【スケッチ】不登校ここの部屋⑧影の四人
スプラトゥーン3をやっていると、凪子がクラスのクダカがうちらの文句をいっているという情報を入手したということが分かりました。
「どんなこといってた?」
「がっこうやめたらいいのにって。あたしのとこは非課税だから、もっとペコペコしろって、さ」
「しばこ。クダカしばこう」
「うん」
というわけで、ここ、凪子、桃子、JJの四人は墓場にクダカを呼び出した。もちろんクダカはひとりでは来ない。腰ぎんちゃくのやふな猿みたいなチビを二人連れている。
「お守りもってきたけど、やっぱこわいわ」とチビ1。
「だいじょうぶよ。クダカんとこは議員さんだから。ついていったらこの先子々孫々安泰だから」とチビ2。
クダカは赤のスタジアムジャンパーを着、デッドストックのGパンを穿き、風船ガムを噛んで、オナクラ(同じクラス)のF子(Fカップ)の肩に手を回し、片乳を揉みに揉んで、ガムを噛みに噛んであらわれた。
「おい、ワイの歌を聴きたいとゆうから来たんだけど」
と、クダカは南の夜空に向かって獣じみた声を張り上げた。
あいつ、ええ声してるな、とここは思った。
「歌ってーや」
「おう、その声はここか。なにうたおうか?」
「また逢う日まで」をここはリクエストした。
ふたりでドアをしめて
ふたりで名まえ消して
そのとき心は何かを 話すだろう♪
おもわず、影の四人も唱和していた。クダカの声は響きにひびいて、墓の中の骨壺のなかのほねもぐつぐつ動くようであった。
ふたりでドアをしめて
ふたりで名まえ消して
そのとき心は何かを 話すだろう♪
パーパーパパ―♪
パーパーパパ―♪
パーパーパパアアアアア―♪
昭和が終わってから、「それ」という桃子の合図で影の四人組は姿を現した。新月。ローソンの看板の明かり以外には光というひかりはない。
というかローソンの看板はかなりの光量なので結構あかるい。
「やや」
クダカは身構えたが、すぐに土下座して、
「なんですかこれは、なんですかね」
チビ1と2、Fカップは闇に潜るヤモリのようにどこかに姿を消していた。
「おまえ、わたしたちの文句言ってるらしいな」
と凪子。
「言ってません」
「うそつけ、カス、ボケ、アホ、とぅっとぅるー」
とここ。
「言ってません。いえといわれたのです」
「誰に?」
「F子に」
「はあ? こいつサイアク。ひとのせーにして」
「でも、ほんとなんです」
「とはいえ、ゆうたよな?」
「はい」
「じゃあ責任取れや」
「はい」
桃子が、ローソンから卵のパックを買ってきて、この卵をぜんぶクダカになげつけることにした。
「う、う、う、、、」
四人で二個ずつ投げたので、四二が八で、二個余った。
生卵の黄身と白身だらけになったクダカ。
「あしたの朝な、これで目玉焼き二個焼いて食え。このカス」
とここは言って、卵二個をクダカのスタジャンのポケットに入れた。左右に。
帰り道。
「こういうの、あんまよくないね。イジメみたいだった」
とここ。
「うん」
と凪子。
弁ヶ嶽の上をびょうびょうと、北風が吹いていた。
本稿つづく