見出し画像

研修医たちへ- 目標を立てたり立てなかったりしよう

新社会人の皆さん、おめでとうございます。
(私の記事は医師でない方も読めるように書いています)

当院に入職した研修医の皆さん、来てくれてありがとう。皆さんに会うのを本当に楽しみにしていました。
せっかく、ていねことして臨床をしない医師のnoteをやっているので、研修医に向けた記事も書こうと思います。

2年目のチーフレジデント(学級委員長)が、1年目の皆さんに向けて
「研修医の目標は研修を修了することである」と言っていましたね。
これは本当にその通りで、何があっても、できてもできなくても、必須の科について所定の日数は病院にきて、厚生労働省に定められたレポートを全部提出してくれることが目標です。
ただ、診療を経験しないとレポートは書けないし(55本もあるし)、病院に来たら医師としての仕事に暴露されるので、これ「だけ」とは決して言えない目標なのです。

「そうは言っても!」という方がほとんどでしょう。
そうは言っても、医師としてのはじめの2年間、専門研修が始まる前にやっておきたいことがそれぞれあるでしょう。

例えば、臨床留学に向けてアメリカの医師資格をとりたい。英語をがんばりたい。
例えば、症例報告を書きたい。学会発表したい。臨床研究したい。
例えば、結婚したい。車買いたい。貯金したい。

いくらでもあるでしょう。応援します。
応援のひとつとして、今回は「目標の立て方」について書きます。
当院の英語教育を担当している手前、例として「英語をがんばりたい」を使います。

なぜ目標の立て方が重要なのか

当院は臨床英語に力を入れているので、「この2年間で英語力をブラッシュアップしたい」と思っている方は少なくないと思います。
しかし、「英語をがんばりたい」だけでは一歩を踏み出しにくいと思いませんか。
実際に来週、アメリカから来てる先生がいきなり研修医室で英語で話しかけて来て、「今日みた患者さんについて聞かせてよ」と言われたらどうでしょう。めちゃくちゃ怖くないですか。怖いというか、緊張して困っちゃう、固まっちゃう方がほとんどです。

そこで、例えば「救急科でのローテーション中は、週に1症例以上、アメリカからの先生に英語で症例をプレゼンする。2年目のローテーションでは原稿なしでプレゼンできるようになる」と決めていたらどうでしょう。
症例をプレゼンするという目標があるので、ローテ序盤で英語プレゼンの雛形を手に入れて、眺めてみると良いかもしれません。
患者さんを診療した後、まずは日本語でのプレゼンを練習する必要があるでしょう(日本語でできないことは英語でできませんから)。
いざ英語プレゼンをしてみようと思ったら、分からない専門用語を調べるでしょう。
そして、自信がついて余裕が出来てきたら、週に2例、3例と練習できるようになるかも知れません。
はじめは原稿をキッチリ作らないとできなかったプレゼンが、練習を重ねるごとに原稿がなくても患者さんの話ができるようになっています。

このように、戦略的に目標を立てることによって、それを達成するための行動計画ができます。また、戦略的な目標は漠然としたそれよりも定量化されているので、達成感を得やすいというメリットもあります。

戦略的な目標の立て方

前段落で「定量的」と言いましたが、戦略的目標のほぼ全てはこれで説明できます。いくつか要素がありますが、「SMART goals」という略が最も有名なので、それに沿って説明します。

Specific 具体的
Measurable 測定可能
Achievable 達成可能
Relevant 意義のある
Timed 時間が決まっている

もうほんとそのままなのでこれ以上説明はいらないくらいなのですが、それぞれについて簡単に述べます。

Specific- 達成しようとしている事柄を具体的に述べる。「英語のプレゼンが原稿なしでできる」

Measurable- 数値化できる。「週に1例以上〜」

Achievable- 実現可能性がある。「毎日プレゼンは大変そうだけど、週に1回はやってたら2年目までには原稿なしでできるようになると思う」
 (この例は行動計画が目標の一部になっていますが、実現可能性を高める目的&自分の実力が図りにくいうちはこれでもいいと思います。最終目標である2年目までに〜が見えてきたら行動計画を変えることになるでしょう)

Relevant- 最終的に目指しているものに関係していて、達成する意義がある。「医師として留学したいから、英語でプレゼンできるようになった方が良いだろう」

Timed- 時間が決まっていないと、なかなか行動に移せないもの。また、時間を決めると目標の数値化がしやすくなる。

こういうのって、細かく説明した方がかえって分かりにくくならない?私だけ?

目標を立てたり立てなかったりしよう

ここまで目標の立て方について説明しましたが、研修医1年目の4月に英語や診療能力、学術活動について目標を立てることはぶっちゃけおすすめしません。
現状に対して未知の要素が多すぎるため、近い未来でも具体的なイメージがしづらいからです。

せっかく慣れても、来月にはまたローテーションが変わり新しい環境での研修が始まります。小児科の病棟で動けるようになったとして、麻酔科としてオペ室では全く役に立たないかもしれません。
必ずどこかで慣れて、伸び始める時期がきます。でもそれまでめちゃくちゃ辛いこともあると思います。

だからこそ、上は「研修の2年間を修了することが目標」と繰り返し言うのです。毎日これたら100点満点中120点です。
「いるだけなのに給料が発生して申し訳ない」とか「同期は〇〇ができるようになったのにまだ見たこともない」とか焦らないでください。絶対焦るけど焦らないでください。
そのうち「なんでこんな働いてるのにこの給料なんだ」と思う日が来てトントンになるし、ローテーションになってるからみんな大体同じことを経験して修了していきます。

3ヶ月くらい医師を経験してみて「2年間、割といけそうだな?」と余裕を持てるタイミングがきたら、改めて自分の研修中の目標について考えてみてください。決めたらぜひ教えてくださいね。
3ヶ月より前に相談したくなったら、もちろんそれも大歓迎です。

これから2年間、よろしくお願いします。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集