【連載小説】夏の恋☀️1991 シークレット・オブ・マイ・ライフ②
書きたくないことから先に書いておこう。
まずファースト・キス。おそらく、厳密にいうと、母ちゃんに奪われている。おれは異様に可愛かったから、これは仕方ないだろう。
他人とは、低学年の頃。相手はダウン症の、年下の女の子。
学童がいっしょで、何故かその日はいっしょに帰らされた。Aという名前だったとおもう。Aの手を引いて、あるいてた。理由はよくわからないけど、おれは生まれつき慈悲のこころを備えていたので、やさしかった。
けども同時に、現世の塵をまともに受けて、性格がねじ曲がっていた、すでに。
相手がダウン症なので、もちろん軽視していたし、馬鹿にするようなきもちもあった。Aを家に入れると、家の人はだれもいなかった。
なんと(なく)理由もなく、おれはAに口づけ、た。
Aは、ニヤッととわらった。
しまったとおもった。すぐにかえった。
話としてはそんだけ。
あとで何かがあったわけではない。
誰もいない家の玄関の薄暗さ、ガラス戸からはいる外の光。照らされたAの顔。
それをよく覚えている。
正直、ダウン症顔というのは、かわいいと思う。わりと好みだ。性的な意味ではない。
愛らしい。平和的なかんじ。心がおちつく。
そう思わない?
本稿つづく