暗闇のエンターテイナー 25
残り10
〜ハーフムーンの呼ぶ声〜
かすみは僕が帰宅すると
いつも紅茶を入れてくれた。
透き通ったダージリンを
ティーポットに入れて出してくれる。
ウェッジウッドのティーカップに
ぴったりな組み合わせだった。
僕はそれが毎日の楽しみの1つだった。
必ず飲む前にキスをしてから
熱い紅茶を飲む。
僕はいつものように
用量以上の薬を飲んで
仕事のパフォーマンスを保っていた。
人を喜ばせようとする姿勢
それは授かった先天的なものなのか
後で強迫観念として
植え付けられたものかは分からない。
パフォーマンスの質が上がるほどに
沈む落差が激しくなってきていた。
かすみはかすみで
住ま慣れない遠い街で
僕が仕事でいない時
独りになることを
段々と恐怖になるようになっていた。
かすみは
それを薬で必死に抑えていた。
昔の傷や、孤独は
1人になることで
徐々に浮き堀りになっていたのだ。
2人で抱き合ってベッドで眠ろうとすると
かすみは必ずと言っていいほど
涙目がポロポロ出ていた。
少しずつ2人に陰りが出始めていた。
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