Fitbit(selfbase)でどのようなデータを取得することができるのか(心拍・アクティビティデータ編)
今回は,「fitbitで取得できる心拍・アクティビティデータ」というテーマで書かせていただきました.
こんにちは,医学研究科博士課程の石川です.Tech Doctorではインターン生として活動しています.
ここではヘルスケアを主眼においたウェアラブルデバイス・Fitbitについて,なぜ最近このようなデバイスが注目を集めているのか,そしてデバイス自体がどのようなデータを取得しているか,そのデータから私たちTech Doctorがどんな情報をユーザーの方に提供できるのかを簡単に説明します.
本記事は前編と題し,心拍・アクティビティデータについて紹介します.後編では睡眠データを扱います.
あと,冒頭に失礼いたします.弊社へのお問い合わせはコチラになります.「こんなことはできないか?」,「こういうサービスまたは研究をしたいんだけどサポートしてくれないか?」など,もしあれば、ぜひお気軽にご連絡お待ちしております.
1. デジタルバイオマーカーの測定
バイオマーカーとは解剖学的・生理学的・病理学的特性を示すデータを指し,診断や治療計画の策定に用いられてきました.近年新たなバイオマーカーとして注目を集めるものに,デジタルバイオマーカー(dBM)があります.dBMとして活用されるデータは,スマートフォン,ウェアラブルデバイスなどのデジタルデバイスによって収集されます.dBMはデジタルデバイス技術の発展に合わせて生まれたもので,そのデジタルな性質は統計解析や機械学習,AIを用いた技術との相性が良く,健康情報や疾患について新しい情報を提供することが期待されています.
このようなdBMを計測できるデバイスとして,Fitbitがあります.Fitbitとは,アメリカ・カリフォルニア州に本社を置くFitbit社によって開発された健康状態トラッカー機能のあるスマートウォッチです.
私たちTech doctorでは,Fitbitの取得する詳細なデータにアクセスすること,データを解析して分かる健康状態や,見たいものに対するアプローチ手法について提案することが出来ます.
さて,ここからはFitbitで測定できる心拍数,歩数や移動距離・消費カロリーなどのアクティビティデータ,そして睡眠に関するデータについて説明していきます.
2. 心拍データ
Fitbitで測定できる心拍数周辺のデータについて整理して説明します.
心拍数:5秒ごとに測定できる
FitbitではPPG(光電脈波法)という手法によって,約5秒ごとに心拍数を測定・取得することが出来ます(さらに細かな単位で取得する方法もある).画面裏に内蔵されている低出力の緑色LEDと光検出器によって,心臓の拡張・収縮に合わせた腕の毛細血管中の血液量の変化を捉えることで計測しています.画面裏に内蔵されている低出力の緑色LEDと光検出器によって,心臓の拡張・収縮に合わせた腕の毛細血管中の血液量の変化を捉えることで計測しています.
下の画像は,実際にFitbitで測定したある1日の心拍数の変化です.後ほど詳細に触れますが,青色の部分は「ゾーン未満」,黄色の部分は「脂肪燃焼ゾーン」,橙色の部分は「有酸素運動ゾーン」です.
もう少し運動量の多い瞬間があれば,同じように赤色の部分「ピークゾーン」が現れるはずです.この日は「ピークゾーン」に達するほどの運動はしなかったようです.このように,運動量が少ないということもしっかり可視化できてしまいます.
心拍変動(HRV):RMSSDのみ,1日ごとに測定できる
心拍間隔はメトロノームのように一定ではなく,900ミリ秒の前後で揺らぎを持って分布します.この揺らぎは心拍変動と呼ばれ,自律神経の指標として注目されています.心血管系の健康状態だけでなく,ストレスに対する耐性を示し,心拍変動が大きい方が健康状態が良く,ストレス耐性も高い可能性があると考えられています.
心拍変動に関して,詳しくは以下の過去記事をご一読ください.
心拍変動については,心拍間隔から計算できるさまざまな指標がありますが,FitbitではRMSSDという指標についてのみ計算し,アプリで確認することが出来ます.RMSSDをFitbitアプリ上で見るためには,睡眠中を含めて丸1日Fitbitを装着している必要があります.
Tech Doctorでは,Fitbitによって測定した心拍数データからRMSSD以外の心拍変動指標についても算出することができ,さまざまな視点から健康状態についてお見せしています.心拍変動のさまざまな指標の話は今後記事を公開していく予定です.
安静時心拍数:1日ごとに測定できる
安静時心拍数とは,安静にじっとしているときの心拍数を指します.フィットネスレベルや心血管の健康状態を示す重要な指標で,通常は60-100 bpmの間の数値を取ります.Fitbitでは毎日の安静時心拍数を測定し,日々の推移を知ることが出来ます.
心拍ゾーン:5秒ごとに測定できる
Fitbitでは心拍数からアクティビティレベル(運動強度)を判定することが出来ます.アクティビティレベルはピークゾーン,有酸素運動ゾーン,脂肪燃焼ゾーン,ゾーン未満の4種類のゾーンに分類されています.このアクティビティレベルについてはこのあと説明しますが,年齢で決まる最大心拍数と安静時心拍数によって判定することがあります.
3. アクティビティ:アクティビティレベル,歩数,移動距離,消費カロリー
次は,活動量に関するデータです.
アクティビティレベル:5秒ごとに測定できる
Fitbitでは心拍数からアクティビティレベル(運動強度)を判定出来ます.アクティビティレベルはピークゾーン,有酸素運動ゾーン,脂肪燃焼ゾーン,ゾーン未満の4種類のゾーンに分類されています.
それぞれのアクティビティレベルは,下の表のとおり最大心拍数と安静時心拍数*1から算出できます.表記が煩雑になるためここでは「最大心拍数-安静時心拍数」を「心拍数予備」と表現していますが,すべて最大心拍数と安静時心拍数さえ判明していれば計算可能です.また,Fitbitでは最大心拍数を220-年齢という計算式で算出しています.
歩数・移動距離:1日ごとに測定できる
搭載されている3軸加速度計によって歩数を計測します.Fitbitのタイプによっては単純な歩数だけでなく,階段の昇降も計測できるものもあります.移動距離については,GPSデータを使用するか,歩数と歩幅を掛け合わせることで求めます.
消費カロリー:1日ごとに算出できる
生命活動を維持するために必要な最低限のエネルギーである基礎代謝量(BMR)とアクティビティデータから算出する運動中の消費カロリーを合わせて1日の消費カロリーを推定します.
・基礎代謝量(BMR):身長、体重、性別、年齢に基づいて算出
・運動中の消費カロリー:心拍数データを活用して算出
4. まとめ
今回はバイオマーカーのなかでも,近年の急速なデジタルデバイス技術の発展を背景としたdBMの話から,デジタルデバイスの具体例であるFitbitで取得できる心拍・アクティビティデータについてまとめました.次の記事ではFitbitで取得できる睡眠データについて紹介します.
今後も,継続的にこの領域に関してキャッチアップした上で,発信をしていきたいと思います.ご興味を持っていただけたならば,「スキ」していただけると中の人が喜びます.
弊社㈱TechDoctorではウェアラブルデバイスデータを主軸に人々のメンタルヘルスを計測・可視化、さらには分析していき,より健全な社会にしていくことをモットーに調査・研究・サービス開発を進めております.
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*1 安静時心拍数...定義が不透明なものが多いので各デバイスの算出定義を確認する必要性がある
参考文献
[1] Lux Research, ”WHAT ARE DIGITAL BIOMARKERS?”, https://www.luxresearchinc.com/blog/what-are-digital-biomarkers (2021/11/30)
[2] fitbit Help Manuals, "How do I track heart rate with my Fitbit device?", https://help.fitbit.com/articles/ja/Help_article/1565.htm (2021/11/30)
[3] fitbit Help Manuals, "How does my Fitbit device calculate my daily activity?", https://help.fitbit.com/articles/ja/Help_article/1141.htm (2021/11/30)
[4] fitbit Help Manuals, "What are Active Zone Minutes or active minutes on my Fitbit device?”, https://help.fitbit.com/articles/en_US/Help_article/1379.htm (2021/11/30)