
【スケッチ】不登校ここの部屋⑩ここと凪子と桃子とJJの修学旅行 in the Tombstone
お墓の扉というのは漆喰で固めており、これを開けるにはバール等でぎしぎしして、それからあける。だいたい村の人がやる。
そして大体だいの男が数人でやるもので、今は中学生女子と小学生男子しかいないので中々あかなかった。
「ていうか何で墓の中いくわけ? ゲーセン行こう」
というわけで、女子三人と男子一人はU字になった坂を下り、新川の十字路を左にまがり、坂を上ったり下りたりして、南風原の映画館に隣接したゲーセンに行った。
夜のゲーセンには、孤独で、暇で、行く当てのない人たちが集まっている。さっきいた墓場と似たようなもので、ほぼ霊的存在が遊戯をしている。スピーカーからはやかましく流行歌がながれており、それもまた逆にそれぞれの孤立の影を濃く照らしている。
ジャンジャンジャラジャラ
とかまびすしい音を立ててコインが吐き出される。金属と金属のぶっつかる音。これこれ、こういうのでいいんだ。とみんな思う。
コインゲームやヴィデオ・ゲームなどをしていたが、そのうち子どもたちは金が尽きた。子どもなのであんまり金を持っていない。そこで、自分たちで考えたゲームをすることにした。
ルールは、じゃんけん。勝った人が負けたひとの罰ゲームを決める。
罰ゲーム!
ころころころ、と子どもたちが笑う。
「えーマジマジ、マジいやだ、いやなんですけど、いやだいやだ」と凪子。
「ひひ、ひひひ」とJJ。
なんらかの罰ゲームが行われ、ゲーセンの隅が笑い声に包まれた。
「おしりて。おしり、痛い」
「ひひ、いーひっひっひ」
浣腸的行為があったらしい。
また、じゃんけん的勝負が行われる。
「えー、いややって。ぜったいいやや!」
浣腸的行為。
いん・じゃん・ほん。
「やだよう。いやだーっ」
浣腸。そしてじゃんけん。
「いやじゃ。いやじゃいやじゃいやじゃ。もういややって!」
浣腸。
「いや、ほんまにうんこ出るってば!」
子どもというのは心底阿保なので、これらの行為を倦むことなく、三日三晩でも続けることができる。
しかし、ゲーセンは23時には閉まるのであった。
そとは冬の夜である。
売春の誘いを断り、四人は墓場に戻った。その途中の工事現場で拾った鉄棒を片手に。歩く。坂道をのぼる。
鉄の先がアスファルトに当たって、カラカラカラ、と音を立てる。金属的な音。
棒をもっているここ、凪子、桃子、JJは恍惚とした表情になる。
Like a 暴徒。火花。
結局南極この鉄棒を使って四人は墓の扉をこじ開けた。
虚空のごとき闇の正方形がすがたを見せた。
本稿つづく