通り魔的な広告
YouTubeを観る上で避けて通れないのが、動画の途中で挿入される広告である。プレミアム会員になれば非表示に出来るが、其処まで広告が煩わしいと思う事は殆ど無い。動画広告はその殆どが十数秒で終わるシンプルな内容で、TVのCMよりも見てて不快にならないからだ。
但し、中にはその十数秒の動画広告で、ワタクシに深い心的ダメージを与える極めて不快な内容のものがある。そんな数少ないイレギュラーが、競艇の動画広告である。
ワタクシは元々ギャンブルの類が好きでは無い。泡銭が身につかない体質なのと、依存症になった人間から危害を加えられる事が過去多かったからだ。
大陸由来の致死性感冒が流行した頃、我が在所でパチンコ屋が軒並み閉店した時には内心拍手喝采したい気持ちになったものである。
唯一その空気に触れても不快にならないギャンブルは競馬で、何なら過去に数度競馬場には足を運んだ事がある。但しギャンブルに興じる為では無く、入場者に向けた出店で食べられるB級グルメが目的である(我ながら不埒な動機だとは思うが)。
大阪府ではカジノを合法化する動きがあるやに聞く。正直不安しか無い。
然し上記に並べたギャンブルは、YouTubeに広告を出しているのを先ず見ない。出さずとも潤っているのだろう。
そんな中、唯一YouTubeの動画で猛威を振るうギャンブル系動画広告がある。
ずばり、競艇の広告である。
競艇の世界の事はワタクシはあまり良く知らない。興味が無いからこれまで知ろうとも思わなかったのだ。だが、YouTubeが積極的に競艇の広告を、それもスキップやブロック設定が出来ないよう通り魔的な雰囲気で挿入するものだから、自然とその内実を覚えてしまった。典型的な体育会系の世界で(事実、競艇関係者は競艇を【スポーツ】と自称している)、互いが互いをライバル視するが故に居丈高な口調の選手が多く、または言動がエキセントリック過ぎる【友達になりたくない】タイプの選手も散見される。広告だから多少の誇張はあるのかも知れないが概ねそんな感じだ。
無礼な後輩選手、生意気で他人を見下す女性選手、そして逐一相手を恫喝し眉間に皺が絶えないベテラン選手。感受性が高いワタクシは、そうした登場人物がスマホの向こうに姿を現す度に具合が悪くなる。
何より良くないのは、このベテラン選手を演じている役者が、以前からワタクシがその演技を高く評価している歌舞伎役者の方である事である。
元々強面のキャラを演じる事に定評がある方だが、この一連の動画広告でもその演技力が如何無く発揮されている。
昔から芝居の世界では【悪役を見事に演じられる役者程実力が高い】と言われている。そうした意味では、ワタクシが抱くかの歌舞伎役者の方への畏怖の念は寧ろ当人にとっては誉れに近いのかも知れない。
だが、動画を観ていていきなり広告が来て、怒鳴りつけられるワタクシは堪ったものではない。年々、かの歌舞伎役者の方への第一印象が悪くなっている事を正直にカムアウトする。演じている歌舞伎役者の方に毛筋程も罪が無い事は承知の上で。
因みに、競艇の動画広告を煩わしく思う方はワタクシ以外にも大勢居るらしく、電磁の海を軽く流し見したら広告に対する非難の記事がわんさかとヒットした。
情報は、ポジティブなそれよりネガティブなそれの方が印象に残りやすいのだと聞く。もしかして競艇の動画広告は、それを逆手に取った上でのあの内容なのだろうか。