【スケッチ】不登校ここの部屋⑭クリスマス・キャロルとクリトリス・ブラック
クリトリス・ブラックは北アメリカ大陸西海岸の生まれで元々はノルウェー王族の、黒い血(ブラック・ブラッド)家の末裔である。
幼い頃の思い出は、トヨタに勤めるうだつのあがらない父親の、ワインの臭いである。父親はワインを飲んでうだうだといつまでも喋りつづけていた。
「偉大なるノルウェー。北の覇者。バイキングの正嫡。おれたちは戦いをこのみ、たたかいの中に死ぬのことだけを望み、自分の負った傷を誇り、その痛みにだけ生を感じた。死に場所をさがしていた。常に。あたたかい毛皮と焚火の周囲を憎んだ。苦しみ。痛みと苦しみだけが生きている証だった。苦しみたい。苦しみたい。もっと苦しみたい」
母親はポーランドの農奴の出で、ポーランド正教とピロシキが好きだった。苦しみには何の興味も持たない、いわゆる普通の人。破滅的な結婚相手とは最初っから気が合わなかった。
こういうのは、性格の不一致というものである。
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不一致と不登校というのは同じだ。合わないから行かなくなる。
性の不一致。性格の不一致。言っていることがわからない。意味がわからない。
わからないことは孤独で、一人で居るということだ。
黒板に書いてある文字が読めない。人の話していることがわからない。生きている意味がわからない。
クリスマスに、ひとびとは喜ぶ。その喜ぶ意味がわからない。
ひとりきりだから。
お金というのは、全く助けにならない。おかねには人格がない。
うちらが求めているのはただの、相手である。感情を分け合う相手。それだけ。それ以外には何もいらない。
簡単なことだがややこしい。
本来、生物にはそのつがい以外、何もいらない。その他は邪魔。イラン。
「おはよう」といえば、「おはよう」と返す生物体が一体あればいい。それ以外は要らない。
そのことがお金にはわからない。数値はただ増え、減り、乗算して分散する。平等な世界。
うちらが求めているのは平等ではなく、特別。
ひとりだけ。
これは評価のしようがないし、計測はできない。
本稿つづく