。
山﨑:ぜーんぜん読んでいませんでした。
中川:あれ、意外!
山﨑:ものすごく不注意で読解力のない子どもだったので……。図書館で少年たちの冒険活劇を描いた本を借りたんですが、どこまで読んでも快活な少年たちは登場しない。ずっと群発地震についての話が続くんです。読み終わってカバーを外したら、まったく別の本だったということがありました。
中川:群発地震の本に冒険活劇のカバーが間違えて掛けてあったということですよね? 読んでいる途中で違和感に気付かなかったんですか……?
山﨑:「あれ~」とは思ったんですけどね。でも、そういうものなのかなと。シャーロック・ホームズものだと知らずに『赤毛連盟』を最後まで読んだこともありました。ただ字面を追っていただけで、物語をまったく理解していなかったんです。
中川:それだと読書が楽しくないかも……。
山﨑:そうなんですよ。なので「懐かしの児童書トーク」にはまったく入り込めません。ほかに思い出深い本はありますか?
中川:なぜか好きなのが『クリスマス・クリスマス』です!
山﨑:あら、またまたクリスマス本。
中川:私が覚えていないくらい昔から家にある本なんですよ。いま見たら、1989年に出たそうです。
山﨑:ベルリンの壁崩壊の年や! ちょっとした歴史をお持ちなんですね。
中川:幼児向けの教育雑誌なんですが、いまでもたま~に読んじゃうんですよねぇ。北欧には本当にサンタクロースがいて、プレゼントのための玩具工場があって……と、子どもの夢を壊さない内容になっています。私、クリスマスというものが好きなのかもしれません。
山﨑:可愛い(笑)。私はやっぱり『レ・ミゼラブル』ですね。高校時代に出会って、生まれて初めて「読書をした」と言えるほど一生懸命読みました。社会的責任というものに気付かされましたね。最終巻が地元の本屋になくて、親が取り寄せてくれたのも印象的です。こういう風に、ちょっと特別な出会い方をした本はありますか?
中川:『ロミオとジュリエット』です! 習い事で演劇をしていたとき、「ロミオ」役を任されたんですよ。
山﨑:すごーい!
中川:ふふふ……。台詞を覚えるために何度も読みました。リズム感のある言葉が好きになったのはロミジュリのおかげです。文章を読み続ける体力もここで養われたかも。あとは、受験勉強のお世話をしてくれた恩人に紹介してもらった『硝子戸の中』――
山﨑:ちょっと!!! 私この本に言いたいことがあるんですけど!!!
中川:な、なんでしょうか……。
山﨑:この本、自分の悲しい身の上話を本に書いてほしいという女の人が夏目先生の所へ尋ねてきますよね!?
中川:は、はい……。
山﨑:何なんですか、この人は!!(吉永秀さんという女性です) 先生に4、5回もお会いして! 挙句、最後の帰りは往来まで先生に見送ってもらっているじゃないですか!!!
中川:私も「この人は何なの?」と思わないでもないですけど、きっとすごく美人なんだろうなあと思うとそれほど腹が立たないというか……
山﨑:私もそう思います!! この人は絶対に先生が好きなタイプの美人!! だからこそ業腹なんですよ!!!! 希死念慮に対して先生に「そんなら死なずに生きていらっしゃい」とまで言ってもらっているじゃありませんか! 何をアンタ、生死の天秤を夏目先生に傾けてもらってんの!? 何なの!?!?
中川:藪をつついて蛇を出してしまった……。次の話題に移りましょうか!
山﨑:すみません、猛り狂ってしまいました。思い出ついでに、過去の自分に勧めたい本を教えてください。
中川:うーん、美術書かな。美術部だったんですよ。お小遣いが限られているから買うのは難しいかもしれないけど、もっと早くに美術を知っていれば、見える世界が変わっていたかもしれません。
④とにかく本についてあれこれ言おう
山﨑:ご自分の本棚からベスト本3冊を選ぶとしたら、何にします? テーマはお任せします!
中川:難しいな~! シンプルに「ほかの人におすすめしたい本」3冊で選んでみますね。まず1冊目は、『新釈 走れメロス』です!
山﨑:あっ、『桜の森の満開の下』も入ってるんですね! 大好きなんですよ、この話。
中川:あ、だったら読まない方がいいかも……。国語の教科書で文学を読んで、「ハマらんなぁ」と思った人におすすめしたい本なんですよ。たとえば『走れメロス』にしても、原作で感じられるような美しい友情はないんです。ただお互いがお互いを信用していない、という信頼がある。
山﨑:どういうこと? ちょっと気になってきた……。
中川:2冊目はこちら、『世界を変えた100のポスター』です。
中川:以前ディズニーランドに行ったときに、印象的なポスターが貼ってあったんです。「かわいいなぁ…なんのポスターだろう?」と思って、ポスターというものに興味を持ちました。3冊目は『市めくり』です!
山﨑:なんだか可愛い本。
中川:これは日本各地で開かれる「市」を紹介するガイドブックです。日本に住んでいるはずなのに、この本を読むまで知らなかったことがたくさんありました。ただ読むだけでも面白いし、これを読んで旅に出かけるという楽しみ方もできますよ。
山﨑:市って自分の意識の外側にあるから、何も知らないな……。どの本も興味を惹かれますね。
中川:山﨑さんの3冊も教えてください!
山﨑:私は「頻繁に読み返す本」というテーマで3冊選んでみました。まずは『慟哭の谷』。日本史上最悪の熊害とされる「三毛別羆事件」を検証したノンフィクションです。長編ミステリを読み終わった後の箸休めとして手に取ることが多いんですよ。
中川:この事件って「Wikipedia文学」としても有名ですよね? 箸休めになるような内容なんですか……?
山﨑:ボリュームがちょうど良いんですよ。内容は本当に悲惨です。でも、ただのショッキングな事件として消費するだけに留まらないのもこの本のいいところ。著者の木村盛武さんは、事件の体験者や遺族の方の元に何度も足を運んで証言を引き出しているんです。さらに、林務官だったご自身の経験も生かして、ヒグマという動物にも真摯に向き合っている。その姿勢も、何度も読み返したくなる要素なんですよね。
中川:そう言われるとちょっと読んでみたくなる……かも?
山﨑:2冊目は松本清張の『共犯者』! 心理描写が生々しくて凄いんですよ。短編集でサクサク読めるので、こちらも箸休めとして繰り返し手に取っています。
中川:ミステリの箸休めにミステリを読むんですね。
山﨑:そして3冊目は、『ハプスブルク家最後の皇女 エリザベート』です。ハプスブルクのエリザベートといえば、絶世の美女でお馴染み「シシィ」を思い浮かべる人が多いと思いますが、この本の主人公はそのお孫さん。ルドルフ皇太子の娘「エリザベート」の激動の人生を描いた伝記です。
中川:ぶ厚いし大きい本ですね!
山﨑:読むと腕が疲れるんですが、エリザベートさんの人生がとにかく波乱万丈かつ激アツで何度も読み返したくなるんですよ。あんなに強大だったハプスブルク帝国が力を失い、ドイツやソ連といった大国に蹂躙されていく様子も涙を誘います。栄枯盛衰ものに弱くて……。
山﨑:今後読んでみたいジャンルや作品ってありますか?
中川:いま買おうか悩んでいるのは、スパイ小説です!
山﨑:ちょっと意外かも! 何かきっかけがあるんですか?
中川:Amazonで急におすすめされたんですよ。カートや「あとで買う」に入っている本とはまったく毛色が違うはずなんですけどね……。
山﨑:スパイものは最近何かとアツいですからね。『金庫破りときどきスパイ』とか面白そう。
中川:これも意外と思われるかもしれないんですが、時代小説も読んでみたいですね。
山﨑:これまたなぜ?
中川:昔、祖母の家に時代小説が置いてあったんです。それを里帰りの度に暇つぶしで読んでいて。大人な雰囲気のシーンがあって、ちょっとドキドキしたこともありました。
山﨑:めちゃくちゃ可愛い思い出!
中川:いま読むと全然大したことないんでしょうけどね! 改めて読み直したいなぁと思います。山﨑さんはいかがですか?
山﨑:古典ミステリに手を出したいと思っています。読書にハマるのが遅かったので、読んでいない名作が大量にあるんですよね。エラリーとかカーとか。特に興味があるのはアガサ・クリスティ!
中川:これまで読んだことはなかったんですか?
山﨑:実は中学生のときに『そして誰もいなくなった』を読んだんですが、読解力が皆無だったので「なに言ってんだァ?」としか思えなかったんですよ……。ちゃんと本を読めるようになったので再挑戦したいです。クリスティをリスペクトした良作やパスティーシュもたくさんありますしね。
山﨑:ちょっとだけ真面目な話題になりますが、「出版不況」ってどう思います?
中川:うーん……。身も蓋もない言い方になるけど、当たり前の流れかなって。時代や技術が変化して、本でしか情報収集できないということが滅多になくなったので。まぁ、「〇〇離れ」と言われる物事全般に言えることですけど。
山﨑:私も同じ考えですねぇ。趣味が多様化して、いろんな楽しいことをいろんな人が楽しめるようになった時代です。本好き兼出版業界の者としては、「本、もっと売れてくれ~!」と思いますけどね! 面白い本はたくさんあるから。季節に沿った質問も一応しておきますけど、新社会人におすすめしたい本はありますか?
中川:うーん……特にないですね……。「勉強のために」って無理して興味のない本を読まなくていいと思います。
山﨑:私もそう思う! 読書が重荷になっちゃうと悲しい。
中川:作者が「好きで好きでどうしようもなくて書いちゃった!」っていう本を探して読んでみてほしい。自分がいま見ている世界が少しづつ広がっていくんじゃないかなと思いますね。出版業界にいる側としても、作り手の「好き」や「個性」を全面的に打ち出した本を作っていければと思います。
山﨑:感心な意気込みですね。私が強いておすすめするなら「おい地獄さ行ぐんだで!」でお馴染みの『蟹工船』ですかね。暴れたくなります。労働者として。
山﨑:ここまでお付き合いいただいてありがとうございました! 本の話をするのはやっぱり愉快ですね。
中川:私も楽しかったです。もっと本が読みたくなった!
山﨑:ばしばし読んで、また本の話にお付き合いくださいよ~! そのときは同担拒否などと言わず、大大大好きな作品や登場人物の話をできるようにしておきます。
中川:楽しみにしております! ありがとうございました。
皆さんも家族や友人と本の話をしてみてはいかがでしょうか! 毎日顔を合わせている人のなかにも、意外な一面を発見できるかもしれません……。
◎文=山﨑
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