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このnoteはマガジン「それと、すてきななにもかも」のイントロダクションです。 配信予定をアナウンスしています。 新しくマガジンをスタートします。 タイトルは「それと、すてきななにもかも」 ひと月に1話お届けする童話集です。 配信は以下の予定となっています。 1月 モリー、うしろむきに歩く(1/23配信) 2月 マリエルのうさぎ (2/20配信) 3月 よつあしオーケストラ (3/20配信) 4月 わたげのバルトロマイ (4/17配信) 5月 ディノコレクション
その日、モリーはベッドを出てからずっとうしろむきにばかり歩いていました。うしろむきに10ぽ歩いてはワンピースのすそをたくしあげ、おなかのようすをさぐっていました。何回見ても、かわいいおへそが見えるだけです。あるいは朝のころよりいくぶんへこんで見えたでしょうか。今は、朝ごはんと昼ごはんのちょうど真ん中の時間でしたので、朝ごはんに食べたオートミールとお紅茶の半分はなくなっているはずです。 モリーはじぶんのおなかを見て、ううん、となっとくがいかないようすで首を横にふり、ワンピー
朝早く、焼き立てのバゲットをかかえておうちに帰るとき、マリエルはいつもうさぎになったような気分になります。二本の長いパンのあいだから顔をのぞかせて歩いていると、ぴんと立った二つの耳が頭にはえたようです。ときどき、ぴょんとうさぎをまねてはねてみます。そうすると焼き立てパンのこうばしいかおりがマリエルの鼻さきでふわっとゆれます。朝のひかりの中で、それはいつもマリエルの心をうきうきとさせ、おなかのむしをぐう、といわせました。
ルーシーは ピアノをひくのが とっても じょうず りょうてを つかって ポロン ポロン ゆびは かろやか おとは うららか そればかりか ルーシーは りょうあし つかって ひくことも とびきり じょうず りょうあし つかって カロン カロン ゆびは かろやか おとは うららか そのうち ますます とくいになって ピアノの けんばん とびのって りょうてと りょうあし よんほんあしで ポカロン ポカロン とびきり じょうずに とびきり ゆかいに
タンポポのわたげのようなふりをして、それはやってきました。ふわふわとしていて、さわりごこちもやわらかなそれは、マリーの耳たぶにぶつかってはずむと、耳のなかにするするとはいってゆきました。 「きゃあ! くすぐったい!」 おもわずマリーは声をあげました。 「わたしのあたまのなかにはいってきた、あなたはだあれ?」 タンポポのわたげのようなそれは、口をつぐんでだまっています。 マリーは、うさぎのぬいぐるみで、しんゆうのセバスチャンにたずねてみました。 「わたしのあたまのなかに
スーは、おおきな骨のひょうほんを、ぽかんと口をあけてみあげていました。そのあとぎゅっと口をむすびなおします。しばらくして、口をひらき、せんげんをしました。 「わたし、恐竜になる!」 スーは、そのときから恐竜になりきりました。りょうてをすこしちぢめて、こしをまえかがみにおろします。そして、まわりににらみをきかせ、のっしのっしとあるきます。 スーがみあげていたのは、ティラノサウルスの骨格ひょうほんです。そのティラノサウルスはスーとおんなじなまえでした。だから、スーもこんなふ
「レイチェル! 夕がたから雨になりそうだから、パパにかさを届けてちょうだい。あなたはレインコートを着ていきなさいね」 お母さんにそう言いつけられてレイチェルは、すばやくレインコートを取りに自分のへやへと向かいました。黄色に白い水たまもようのレインコートはレイチェルのお気に入りです。レインコートをはおるとすぐに 「いってきます!」 お父さんのおおきな黒いかさをひきずって出かけていきます。空はあつい雲におおわれて、いまにも雨がふりだしそうです。 レイチェルはかさをひきずるの
ミルッカのともだちはカエルのタリーです。カエルといってもそれはぬいぐるみのカエルでした。ミルッカがうまれたときにサッラおばさんがプレゼントしてくれた、ひょろながいてあしとエメラルド色にきらきらとかがやくひとみをもつカエルです。ミルッカはうまれたその日から、ずっとタリーといっしょです。ねむるときはもちろん、ごはんのときもさんぽのときも。近所のともだちとあそぶときにもタリーはついていきます。タリーのあしはながいですから、ミルッカがかけっこをするたびにひきずられ、なわとびをするた
アオイはハサミでものを切るのがすきでした。 紙を切ります。 お兄ちゃんのあまりてんすうのよくないとうあんようしを切ります。 ザクザク。 シャキシャキパララと、とうあんようしはバラバラになりました。 「うまくつなげたら百てんに見えるぞ!」 よろこぶお兄ちゃんのことなど、きにもとめずアオイはべつなものを切ります。 カーテンを切ります。 ザクザク。 パタパタハララとぬのがゆかにおちて、かさなりました。 するとちょうど夕日の光がさしこんできました。その夕日がま
いぶきの家の庭には三びきのサイが住んでいました。けっしてひろい庭ではないし、おおきな池があるわけでもありませんが、三びきのサイは、いぶきの家の庭でなかよく暮らしています。 一ぴきは金のかんむりをのせています。 一ぴきは銀のかんむりをのせています。 一ぴきは黄色の花かんむりをのせています。 いぶきは三びきのサイのことをそれぞれにすきでしたが、なかでも金のかんむりをかぶっているサイがお気に入りでした。金色にかがやくかんむりがきらきらとかがやいていたのもありますが、な
おおきなおおきなバスケットをりょうてでかかえて、女の子が森の中へ入ってゆきます。女の子の名前はハンナ。森にほど近いお屋敷に住んでいる、ちいさなお嬢さまです。 ハンナがかかえるバスケットのおおいの布のすきまからは、ほんわりとあまいにおいがながれてきます。そのバスケットを左右にふりふりハンナは森のおくへと歩いてゆきます。そのにおいにつられるように動物たちがついてゆきます。シマリス、野うさぎ、子じかにヒグマ。ハリネズミも小さな足をけんめいにかけ出してハンナのあとを追いかけます。
冬の森を びゅんびゅんと かけぬける カモシカの せなかに 女の子のすがた なまあたたかい カモシカの はくいきに 顔をしかめながらも しがみつく 女の子の なまえは ステラ いつ カモシカの せなかに のったのか しれないけれど とにかく ふりおとされないように みじかい毛を かたく にぎりしめる 「どこまで ゆく つもりなの」 ステラの といかけに こたえることなく 走りつづける カモシカは 風のよう 冬の森は いちめん まっしろ ふかい雪 木の
ナターシャのなぐさめは、ベッドからながめるみずうみのようすでした。 おおきなお屋敷の二階の部屋からは、ひろびろとしたみずうみぜんたいを見わたせます。 秋から冬へと季節がかわろうとするころ、ナターシャは病気の療養のためにみずうみのほとりにたつ、このお屋敷にやってきました。 みずうみには毎日のように北の国からわたり鳥がやってきます。旅のとちゅうでからだを休めにおりてきては、ほんのなん日かをすごすと冬のすみかのある南の国へと飛びたってゆきます。 そのようすはナターシャのお