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vol.84 つづられる文字、したためる姿【手紙の助け舟】

みなさん、ごきげんよう。
喫茶手紙寺分室の田丸有子です。
いよいよ年の瀬も迫ってまいりましたが、いかがお過ごしですか。

先日、銀座のギャラリーで行われていた現代アートの展覧会に行ってきました。とても静かな会場でしたが、モニターが壁にかかっており映像が流れていました。

白いブラウスを身に纏い、肩まである髪を後ろに束ねた女性が一人机に向かっています。机にはかすみ草を無造作に入れたガラス瓶が置かれています。小さなポンポンのようなその影が黒い星のように板面に映っていました。女性は白い便箋に万年筆で文字を綴っています。静寂の中、流れるように一定のリズムを保ってサラサラと響く音。縦になめらかに繰り出される手書きの文字。私はペン先から次々と生まれ出てくる美しい文字にじっと見入ってしまいました。

手紙を書いている女性のたおやかでエレガントな姿も、ペン先から映し出される美しい文字も、映像そのものがアートの一部なのでした。
ただ手紙をしたためているだけの映像なのに、飽きることなくいつまでも見ていられるなぁと思いました。

何をどう書こうか考えをめぐらせているせいでしょうか。
漢字を必死に思い出したり文章を捻り出したりするせいでしょうか。
自分の中にある気持ちと向き合っているせいでしょうか。
誰かを想っているせいでしょうか。
手紙をしたためる姿にはいろんな表情があります。
手紙特有の、心が静かに整っていく感覚が、姿や表情にある美しさを引き出すのかもしれません。

私は人が手紙を書いている姿を見るのが好きです。
万年筆からインクが滴り文字に変わるその瞬間を見るのが好きです。

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田丸有子(たまる・ゆうこ)|喫茶手紙寺分室 note ライター
手紙文化振興協会認定 手紙の書き方コンサルタント
子供の頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの文通好き。
切手に描かれている美術品や絵画の実物を鑑賞するための美術館巡りが趣味。目下ステイホームで始めたベランダガーデニングに夢中。
blog: 手紙魔Yukoのお手紙ライフ


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