一月一酒 第6回
初出:ハンガリージャーナル 2004年11月号
Le Sommelier Cuvée 1997
醸造所:Malatinszky Kúria
地区名:Villányi borvidék
醸造所のオーナーでもあるマラティンスキー・チャバ氏は、ワイン製造に特有のスタイルを貫いています。ワインの名前が示すように、それは彼がかつてソムリエだったことと関係しています。
ハンガリーにおける最初の、本来の意味でのソムリエであったマラティンスキー氏は、グンデル・レストランのソムリエとしての経験を、ワイン造りの基本哲学としています。ワイン愛好家がどのようなタイプのワインをより好むのか、という最も基本的な事も、ソムリエ時代の経験から考えます。
有名なフランス産ワインと品評会で競い合えるようなハンガリー産赤ワインを醸造することを目的に、氏はフランスへ渡り、多くの醸造所にて学び、働き、経験をより深いものとしました。その大望は、多くの有名な国際品評会において、金賞を得るという結果で実っています。
当たり年である1997年に醸造されたCUVÉE 1997は、ボルドーのスタイルであるカベルネ・ソーヴィニョンとメルローのブレンドで、醸造直後から高い評価を受けていました。
最近では入手の難しい1997年産ワインを味わうだけでも貴重な経験ですが、7年経過したヴィッラーニ産赤ワインが、いかに熟成し、且つフルーティさを保つことが出来るかを知ることのできるワインです。若い赤ワインに付き物のとげとげしいタンニンは影を潜め、酸味はすっかり丸みを帯びています。
お飲みになる前に、開栓後一時間ほど空気に晒すのも良いでしょう。あるいはデカンターをご使用ください。料理に合わせるのなら、各種キノコを使ったゲーム(野生肉の料理)、赤ワインソースのロースト肉、ステーキなどをおすすめします。
すでに熟成期を終えたこのLE SOMMELIER CUVÉE 1997は、コレクション用ではなく、今夜の食卓へどうぞ。
原文:TŐZSÉR Róbert
訳文/画像:高久圭二郎