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【連載小説】夏の恋☀️1991 シークレット・オブ・マイ・ライフ⑬

  というわけで、また暇になった。

 その頃だと思う。貝口桃子(かいくちももこ)に出会ったのは。

 出会ったというか、まずは話に聞いた。Fちゃんか、くみこからきいたのではなかったかなあ、初めは。覚えていません!

 桃子は何処の人なのか、不明だった。というのも、身元が明らかになる前に、S高を辞めてしまったからだ。Fちゃんが知っていたのは、桃子がラグビー部のマネージャーであったからだ、数日ではあったけども。

 Fちゃんはラグビー部、だったと思う。

 くみこも桃子のことを知っていた。ということは、桃子はJH中なのかな。

 桃子が入学後、一ヵ月もしないで学校をやめたのは、霊が見えるから、ということであった。

 まあ、霊はいるだろう。

 しかも、ここはSだ。五十年、でもないな、46年前に、この辺りはすっかり焼け野原になり、ひとが枯れ枝に燃すようにして、めった、死んでいる。それはそうだろう(霊がいるということ、だって、そうじゃん)

 普通は、そんなことは忘れているというか、覚えているのだが、古井戸の口に置かれた重石みたいな、それが現在だ。

 そんなことは分かりきっているのに、霊を見る、見てしまう人は、いる。いつの時代もな。サーダカ生まれという。ご苦労様ってかんじ。

 桃子は一年五組か、六組だった。一階の、東の、端の教室。それが悪かったのかもしれないし、そうではなかったのかもしれない。

 いまのおれにはよく分かるが、それらはカンケ―ない。ぜんぜん。

 もんだいは桃子の内面にあった。霊とか、まったく関係ない。内面というか、環境とかいうか、運がわるかったし、どうにもしようがなかった。

 桃子本人にも、もちろんおれにも。

 こういうことが、世の中にはおおすぎる。イライラ、イライラする。

 助動詞? なんでそんなことを覚えないといけないんだ?

 動詞を助けるとかいて、助動詞だ。それをおぼえれば、たすけてくれるのか? ほんとうか?

 だったら、覚えるけど。その気になりさえすれば、必要なら、おれたちはおぼえるけど。

 る、らる、す、さす、しむ。

 き、けり、つ、ぬ、たり、けむ。

 これ、いるのか? 生きていくのに。

本稿つづく

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