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先達の智

どうしても不都合の事があって、洗濯物の一部を手洗いする運びになった。
洗濯物を手洗いするなんて何十年振りだろうか。少なくともこの10年は記憶が無い。以前は洗濯板を所持していたが引っ越しの際に処分してしまった。

取り敢えず地元のDAISOを覗いてみる。洗濯板があったら買おうと思ったのだが、流石に近頃はそんなアナログな方法で洗濯をする人は殆ど居ないらしく影もカタチも見えない。その代わりに震災グッズのひとつとして【簡易洗濯バッグ】なる商品がある事を知った。少量の洗濯物をまとめて入れて洗剤を溶かした水の中で手洗いし、絞って干すと言うシンプルながらになかなか使い勝手が良さそうな品だ。
ところがこの品、あまりにも人気が高過ぎて小規模の店舗では入荷が止められているらしく、近隣の店舗には在庫が無かったのみならず、次の入荷の目処も立っていないと言う。平身低頭する店舗スタッフの方を宥めつつ、何か代案は無いかとそれとなく訊ねたら、ご年配のスタッフの方がこんな事を教えてくれた。

「以前、震災ボランティアとして活動した事があるのですが、その時は固形の洗濯石鹸を用い、滑り止めのついたゴム手袋を装着して、それで手洗いしたんですよ。ただ手で揉み洗いするより汚れ落ちが違いますから、インナーや靴下位ならこれで十分イケますよ」

良い事を聞いた…!とワタクシは勇み立ち、勧められるままに固形の洗濯石鹸とゴム手袋を購入した。それを用いて先日、早速インナーと靴下を洗濯してみたら、成る程ゴム手袋の滑り止めが洗濯板の刻みの部分の代役をしっかり果たしてくれるらしく、泡立ちも良いし汚れも落ちる。乾くのに時間がかかるのが難と言えば難だが、申し分ない洗いあがりだった。

中国には【老馬の智、用ゆべし】と言う格言がある(中国語の「老」の文字には「歳を取った」と言う意味の他に「先達」とか「偉大な」と言った意味が含まれる事があり、恐らく後者の意味で用いられていると推測される)。経験豊富な方のアドバイスは、傾聴すると時として思わぬ助けになる事がある。今回のDAISOスタッフさんからのアドバイスはまさしく【老馬の智】と言う格言を思い起こす出来事だった。

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