【前編】エン・ジャパンのプロダクトマネージャー・岡田康豊が語る 人材業界&HR TechにおけるDXのあるべき姿とは
大手求人情報サイトの「エン転職」をはじめ、「engage」「HR OnBoard」「Hirehub」などさまざまなHR Tech関連のサービスを展開するエン・ジャパン株式会社。いまやHR領域におけるデジタルトランスフォーメーション(以下DX)推進のトップランナーといっても過言ではありません。その本丸ともいえる開発チームを率いてきたのが、デジタルプロダクト開発本部長・プロダクトマネージャーを務める岡田康豊さんです。
いまだアナログな部分が多く残る人事・就職・転職という世界を、デジタルを使ってどのように変えようとしているのか。どんなキャリアや経験を積み、どのような想いを持ちDXに取り組んできたのか。岡田さんにDXについて、前編・後編に渡り、思うままに語っていただきました。
求人企業・求職者の体験を高めることが人材業界におけるDX
――エン・ジャパンでDXを推進しているのが、岡田さんがいま在籍しているデジタルプロダクト開発本部、通称・デジプロですよね。デジプロは、何をミッションにしている組織なのか教えてください。
岡田:デジプロでは、「理念に根ざした Web プロダクトを作り、磨き、広めるプロフェッショナル集団」と自分たちを定義しています。働くことが好きで、同時にそういう人がたくさんいる社会を作りたいとも考えている――私が所属しているデジプロにいるのは、そんなメンバーばかりなんです。なんだか青臭い人間が多いんですかね(笑)
▼デジプロ公式note
――今さまざまな業界や領域においてDXという言葉が声高に叫ばれていますが、人材業界におけるDXとはどのようなものだとお考えですか?
岡田:情報のデジタル化を通じて、転職活動や企業の採用活動といったところのエクスペリエンスを向上させること。これが、私たちがDXで目指していることです。
人材業界ではいま、Candidate Experience(※応募者体験)とEmployee Experience(※従業員体験)、Alumni Experience(※退職体験)――この3つの体験向上を目指せといわれているんですね。これらは基本的に求職者側の話なんですけれども、一方で企業側にも「ハイアリング(採用)のエクスペリエンス」というものがあると僕は思っているんです。
――求職者と同じように、企業側にも体験の向上が必要と。
岡田:そう。僕達が今やっているのは、「雇用する・雇う」という意味でのハイアリングのエクスペリンス、これをデジタルサービスを通じて向上させていくことなんですね。
これまでの求人を出す一般的なフローって、私たちのような企業に原稿制作を依頼して、その原稿を広告として出して、はいおしまい――という世界でした。ところがデジタル技術が発展してくるなかで、企業自身が自分達で原稿を書いて、自分たちで求人できるような環境に変化しつつあるんですよね、いまは。
――エン・ジャパンさんの採用支援ツール「engage」も、求人企業側が自身で原稿を書くかたちになっていますよね。
岡田:まさにengageが、ハイアリングのエクスペリエンス向上にあたるサービスだと考えています。基本無料でお使いいただけますし、採用ホームページもカッコよく作れて、求人もすぐに出せて。こうした一連の体験を提供できていることが、僕たちがやっているDXの価値なんじゃないかと思っています。
――求職者の皆さんには、DXはどのような価値を提供しているのでしょうか?
岡田:最近ですと、Employee Experience(従業員体験)向上の一環として、入社後のアンケートシステム――エン・ジャパンですと「HR OnBoard」というサービスがあるんですけれども――これも活用されています。入社した後すぐに辞めずに活躍し続けてもらえるよう、新しく入った社員にアンケートを取って情報をスコア化し、人事に提供するわけです。
――なるほど、たしかに社員のモチベーションや退職リスクは、アナログ情報の最たるものですよね。それをHR OnBoardではデジタル化・可視化して、従業員体験の向上に役立てているんですね。
岡田:これまで人材業界っていうアナログな情報を扱うことが多かったんですけれども、データという側面からいろんなものがスコア化されはじめています。こうしたデジタル化を通じて、求職側・求人側の双方にいろいろな体験向上を提供していくのが、ぼくたちエン・ジャパンの最終的な目的です。
転職の失敗経験が働く意義を知るきっかけに
――岡田さんはこれまでCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)でWebディレクター、DeNAでプロダクトオーナーを務めるなど、そうそうたる企業でご活躍なさっています。どういう経緯で転職を決断し、人材業界に飛び込まれたのですか?
岡田:もう少し前の話からすると、いまのエン・ジャパンで5社目なんですね。1社目はゲーム会社で効果音を作る仕事をしていました。
――Webと関係のない業界からキャリアをスタートされたんですね! 音楽関連の学校に通われていたんですか?
岡田:そういうわけでもなくて(笑) 趣味で音楽をやっていて、シンセサイザーとか触るのが好きだったのが運よく仕事につながりました。その仕事で扱っていたタイトルがオンラインのゲームだったこともあって、Webの世界に興味が移っていったんですね。
Webの制作会社に入ってからは、ほぼ未経験ながらWebデザイナーをやることになりました。ハードな環境だったんですけど、デザイン、コーディング、プログラミングなど幅広く経験を積むことができました。
――そこからCCCに?
岡田:はい。自分ひとりで作れるものの範囲って狭いので、会社の力や人の力を使ってより大きな範囲で仕事がしたいと考えたんですね。ちょうどその時はオンラインのCD/DVDのレンタル事業が成長していて、勢いのあるところで働こうと思ったんです。
そこからあらためてフィールドを変えようと思ってDeNAに転職したんですけれど、入ってすぐ辞めちゃったんですよね。この転職は僕にとっては失敗だったな……。
――そうなんですか? DeNAさん、すごく働きやすそうなイメージがありますけれど。
岡田:DeNA自体はすごく働きやすい会社でしたし、一緒に働く人たちも優秀な方ばかりでした。だから、「失敗」したのは完全に僕自身の問題なんです。
給与や働く環境といったある意味ミーハーな気持ちで会社を選んでいて、自分が本当は何をやりたいかをあまり重視していませんでした。でも、いざ働いてみたら、自分のやりたいことと違うなって気付いたり、会社の文化が自分にあわないところもあったりして。いわゆる「音楽性の違い」ですね(笑)
――転職の失敗経験が、働くことの重要性を認識するきっかけとなったわけですね。
岡田:うん、この経験がいまの僕につながっているなと思うんです。
僕にとって人材業界や仕事の提供って、社会インフラに近い存在なんですよね。働くってそれぐらい尊いものですから。だからそういう場所なら、もっとやりがいを持って働けるかもって思い、エン・ジャパンに入ることにしたんです。
実際にここで働いていく中で、人材業界の面白みであったり社会的意義をより深く理解できるようになっていました。この歳になってようやく、自分が働くことの意義や意味というものを認識できたなあ……なんて感じています。
エン・ジャパン入社後半年で大きな失敗・・・?続きは後編へ。
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エン・ジャパン株式会社 デジタルプロダクト開発本部 部長 岡田康豊
ゲーム会社、Web制作会社など、4社にてデザイナー、ディレクターの経験を積み、2012年にエン・ジャパンに中途入社。プロダクトマネージャーとして数々のサイト運用と立ち上げを経験する。現在は『エン転職』のサイト責任者を務めながら、エン・ジャパンの全てのプロダクトの運用を手がける「プロダクト企画開発部」の部長としてマネジメントも手がけている。
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