【新卒でスナックを継いだ一橋生。「自分がやりたいこと」を見つけるには。❘ TEDxHitotsubashiU2024 インタビュー企画】
私たちTEDxHitotsubashiUは2018年の設立以来「一橋大学内で新しい視点と出会う機会を提供すること」を理念として活動してきました。
来場者の皆様や一橋大学の学生に弊団体のイベントを通して、一橋大学が位置する国立という街の魅力にも出会ってほしいという想いから、今回国立市のお店や、国立市で活動されている方々に、今年度のイベントのテーマとなる”+roads(クロスローズ)”を主題にインタビューを行いました。
本企画を通して、国立というまちの魅力を再発見すると共に、今年度のテーマの核となる”人生における様々な選択”について再考する機会をお届けできたら幸いです。
インタビュアー
福井:Eventチーム所属、社会学部3年生。大学2年時からスナック水中にて店舗スタッフ兼インターンとして働く。
椿:経済学部2年生、Technologyチーム所属。最近はHP制作を勉強中。
今回インタビューをお引き受けいただいたのは、谷保駅から徒歩1分の場所にある「スナック水中」のママであり、株式会社水中の代表でもある坂根千里さん。
坂根さんは一橋大学社会学部の卒業生であり、弊団体とはTEDxHitotsubashiU2022の学生スピーカーとしてご登壇いただいたご縁もあります。
大学在学中には、ゲストハウス「ここたまや」を立ち上げたり、卒業と同時に東京・国立市の半地下にある9坪のスナック「すなっく・せつこ」を事業承継し、2022年3月に「スナック水中」として同店舗をリニューアルオープンするなど、学生時代から挑戦的に様々な選択をされてきた坂根さんに、「自分がやりたいこと」に挑戦する上での分岐や選択について、お話を伺いました。
【TEDxHitotsubashiU2022でのご登壇を振り返って】
福井:坂根さんはTEDxHitotsubashiU2022の学生スピーカーとして登壇されましたが、当時はどのような経緯で登壇されることになったのでしょうか?
坂根千里さん(以降、敬称略):一番最初のきっかけは、運営の皆さんからお声がけいただいたことですが、自分としても人の前でスピーチをするという経験があまりない中で、卒業後の進路に関して決断をしたタイミングで、何か自分のアイディアを共有するということに挑戦してみたいと思い、お引き受けしました。
福井:その時の経験を振り返ってみて、今どのように感じますか?
坂根:自分の中でずっと溜めていたアイディアを人に話し、アウトプットする機会をいただいたと思っています。
自分のアイディアをもう一度洗練するきっかけにもなりましたし、それをきっかけに共感・協力してくださった方達も多く、凄く良い経験でした。
福井:スナック水中がオープンしてからも、様々な場所でご自身の活動についてお話される機会が多いかと思うのですが、坂根さんにとって、「話す」という行為は、ご自身のビジョンや考えに影響を与える部分が大きいのでしょうか。
坂根:大きいですね。話すことで、その度ごとに頭の中で思っていた以上の言葉が出ます。それがうまく伝えられなかったなという反省になることもありますが、「こういうこと思っていたんだな」と、自分でリフレクションする体験でもあると思っていますね。
福井:スナック水中をオープンされてから2年が経ちましたが、TEDxHitotsubashiU2022でお話されたことと、現在のご自身のビジョンに何か変化はありましたか?
坂根:当時話したことはむしろ核になっています。そこからは逸れてはいけないと思うような、まさに立ち返る場所です。
【「自分がやりたいこと」への確信】
福井:大学生にとって、1つ大きい決断としてはやはり卒業後の進路があると思いますが、中々自分がやりたいことが見つからない、という学生も多いと感じています。
坂根さんは一橋大学を卒業後、新卒でスナックのママになるという進路選択をされたと思いますが、どのようにして「これが自分のやりたいことだ」という確信を持ってその道に進まれたのでしょうか。
坂根:そうですね。私にとってはTEDxで話したことが自分の行動指針になっていますし、私自身、何の為に生きたいかということはよく考えていて、それを忘れないようにしています。
ドラッカーは、「どのように人に記憶されて死ぬか」が生きる指針になるといいます。自分の行動を決める時に、「最終的には自分がこれをしたいのか」とか、「それは自分の時間をかけたいことなのか」という問いが1つの分岐になりますね。
福井:「自分がどんな風に記憶されたいか」や、「自分が何に時間をかけたいのか」という価値観が、坂根さんの選択において1つの大きな指針になっているんですね。
坂根:一方ですごく現実的な話ですけど、「何をするのか」と「そこにどれだけ熱量や時間を割くのか」は、別の話というか、理想と現実の話だなと思っています。
私でいうと、今スナックにフルコミットできているのは、同時にそれによって自分の生活も成り立たせることができるのかみたいな部分も考えているからです。
例えば学生さんであれば、好きなことはあるけど、それだけをやってたら卒業できなくなっちゃうとか、就職できなくなっちゃうとか、そういうこともありますよね。
ただ、そういう現実をみることで、それならどこまでの時間やリソースをかけられるのかがクリアになって、実際に行動できると思います。
福井:スナック水中オープンしようと決断されたのはいつ頃の時期でしたか?
坂根:大学3年の1月に決めました。
福井:それより以前は他の学生と同じように、一般的な就活をされていたということでしょうか。
坂根:サマーインターンだったり、冬の早めの就活もちょこちょことしていました。
福井:そのタイミングで就活からスナックの承継に切り替えたというのには、何かきっかけがあったのですか?
坂根:大学3年生の春くらいに、私がアルバイトをしていたスナックせつこのママから、半分冗談みたいな感じで打診されたのがきっかけでした。そこから就活とスナックの承継をどちらも考えながらで過ごしていて、結論が出たのが1月でした。
福井:水中をオープンされた当初は、スナック水中の事業と平行して、もう一つ別のお仕事もされていたと伺いました。やはりスナックを続けていくという道を選びつつも、もう一つ何か選択肢を残しておきたいという気持ちが坂根さんの中にあったのでしょうか。
坂根:そうですね。収入やキャリアの面での不安もあったので、そこをカバーできるものとして、副業の道も持っておきました。
福井:もう一つの別の選択肢を用意しておくことで、好きなことに熱量を注ぐことができる環境を作られていたんですね。
【ゲストハウスを立ち上げる-学生時代の取り組み】
福井:坂根さんは学生時代に、ゲストハウスの運営などを行う「たまこまち」という団体を立ち上げられたと思うのですが、それはどのタイミングだったのでしょうか?
坂根:大学2年生の時ですね。
福井:TEDxHitotsubashiUも実は比較的新しい団体で、初期メンバーの先輩方も立ち上げにはかなり苦労されたと聞きました。団体を立ち上げるというのはかなり大変なことだと思うのですが、坂根さんはどのようなところから始められたのですか?
坂根:最初はビラ配りでメンバーを集めました。学生をナンパしてましたね(笑)
福井:地道な活動でメンバーを増やしていかれたんですね。
たまこまちはゲストハウスを運営するため、谷保にある物件を借りて活動されていたと思いますが、それも全て学生だけで行っていたのでしょうか?
坂根:学生が主体で借りたというよりも、NPO法人くにたち農園の会という団体に物件を借りていただき、私たちが運営をするというような形でした。
福井:その時の活動の原動力となっていたのは何でしたか?
坂根:その時は大学があまり楽しくなくて、大学に通いながら、自分が何か挑戦できるプロジェクトだったり、それを動かせる場が欲しいなという風に思ったのが一つでした。
たまこまちを立ち上げたのは、宿業をして、国立のまちに遊びに来るゲストを楽しませたいと思っていたからです。
福井:たまこまちはNPO法人くにたち農園の会と連携しながら運営されていますが、どのようにしてそういった地域の大人の協力を得たのでしょうか?
坂根:経緯としては、私が1年生の夏に色々な各地方に行って、すごく宿業が面白そう、ゲストハウスをやりたいと思ったのがきっかけです。国立に帰ってきてから、誰が協力してくれるだろうかというのをネット上で調べました。その時に、たまたまヒットしたのがNPO法人くにたち農園の会でした。
その後、代表に直接会いに行き、団体を立ち上げることになり、そこから地域との繋がりができた感じですね。
福井:そうなんですね。最初はネットで情報を集めて、というのが少し意外でした。
私はスナック水中で働き始めたおかげで、坂根さんが作ってくださった学生と地域の繋がりだったり、国立のまちには様々な面白い活動をしている方々や学生に協力してくれる大人がいるということに気づけたので、今回この企画を通して、そのことを少しでも伝えられたらと思っています。
【国立は学生にとって「一番近い社会」】
福井:学生にぜひ知ってもらいたい国立のスポットや、紹介したい活動はありますか?
坂根:学生さんにとって、国立の町に出かける最大のメリットは「一番近い社会だから」という風に思っています。
国立というまちや、地域の人との繋がりに興味があるという学生さんは、社会学で勉強したことをもっと実現してみたいという人や、商業っぽく、自分で小さなビジネスやってみたいという人たちじゃないかなと思うんですよ。
実際たまこまちをやっていた時もはっきり2つに分かれていて、社会学的なものをもっと実践的にしてみたいとか、ビジネス的なことをしてみたいっていう2つの属性の学生さんがいました。
社会学的なところでいうと、NPO法人くにたち農園の会をおすすめしています。場所でいうと「くにたちはたけんぼ」というところになります。そこは畑の中で子育てを支援する事業などを行っているんですけど、そこで学生さんのアルバイトも募集していて、地域内の子育てや、そういった地縁的な子育てに興味がある方にとっては凄く面白いだろうなと思います。
それと、小鳥書房さんもおすすめです。小鳥書房さんは学生さんとも年代が近い20代の方々も多く集まっていて、本や編集はもちろん、哲学対話が好きなメンバーさんが多い印象があります。編集のお仕事に興味ある方にとっても、良い場所なのではと思います。
福井:小鳥書房さんは今回のインタビュー企画でもお伺いしたのですが、実際その際も編集のお仕事に興味があるという学生のインターン生の方がいらっしゃいました。
坂根:もうちょっとビジネスっぽいところで言うと、富士見台トンネルという場所は日替わりの商店という形で、キッチン付きの間借りスペースを貸し出しています。
実際に一橋のOBで、クナーファという中東のお菓子のお店を学生のころから出店していた方もいます。他にも、私の同級生の方でお酒が好きで間借りでバーテンダーをしている人もいたり、そういうチャレンジができる場所なので、是非行ってみてほしいなと思いますね。
【スナック水中の魅力とは】
福井:水中に来店されるお客さんや、水中で働かれてるスタッフの皆さんは、どのような点で水中に魅力を感じていると思われますか?
坂根:私はスナックを「参加型の喜劇」、台本なしの喜劇だなと思っています。そこにはスタッフやお客様がいて、水中で巻き起こる色々なハプニングがあって、そんな空間をみんなで楽しんでいる場所だなと。
なので、きっとその明るいスタッフ達が、様々なお客様が来る中で奮闘しながらも対応していくっていうプロセスだったり、自分もそこに混ざっていくことに、お客様は楽しみを感じていらっしゃるんだろうなと思います。
スタッフも、様々なお客様が遊びにいらっしゃる中で、お客様1人1人の思いを感じとったり、そこでの一体感を楽しむという空間を作ることに興味を持っている方が多いと思ってます。
福井:今回インタビューに参加している1年生の椿君はまだスナックに行ったことはないと言っていましたが、スナックに対してどんなイメージを持っていますか?
椿:“夜”というイメージが強いですね。自分がスナックに行ったことがないので想像にはなりますが、あまり時間を気にせずに、ゆっくりその場の雰囲気を楽しむような場所なのかなというイメージがあります。
何か目的があってスナックに行くっていうのも勿論あると思うのですが、そうではなく、目的が特になくても、その時、その場にいる人とか、その場の雰囲気や時間の流れを楽しむことができる場所なのかな思いました。
坂根:まさにそうだと思います。
【最後に、水中に興味を持ってる学生に一言お願いします!】
坂根:スナックというと凄くハードルが高いと思うのですが、水中は多分一橋生にとって一番入りやすいお店だと思うので、是非遊びに来てください。
スタッフも募集しています!
Interview:福井郁花 / 椿左京
Text:福井郁花
2024年2月11日(日)に開催されるTEDxHitotsubahiUでは、魅力的なスピーカーのトークの他にも、本企画をはじめとした地域の魅力をお伝えできるような企画を多数ご用意しております。
開催概要▼
日時:2024年2月11日(日)13:45開演
参加費:無料
対象:一橋生に限らず、どなたでも参加できます!
概要:カンファレンス(スピーチ)と交流会の2部構成
会場:一橋大学兼松講堂
詳細・参加申し込みはこちら▼
坂根さんのトークはこちら▼
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