「気になりすぎるタイトルでつい手に取ってしまう本」を部員が選んだら
前月の手紙社リスト“本”編で花田菜々子さんがセレクトした「気になりすぎるタイトルでつい手に取ってしまう本」を、手紙社の部員が選んだら? 気になる、気になる、気になりすぎる! このタイトル!!
✳︎ここで紹介した10冊を、手紙舎つつじヶ丘本店の一角に準備しました。どなたでも読むことができますので、カフェタイムのお供にぜひ!
1.『「罪と罰」を読まない』
著/岸本佐知子,三浦しをん,吉田篤弘,吉田浩美,発行/文藝春秋
ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことがあるか? よろしい、この世界的名作を読んだことがない者だけが楽しめる、本気の遊びをしようじゃないか。最初と最後は先に読もう。鯛焼きの頭と尻尾食べて、あんこの味を想像するってことよ。読まないで先を読むんだ。翻訳家がそのために翻訳、って贅沢な読書会ですね。
あんこ情報はページを指定して音読しよう。知ってる? コレおばあちゃん殺しちゃう話だよね。大家さん? え違う? 殺すとこ読もう、どの辺で殺す? 私だったら第一部では殺らない、と作家。ソウデスカ。
読んでくうちに解ける謎、深まる謎、爆笑。『罪と罰』読んでみよっかなあ(ヨンデナイ)!
(選者・コメント:まっちゃん)
2.『妻が椎茸だったころ』
著/中島京子,発行/講談社
まずは表題タイトルが気になり、目次を見ると5つの短編タイトルが並んでいて、どれもタイトルだけで惹かれてしまう。
「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」
「ラフレシアナ」
「妻が椎茸だったころ」
「蔵篠猿宿パラサイト」
「ハクビシンを飼う」
中島京子さんの、落ち着いた読みやすい文体と雰囲気を期待して、手に取り読んでみると、不思議なお話の世界に惹き込まれ、するすると読んでしまう。さて私は椎茸だったことがあるだろうか。リンゴだった頃に、お喋りをしていた気がする。あなたはどうだろう?
(選者・コメント:宇佐美 琴深)
3.『日本一バズる公務員』
著/守時健,発行/扶桑社
高知県須崎市のご当地キャラクター「しんじょう君」を生み出し、時にアテンドを担当したり、人口2万人の自治体がふるさと納税1000倍という実績を作った元地方公務員(現在は地域商社「パンクチュアル」代表)守時さんの著書。
イベントで地域のPRをしないなど、一見すると発想が突拍子もないように感じる部分がありますが、なぜそのようにしたかの理由が述べられていて、守時さん自身きちんと勉強され、戦略を練っていたのを感じます。なによりも守時さんの考えを理解してくれた楠瀬市長がいたからこそ、大きなことを成し遂げたんだなと思いました。
守時さんの自叙伝的な部分も交えながら、ゆるキャラやふるさと納税戦略が載っています。もきゅ友(しんじょう君ファンの総称)やゆるキャラファンは勿論ですが、ゆるキャラに興味がない方も、守時さんて何者? と思われた方もぜひ読んでみてほしいです。
(選者・コメント:れでぃけっと)
4.『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? これからの経済と女性の話』
著/カトリーン・マルサル,訳/高橋璃子,発行/河出書房新社
この本のタイトルにピンとくる人もいれば、全く何も感じず、気にならない人もいるだろう。
著者の言葉を借りるなら、
私たちはつねにジェンダ―や、身体や、特定の立場や、それぞれの歴史や背景を通じて世界を体験する。それ以外のあり方はない。そういうものを抜きにして人は存在できない。
から。
そしてこの本は、284ページにわたってマ―ガレット・ダグラスについて書いているようで、実際は1ページ分しか書いていないともいえる。私はエピローグの250ページ目でそんな風に感じた。
それは子どもの頃に読んだファンタジー小説の登場人物が「〇〇の息子、△△」と名乗る時に、〇〇が父親の名前のみであることと同じかもしれない。省略されるのは取るに足らない、わざわざ言うまでもない、と判断されてきたからだ。
経済学の「け」の字も知らなければ、普段ニュ―スを見ない、新聞も読まない人(=私)でも面白おかしく、痛快に読めたので、靴を脱いで、腰を下ろして、ゆっくり読んでみてほしい。
(選者・コメント:さくやさん)
5.『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら 青のりMAX』
著/神田桂一,菊池 良,発行/宝島社
このタイトル!手に取りたくなりませんか? 村上春樹”風”の焼きそばの作り方はこう(本書の前作『もし文豪たちが カップ焼きそばの作り方を書いたら』より)。
完璧な湯切りは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。
文豪やアーティスト達になりきり、妄想で書くカップ焼きそばの作り方。もうこのアイデアが思い付いた時点で勝利!
ページをめくると豪華なメンバー(?)がこれでもかと。内容が濃いです。ソースの様に。そして大盛り! この味わいまさに青のりMAXの名にふさわしいです。ぜひご賞味あれ。曽我部恵一さんのカップ焼きそばの作り方、好きです!
(選者・コメント:田澤専務)
6.『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
著/若林正恭,発行/文藝春秋
旅エッセイで、行き先がキューバで、お笑い芸人が描く5日間の旅。題名と表紙の犬が気になって手にとったら、旅文学な本でした。
キューバってこんな国なの? 5日間という短い期間でいろいろ詰め込んでいるけれど、満喫できるんですね。自分ではなかなか行動できないけれど、本を読むことで行った気持ちになるし、元気をもらいます。
最後にホロリと泣ける所も。題名から入るのもいいもんだなぁ。
(選者・コメント:三重のTomomi)
7.『の』
著/junaida,発行/福音館書店
タイトルが「の」の一文字なんです。素敵なハットを被った赤いコートの女の子が「の」と呟いている表紙を見ると絵本を開かずにはいられません。どうやら「の」という言葉には思いがけない出会いを招く魔法の力があるようです。
絵本なんでしょう? とあなどるなかれ。どのページもうっとりしてしまうほど美しく、大人も十分に楽しめる一冊です。ぜひぜひ扉を開いて、78ページの不思議な絵物語りの旅にお出かけ下さい。
(選者・コメント:HAPPY 弥生)
8.『プックリ・チッカリ・ピッポドゥ』
著/永井宏,発行/六耀社
タイトルを「読んで」くれたあなたへ。次は、声に出してみてください。
『プックリ・チッカリ・ピッポドゥ』
聞いたことのない不思議な言葉は、なんだかわからないけど、なんだか楽しくなってきませんか。
詩と散文が「Voice」「日々」など、いくつかのカテゴリーに分けてまとめられた一冊。日々の暮らしで、心に浮かんでもこぼれ落ちていってしまうような、ささやかな思いがすくい取られています。楽しく、優しく、飾り気なく。
その中に過去の自分、今の自分のかけらを見つけました。いつか時を経て手に取った時、未来の自分にはどの言葉が心に響くのかも楽しみです。タイトルの一編は、読んでみてのお楽しみに。最後の「あとがき」まで、味わってみてください。
(選者・コメント:mayuko)
9.『おしゃべりな人見知り』
著/山本ゆり,発行/扶桑社
帯に「黙る勇気をください。」と、あります。身に覚えのあるかたも、いらっしゃいますよね? もうね、ずっと喋ってます、この本。文章から声が聞こえてくる。そんな本です。
うなずき、そして、爆笑する。ひとりで居るとき(本読んでる時点で、普通ひとりの空間だわ)に、この本はいきなりベラベラ喋りだす、そんな本です。サービス精神の塊のような、そんな大阪のおばちゃんの、脳内だだもれのコラム集。
決して沢山人がいて静かにしなくてはいけない、バスや電車、病院の待ち合い室なんかでは読んではいけません。読み出したら、大阪のおばちゃんが側で大声で話かけてきます。
(選者・コメント:しみずぬりえ)
10.『とてつもない数学』
著/永野裕之,発行/ダイヤモンド社
「数学はお好きですか?」
中学校に進級すると算数という名前から数学という名前にに変わり、突如として出てくる負の数(マイナスの概念)から学んだ記憶があります。
そして、関数、連立方程式、確率、三平方の定理……などなど記憶を辿ると懐かしさと共に、数字を見ると頭が痛くなる、なんてことを思い出したりするのではないでしょうか?
さいん? こさいん? たんじぇんと?……どうせ大人になったら使わないし! なんて自分に言い聞かせていませんでしたか?
私は数学の不思議な魅力に惹かれていったうちの1人です(テストでいい点を取れていたかどうかはおいといて……笑)。
ある写真や絵画を観て、素敵だなぁと感じる時。アクティブノイズキャンセリング機能を搭載しているイヤホンで、快適に音楽を聴く時。実は、数学的な根拠がそこには隠れています。
身近にある事象や、デザイン、ビジネス……その思考を辿っていくと数学に行き着くのです。
そんな身近な事象をもとに、数学者をたくさん紹介してくれていて、数学の魅力、面白さ、すばらしさが実感できる一冊です。
(選者・コメント:宮村 直弘)
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