歯医者にお嫁さんを紹介しようとする夫の巻
仮止めしてもらっていたブリッジがまた外れてしまった夫に付き添って歯医者に行った。
元々このブリッジを拵えてくれたのは夫の友人でもあるアメリカ人歯科医のScottで、それも10年以上前の話だ。アメリカまで行ってScottにくっつけてもらうわけにも行かないので2週間ほど前にこの歯医者さんのクリニックに駆け込んだのだ。
その時の話はこれ。
前回はブリッジが今の口内の状況に合っているかしっかり確認してから固定するという説明を受け、仮止めをしてもらった。診察直後に外れたのを再度仮止めしてもらったが2、3日後にはまた外れてしまった。間に夫の海外出張が1週間入り昨日の再訪となった。
流石にもう一度仮止めをしても意味が無いので入念なチェックの後に1番強力なセメントで固めることになった。それでも外れるかもしれないと説明を受けた。何故なら最初にブリッジを作った時から時間が経っていて被せる元の歯の状態が悪化しているのと歯茎の後退もあって最適なフィットではないから。かといって高いお金を出して新しいブリッジを作るほどどうしようもない状態でもない。これでまた数年間は保つかもしれないし、すぐまた外れてしまうかもしれないがやってみるしかないと言われた。
ざっくばらんにわかりやすく説明してくれるこの歯科医を夫も私も大変気に入った。
他の患者さんとのやりとりを盗み聞いていても人柄の良さが滲み出ている。
診察の途中で夫がいきなりこう質問した、
"How are you, doctor?"
それに対して彼は
"Fine, thank you."
夫はすかさず、
"And your wife still loves you?(で、奥さんは今もあなたを愛してる?)"
と訊いた。これは夫の常套句の一つ。
これは通訳が必要だったので私が訳すと歯科医はこう答えた。
「僕シングルなんですよ。」
夫は間髪入れずに
"Do you want a wife?(奥さん欲しい?)"
と続けた。
「数年前まではそう思っていたけど、もう諦めた。もう51歳だし。」
とサラッと答えた。
夫は私を指差して、
"She has a lot of single friends. We can introduce them to you.(彼女には独身の友達が結構いるから紹介できるよ)"
と勝手に私の友人たちとこの歯科医をマッチメーキングしようという魂胆。
歯科医はとりあえず笑って受け流していた。恐らく患者さんの多くから同じようなオファー(?)を受けることがあるのだろう。彼の仕事ぶりや人となりを見ていると自然とお嫁さんを紹介したくなる人は多いと思われる。
彼はとても親しみやすい性格だが女性に対する理想がめちゃくちゃ高いのではないか、或いは過去の恋愛を後生大事に引きずっているのではないかというのが私の読みだ。
別れ際に夫は念を押した。
"We will invite you over for dinner and we'll introduce you to one of her friends.(いつか我が家でのディナーに招待して彼女の友達を君に紹介するからな。)"
「ちょっと怖いですね。」
と笑って応じる歯科医。
夫の治療は今後も続く。次回から私も診てもらう予定だ。この話は今後もつづきそうだ。