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【娘におくる手紙】1歳9か月、おおきいとちいさいを知る

これは、母から娘への手紙です。
2022年の夏、ひいおばあちゃんの生き写しみたいにそっくりな顔で生まれてきた娘。まばたきするくらい早く過ぎていく日々を書き留めて、娘が大きくなった時に渡せるよう、手紙にして残すことにしました。

▼1歳8か月、親になる

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こんにちは。お母さんから、今月のお手紙です。

いま、我が家にはオランウータンのぬいぐるみがいます。
身長50cmくらい。
あなたが生まれる少し前に、「赤ちゃんとおんなじくらいかな」と言いながら買って、抱っこ紐の練習に付き合ってもらったりしました。
生まれた当初はあなたのほうが小さかったけれど、いつのまにか追いついて追い越して、今ではすっかりあなたの子分みたいになっています。

オランウータンのぬいぐるみなので名前はそのまま「オランくん」。
食事のときには相棒のように隣に座らせて、「どーじょ!」と食事を分けてあげています。
スプーンをぎゅうぎゅう押し付けるものだから、口の周りがソースやポタージュスープのあとだらけになって、何回も洗濯されだいぶくたびれています。

お揃いのスタイもつけてあげます

あなたがすっかり気に入っているので、後日小さなサイズのオランウータンも加わり、それぞれ「大きいオランくん」と「ちいさいオランくん」と呼ばれるようになりました。
(あなたはまだ呼べないので、呼んでいるのはお父さんとお母さんですが)


この間の週末、お父さんがおでかけしていたので突如思い立って、ふたりで水族館に行くことにしました。
雨だったし、近所の室内型の水族館がちょうどいいかなと。
あなたは動物が大好きだから魚にも興味を持つかもと、少し期待して出かけました。

でも魚はほとんど見ようとせず、水槽に近づくとイヤイヤと顔をそむけ、抱っこから逃げ出していくあなた。
お母さんはせっかく来たのだからと、「おさかな、おおきいねー」「こっちはちいさいのがたくさんいるねー」と何度も水槽の前に連れていったけれど、あなたの興味を引くことは全くできませんでした。

代わりに好きだったのは、水族館のなかの階段とスロープ。
飽きずに昇り降りを繰り返し、エスカレーターも何度も乗りました。
満足いくまで水族館(階段)を堪能した話を夜お父さんにすると、あなたらしいと笑っていました。

水族館はまだ早かったかー、と思っていたところ、帰ってきてしばらくするとあなたに変化がありました。
なにか大きなものをみると、手をぐるぐる回しながら「おおきい、おおきい」と言うように。
お母さんが水槽の前でしていたのと同じ仕草です。
お魚は全然見てくれていないと思っていたけど、案外しっかり見ていたのかもしれない。
そして魚の ” 大きさ ” もちゃんと理解したようです。

さらに驚いたのは、オランウータンのぬいぐるみの小さいほうを指差して「ちいさい」と言い出したこと。
「おおきいのは?」と聞くと、大きいほうを指さします。
ほどなくして、大きいほうは「オランくん」、小さいほうを「ちいさい」と呼ぶように。

はからずも水族館に行ったことが、あなたの中で大小の意味をはっきり理解し、それを言葉として表現することにつながった。
どんな経験が何につながるか分からないから、本当に興味深くて面白いです。
歩くのもすっかり頼もしくなったし、もっともっと色んな場所に行きたいなと思います。

ちなみに、キッチンではバナナを手にして不満そうに「おおきい、おおきい」と言います。
そんなに大きくないのに。
それが大きさを伝えているのではなく、「もっと大きいのがほしい」という要求だとわかった時には、子どものことばの応用力とあなたの食い意地両方に脱帽でした。

それでは、また書きますね。

水族館のお気に入りスポット、スロープに興じる。スロープはなぜかハイハイ。


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原田 理恵 | 喫茶 手紙寺分室 note 編集長
「誰かの想いを翻訳・編集して磨き上げ、多くの人に伝えていく」が信条。旅と、時間が経って朽ちた風合いや佇まいがあるものがすき。ペンのインクはブルーブラック派。喫茶で最高のクリームソーダを出すのが夢。
Smiles: Project & Company 所属。

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