求められた死にがいたちを見る
ありのままでいいと言われる度、私達は生きがいを見出そうとする。対立を排除されてきた私達は、常に自分の存在を肯定してくれる"何か"を探し続けているのだ。
この小説では、堀北雄介と南水智也の二人を中心に様々な"痛み"を抱えた人々が交わっていく。
生きがいとは何か、自動的に運ばれていく日常の中で、何かを見つけようとする看護師。手段と目的が逆転していると告げられた大学生。カメラを降ろしたTVディレクター。彼らの抱えるぼやけた痛みが、堀北雄介の存在により、輪郭を浮かび上がらせる。
登場人物である堀北雄介は、誰かと対立することで生じる摩擦熱でしか、体温を感じられない。作品の中で、堀北雄介は多くの摩擦熱を求める。その度に、摩擦熱が無くとも生きていける南水智也は、ひそやかに堀北雄介を見つめていた。
この作品は、生きていればいいことがあるなんて甘くやさしい言葉を使わない。この世界を"降りる"と選択できる人は居ないと言う。きらきらと輝くような、痛みを和らげる言葉を呑み込めない人達の"みんなとは違うから、こうするしかない"という悲鳴を、"痛みを和らげる言葉と共に、呑み込んでみないか"と提案する。
とても、とても胸を打たれた作品でした。何かを探しながら生きている人達に、是非読んで頂きたい作品です。
#死にがいを求めて生きているの #読書の秋2022