【スケッチ】不登校ここの部屋⑨ここと凪子と桃子とJJの修学旅行
修学旅行の季節である。
首里にも連日修学旅行生がたくさん歩いている。中学生や高校生、たのしそうである。男も女も傍目にはかわいい。が、いろいろとそれぞれの事情を抱えており、占うと大体悲惨である。
なので占い気質の凪子はできるだけうらなわないようにしているのだが、接客等で目の前に立たれるとどうしても彼ら彼女らの未来が見えてしまう。
ブラック企業
メンタル崩壊
病、老、死→墓場
失恋→メンタル崩壊
ちょっとした行き違い→メンタル崩壊
新・新型インフルエンザ罹患→アールディーエヌエー→無精子
子宮筋腫→卵巣切除→尼
モラル・ハザード→自殺
殴り合い→他殺
SNSへの違和感→メンタル崩壊
アルコール中毒→ゴミ屋敷
看護師→老→温泉
医師→薬物中毒→作家
山谷→写真家→喫茶店→資産凍結
相続税→申告忘れ→新聞沙汰
移民→差別→銃乱射
ギリシャ→首里→観光地で売春
種馬→病、老、死→墓場
食のレジャー化→食中毒→行政指導
胃腸薬→意味もなく生きる
等々。
だいたいは「胃腸薬→意味もなく生きる」なのだが、さまざまな可能性が凪子には見えるのであった。
その頃桃子とその弟のJJは玉那覇家で生活しており、桃子はここと凪子と同じ中学に通うようになっていた。一回も行っていないのではあるが。
「修学旅行、うちらも行こうや」
とここ。
その日もまた四人は冬晴れの空の下、だれの墓かわからない、弁ヶ嶽のふもとの、ローソンの前の墓場に集まっていた。
「どこ行くわけ?」
と凪子。
「だれも行ったことないところがいい」と桃子。
あるやん、すぐそこに。という身振りでここは墓の屋根からぴょんと飛び下りた。
「どこよ?」
「あんたらの、座ってる、その下じゃ。足もと掘れと、むかしからゆーやろ」
「どこよ?」
「墓よ」
「墓の中よ」
えー!?
「生きながらにして、墓の中入ろうゆう計画よ。これが旅行じゃ。インナー・スペースじゃ。あのなあ、青い鳥は、意外なとこにおるものよ。すなわちな、すぐそこよ」
姉と弟はすっかり真顔になった。
「そらそうよ」と桃子。
というわけで四人は一旦家に戻り、宿泊の準備をして、日が落ちて暗くなった空の下、また集まった。
協力して、墓の扉を開けたのである。
本稿つづく