街森と自己中と優しさ〜小学生の頃の話〜
初めて自分で選んで買ってもらった「街へいこうよどうぶつの森」
私の母はゲームに対していいイメージを持っておらず(父はゲーム好き)子供にはあまりゲームをさせたがらない親だった。それゆえ家でゲームをするときは母親がいないときを狙ってプレイしていた。
だからうちの家では、ゲームの時間=超貴重な時間、だった。
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私ら姉弟にはルールがある。
①一人プレイのゲームは公平に30分ずつで交代でやる
②一緒にプレイしたいゲームは一緒にやるがプレイタイトルを選んだ人の30分でやる
街森は一人プレイだったので①だ。個人個人で家の借金を返したり家具を集めたり化石を掘ったりしていた。
そんな中、私はたまたま弟のいない時に一人で街森をしていたのだが、そのときは高級家具と高級洋服を集めるのにハマっていた。
私は小学生にして、いかにして楽に稼ぎ、いかに安く欲しいものを購入するかだけを考えていた。そう、ゲームの時間をいじりにいじりまくって、イースターと店のセール期間をうまく使って金を稼ぎ欲しいものを買っていた。
弟も一緒にプレイしていたのだが私よりも弟の方がゲームが好きだ。プレイ時間が私よりも長いため家は大きく、私にも高級家具や可愛い洋服をゲーム内で買ってくれていた。基本的に弟は優しい。また私の弟は世間の「弟」よりかなり懐いている。
こう書いていても心から思うのだが、弟は心が優しく人のことを考えられる、そういう子なんだ。それを大人は褒めたし、大人は私にもっとああなりなさいともよく注意してきた。
当時はそれを私は鬱陶しく思っていた。弟の純粋さは私の心の自己中心的の部分にチクチクと刺さっており、私には人のことより自分のことばかり考えてしまう自分の性格に嫌気がさしていることもあった。でもそんな感情は見ていなかったことにしようと幼心に蓋をすることに決めた。
でも、ある日その蓋の上に乗せていた重石がイライラした感情で吹き飛ばされてしまった。
私は、日にちを操作しまくって生えた雑草とラフレシアに嫌気が刺し、
街森の全データを消した。
後にそのことを知った弟は泣き崩れた。その時に私は思った。なんてことをしてしまったんだ、と。自分の利益のために人を悲しませてしまった。自分のことしか考えていなかったから弟の努力をボタン一つでまっさらにしてしまった。リセットひとつで今まで集めた家具なんかも全部なくなってしまった。雑草くらい一つひとつ抜いていけばよかった。頑張って捻出した少ない時間を街森にかけてきたあの時間を消さなければよかった。
今でもそのときのことはよく覚えている。というか、忘れられない。
私はその時から、リセットだけは二度としないと心に決めた。
弟は今も優しい。私はもう弟にあんな顔をさせない。
そう心に誓った。10年以上前の話。