【スケッチ】不登校ここの部屋⑲90度のお湯
薬物の歴史というのは非常に古く、ネアンデルタール人も鎮痛剤にサボテンの果汁を用いたと考えている歴史学者もいます。
医食同源とゆう考え方もあり、これは人類に課せられた永遠のテーマとも言えます。かくいううちも、昨年の年末、やることがなさすぎて緑茶を淹れてのみ、蜜柑を食い、仏壇の掃除をしてまた緑茶をのんでいました。
カテキンというか、カフェインでしょうか。これを過剰に摂取するとやはりそれなりに、中学生の女子のカラダにも効用があり、高揚感があります。急にうちは炬燵布団の上に寝転がり、天上を見上げました。
すると、どうでしょう天井がぐるぐる、ぐるぐるぐるぐるぐる、回転しました。格子状の天井模様が消え、カフェオレ風に混ぜられいました。
水星、と思いました。次に金星。
ややおくれて火星。木星土星天王星。
冥王星。海王星。銀河。ギャラクシー。
このとき、うちがヤッっていたことは書きたくないし、語りたくありません。自分で、自分を……。
ソファがまるで……いや、勘弁してつかあさい。
目を覚ますと、JJが泣いていました。リヴィングの真ん中で、突っ立って。めそめそ。
肩を震わせています。
「どうしたん?」
「ねえちゃんたち、いやや。くさい、この部屋……」
なんやコイツと思いましたが、あらためて息を吸ってみるとたしかに一月のこの部屋は鼻が曲がるほど臭いのでした。
屁。汁。血。尿。唾。便秘。
などなどのにおいが充満していました。
凪子と桃子を起こして、部屋じゅうの窓を開けました。
「あそびにいきたい」
とJJが言いました。
「いっといで。いいけど、くさいことほかで言うなよ」
「うん」
JJは少年特有のすばしこさで部屋をあとにしました。
当時、この家の一階は塾で、小学生や中学生、高校生がたくさんいて、自動販売機のまわりに屯してどうでもいい話をいつまでもしていました。
どうでもいいはなし。ようするに人生の神髄のことです。
本稿つづく