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自社アセットを活用し、地域・スタートアップの課題解決を。NTT東日本が推進するまちづくりとマッチング

地域医療格差の課題に対応した「オンライン診療カー」

ーNTT東日本の事業の中で、医療分野に特化した取り組みをされていますが、どういった流れでこのような分野を選んだのか、また企業のミッションやビジョンがあれば、お伺いできますか。

NTT東日本は、医療を一つのビジネスとしています。仙台市のオンライン診療は、仙台市のまちづくりという観点もあり、市の課題から入っています。仙台市は政令指定都市ですが、色々な地域がある。街中もあれば、中山間エリアもある。地域の医療格差の課題として、地域の病院がどんどん減り、でも医療を受けなくてはならない住民の方がたくさんいらっしゃる。そこをいかに救っていくかを考えたことが今回の取り組みの経緯です。 

ー御社の取り組みで、医療分野で差別化できる部分や強みを教えてください。

 もともとNTT東日本は電話やインターネットという電気通信が強みとしてある会社です。その通信と医療を掛け合わせて、今回のオンライン診療というような形で、離れた地域でも質の高い診療が行われるところが強みかなと思っております。 

ーオンライン診療サービスについて詳しく教えていただけますか。 

コロナ禍になってから、オンライン診療はサービスとして増えていると思います。一般的なオンライン診療はお医者さんが診療所・病院に行って、患者さんは自宅で一対一で診療するのがよくある形だと思います。

 私たちが今回、仙台市さん・仙台市医師会さんと取り組んでいるオンライン診療は、看護師さんが患者さんのお住まいに行きます。それの何が良いかというと、普通のテレビ電話でつなぐオンライン診療では問診しかできないのですが、このサービスでは看護師さんが直接家に一緒に行くことによって、例えば聴診器を看護師さんが患者に当てて、その心音を離れたお医者さんが聞ける。そうすると問診だけではなく、診療データも病院にいるお医者さんが把握できるようになります。普通のオンライン診療よりも、より質の高い診療ができる点が、今回の最大の強みです。

 仙台市医師会の医師会長である安藤先生が、そこに非常にこだわりを持たれています。俗に言う「D to P with N」、「D」がdoctor、「P」がpatient、「with N」でnurseが一緒につく。それを実現するために私たちが色々協力させていただいています。 

ー看護師さんが診療カーに乗って遠隔診療をするにあたり、看護師さんの経験が浅くても大丈夫なのか、ベテランの方がいいのかといった部分はいかがですか。 

このやり方自体は昨年度から実証していて、今年度初めて実際の患者さんに実施していくというフェーズになります。初めての取り組みということもあり、どちらかというと経験値の高い看護師さんにやっていただいているのが実態です。

 ただ、これを広げていくためには、いかに簡単にできるかが重要です。お医者さんにとっても、看護師さんにとっても、患者さんにとっても負担のない形でやっていきたい。これがポリシーになっていて、今後は経験の浅い方々にもお使いいただけるところを目指していきたいと思っています。

オンライン診療でも医療の質を保つため、最新技術を搭載

ー遠隔診療をする中で、リアル診療と比較してズレが出る部分はあるのでしょうか。

 今回目指している医療の質について、安藤先生が重視していることは2つあります。一つは映像画像をあたかも対面しているように見たい。そこにはやはり、どうしても通信の壁、いわゆる距離の壁があるので、患者さんの雰囲気といったものを含めて伝えるのは非常に難しい。そこをどこまでキャッチアップできるかは一つの壁かと思っています。

 例えば会話をする中で、自分が話したタイミングと患者さんに伝えるタイミングが僅かに噛み合わない。そういった時間のずれは課題かなと考えており、それをキャッチアップするために、高品質なWeb会議システムを採用しました。

 そしてもう一つ注視しているポイントは、聴診器の音です。安藤先生のこだわりとして、この聴診という点が非常に強くあります。電子聴診器が大事で、聴診の音質をいかに対面と比べて差異のないものにするかという点は今回非常にこだわっています。聴診器を作っている企業さんと東北大学の先生にも入っていただいて、改善を重ねているところです。

 ー聴診器が特徴的で音にこだわっているとのことですが、それ以外で、診療カーの中に搭載されているもののこだわりをご紹介いただけますか。

問診に使う映像やWeb会議システムは、今回大変力を入れています。サイズが55インチの縦型のモニターを使って、患者さんを等身大で映せるのが今回の一つの目玉になっています。Web会議は通常小さな画面で実施するため、相手が小さく写ってサイズ感が分からないことが多いのですが、ここではあくまでも等身大の大きさで写すのがポイントです。 

ー当日のテクスタ宮城マッチングイベントでは診療カーの展示もしていただくと伺いました。どういった方にこの診療カーの存在を知っていただきたいですか?

 医療課題を持たれている自治体さんや医療機関、医師会の方に是非見て欲しいです。本音をお話しすると、こういった取り組みは広域で取り組んだ方が効果が大きいので、県の福祉課や医療課の方に診療カーを知っていただけると嬉しいです。

 また、診療カーに搭載している電子聴診器を開発してもらっているメーカーさんはスタートアップ企業です。他のスタートアップ企業さんが持たれている技術のうち、こういった取り組みで活用できるものがあれば、ぜひ一緒にお話しさせていただいて、いいコラボレーションができればと思っています。

 ー業種や分野としては、例えばどういったところに興味がありますか。

 私たちのミッションとして、地域のメンバーと一緒に町づくりを盛り上げていきたいというものがあり、その実現には色々な課題があると思っています。

 今回は「医療・ウェルネス」という観点で話させていただいたのですが、例えばエネルギー、カーボンニュートラルの観点は特に昨今、どの地域でも一番の課題だと思っています。例えばカーボンニュートラルや脱炭素の関係で、新しい技術を有しているスタートアップ企業さんと色々議論させていただいて、新しいサービス開発が一緒にできると嬉しいかなと思っています。

自治体と連携しながら、地域住民のためにできることを模索したい

ー中野さんはまちづくり推進グループにいらっしゃいますが、どういった方とまちづくりをしたい、こういったまちづくりをしていきたい、こういうことを実現していきたいという展望があったらお伺いできますか。

 まちを作る上で、とにかく色々な人と関わらないと進まないと思っています。自治体さんは当然として、大学などの教育機関、民間企業でも私たちのような立ち位置の民間企業もあれば、スタートアップ企業もある中で、色々なプレーヤーを合わせて良い関係性を作っていける、そういったことができるのがNTT東日本だと思っています。

 私たちが仲介役になって産官学、また金融機関も含めていい座組を作って、まち全体を盛り上げられたらいいなと。私自身、仙台に来てまだ2年経っていませんが、おかげさまで色々な産官学金の方から話をしてもらって、今こういったことができているので、そこをどんどん広げていきたいなと思います。 

ー宮城県だからこそできることって何があると思いますか。

私はもともと東京におり、3.11の時に災害対策担当にいました。現地にはいなかったのですが、電気通信という観点で、インフラをいかに早く復旧させて早く皆さんに届けるかをやらせていただいて、その心を持って宮城へ来たという経緯があります。

 現地を見ると3.11、震災はまだまだ終わってないと感じるところもありますので、そういうところからいかにまちを盛り上げていくか。人が住めなくなってしまったところをどうやって復興させて、また盛り上げていくか、今後取り組んでいかなければいけないと思っています。

コラボレーションの可能性を求めて、色々な人と出会いたい

 ー先ほどの診療カーは、県内のスタートアップとコラボレーションした機器も搭載していると伺いました。コラボレーションが生まれたきっかけを教えてください。

 今回は県内のテック企業であるミューシグナルさんにオンライン診療カーの機器を作っていただきました。きっかけは、まさに仙台市医師会の医師会長である安藤先生です。安藤先生は、医療においては音に強くこだわるべきとおっしゃっています。もともとミューシグナルさんは音響機器メーカーということもあって、安藤先生に教えていただいた会社です。

 このように、とにかく色々な方々と会っていく。今回のテクスタ宮城マッチングイベントもそうですし、仙台市や東北大学にもこういった場を作っていただいているので、とにかく色んな方と会う。実は色々なプロジェクトが動いているのですが、「複数の会社をつなげると、こんなことが出来るんじゃないか」という発想は、やはり実際に会ってみないと湧いてこない。そういった意味でも色々なところに入っていくのは本当に大事だと思っています。

ーNTT東日本がスタートアップ企業に求めること、どういった企業さんと一緒にやりたいかという水準はありますか。

 NTTグループが手掛けるアーバンネット仙台中央ビルが竣工し、そのビルにテクスタ宮城さんが参画いただいたりと、これまでの取り組みが実になってきています。
宮城県と同じく、やはり私たちもマッチングをしたいです。NTT東日本という会社は、当然営業する立場でもあるのですが、立場を変えれば相談を受ける側にもなる。
例えばスタートアップ企業さんのやりたいことや課題がある中で、足りないパーツが出てきた際には、私たちが普段触れ合っている企業さんのなかにその足りないパーツを持っている会社さんがいます。「こことここを組み合わせて、いい相乗効果が出るんじゃないか」というマッチング、私たちが間に入ることによって、新しいビジネスが生まれるのではないかと考えています。
そういったことが多分できると思っておりますので、新しいビルが建った後はまずは色々な方々に来ていただきたいです。様々な展示物やNTT東日本の取り組みを紹介しながら、皆様が実現したいこと、または課題をお伺いする機会を作ろうと思っています。 

ー「マッチング」というキーワードが出ましたが、テクスタ宮城主催の「スタートアップ×マッチングイベント」に望むことはありますか?

やはりとにかく色々な方々の実現したいこと、取り組んでいることをどんどん発信していただきたいです。そこから「私たちもこんなことが出来る」という提案ができると思っていますので、そういう場を様々ご提供いただければと思います。

 ー最後に今後のテクスタ宮城に求めるもの、望むものがあればお聞かせください。

 構成員同士のリアルな交流があると良いです。交流の中で、各構成員の強みを構成員同士が把握することで、「夫々がどのような役割で一緒にこのスタートアップの皆さんとやっていきましょうか」といった話が膨らむかなと思っています。

この1年ぐらいリアルイベントが増えてきましたので、是非リアルな環境で触れ合う機会を創出していただきたいと思います。

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