【ぼくは"元"航空管制官】ステージ2~管制官と密接に関わる電波~
こんにちは。元航空管制官の田中秀和(たなかひでたか)です。
6月1日は「電波の日」ですが、ご存知でしたか?
昭和25年(1950年)に電波法、放送法及び電波監理委員会設置法が施行され、電波の利用が広く国民に開放されたことを記念して「電波の日」が設けられました。航空管制官もパイロットとの交信で無線を使いますし、管制官が使用する管制卓に飛行機の位置や高度を映すことが出来るレーダーも電波を使用していますので、管制官にとって電波はとても重要なツールです。
「電波」には有名な逸話があります。空には目には見えませんが、航空路と呼ばれる航空機の通り道が無数に設定されています。また、交差点や曲がり角等、航空路上には無数の「FIX(フィックス)」と呼ばれる地点が設定されており、国際ルールに則りアルファベット五文字で名前が付けられています。その中の一つに「DEMPA(デンパ)」があるのです。この命名理由が実に面白く、かつてあった「電波少年」という番組シリーズの中で、航空局に掛け合って作って貰ったのがこの「DEMPA」です。番組放送から何十年も経っていますが、今も紀伊半島の南南西に現役のFIXとして存在し、毎日航空機が通過しています。テレビ番組が掛け合ってFIX名が決まるというのは異例中の異例なため、航空関係者の間では有名な話となっています。実はFIX名については他にも沢山面白い話がありますので、また別の機会にもご紹介出来たらと思っています。
話は大きく変わりますが、日本では管制官とパイロットは原則として英語で交信を行います。国際標準である英語で交信を行うことによって、その周波数にいる全てのパイロットが交信内容を理解し、状況を共有することが出来ます。また、普段のやり取りは殆どが国際基準に則った定型文を使用しているため、同じ周波数をずっと聞いていれば、比較的簡単に内容を理解し、用語を覚えることが出来るかと思います。なお、緊急事態や急病人の発生等、イレギュラーなことが発生すると、日本人パイロットとの間では日本語を使用することもあります。ちなみに、中国やフランスは日本とは違い、管制官は自国の航空機とは母国語で、その他は英語で交信を行います。
日本では管制用語は英語と日本語の二種類が定められており、例えば離陸許可である「Cleared for take-off.」は、日本語では「離陸支障ありません。」となっており、着陸許可の「Cleared to land.」は「着陸支障ありません。」となっています。よくドラマやドキュメンタリーで「離陸(着陸)を許可します。」と字幕が出ますが、あれは厳密には誤りであると言えます。私が監修するなら「離陸(着陸)支障ありません。」としたいところですが、きっと視聴者に分かりにくいからと制作側におされてしまい、従来通りの誤訳で通されてしまうのではないかと思っています。「そんなことはしない!リアルな管制官の番組を作ってみたい!」という関係者の方がいらっしゃいましたら、是非私までお問い合わせ下さい(笑)次のステージもお楽しみに。
Good day!!
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