#13.何でも金なり。

Z世代から特に唱えられ出したコスパ、タイパという言葉。それ以前にも当然あった言葉だが、重視され始めたのはやはり若年世代の経済的余裕の無さ。あるいは新陳代謝として、不要な文化や慣習の切り捨てでもあるのだろう。

日本政治が言葉遊びと責任転嫁、友達政治と内ゲバの繰り返しの果てに、現代日本の国民負担率は45%以上となり、所得は大きく減った。上の世代がどれほど言い訳しようと、若さへの嫉妬から見下そうと、確実に若い世代ほど経済的に苦しいのが事実である。所得の数字だけでなく、未婚率を原因とした少子化もそれを示している。

そんな若い世代が、それまでの浪費的な文化、こじつけのような社会通念を切り離して、自身の生活を守ることを批判する事は誰にもできまい。もはや日本そのものが豊かでない以上、むしろ上の世代こそが猛省し、その合理性から学ぶ時代だ。

さて、コスパ、タイパの考え方で有効な一つの観点は、自身の時給(生産性)を把握し、常に頭の隅に入れて行動する事である。

ラーメン屋の話などは分かり易い。一杯1000円のラーメン店が2店あるとしよう。片方は普通のチェーン店、もう片方は行列のできる人気店とする。後者の方が確実に美味しいのだろうが、その行列に並ぶと1時間待たされる。そうなると、仮に自分が時給2000円(年収400万円相当)とすると、人気店のラーメンは1000円の代金に加え、1時間を支払うので計3000円のラーメンとなる。そしてこの時、果たして人気店のラーメンは、チェーン店のラーメンの3倍の価値があるのか?という問いが生まれる。

この問いの正解は、「納得した上で」選ぶなら、どちらのラーメンを食べても良いことだ。重要なのは計算した上で、自分にとって良い方を選ぶことにある。とりあえず安い方を選んだり、情報を食うと揶揄されるような流行り物に飛びつく思考停止とは対極にある、常時計算型というべき人間であることが求められる。上記の例のように、求められるのは、ここぞという時だけ難問を解く能力でなく、簡単な計算を行い続ける体力や瞬発力である。これは義務教育さえ経ていれば、学歴に関係なく、心掛け次第で癖づけることができる。

前置きが長くなったが、ここからが私の話。

住む場所には当然必要とされる家電というものがあって、その中にテレビが入っている人も多いだろう。私も、加えればテレビラックなどもあって当たり前と思っていた。しかしここ数年はテレビで見るのはニュースと映画と後は1ジャンルくらいのもので、ドラマであるとか、程度の低いバラエティなどは見なくなってきた。もしかして自分にテレビはいらないのでは?と埃を被りつつあるそれを見て、計算をする。

私は新宿に住んでいるが、新宿の家賃は例えば20平米の1ルームで月額8万円ほど。つまり1平米4000円、1畳は1.82平米ほどなので換算すると7300円である。テレビとテレビラックは、それの前に物を置くことができないことも考えれば、部屋の1畳ほどを占有していると考えて良いから、テレビを置くことで月額7300円の場所代を負担していることになる。仮にこの家電がなくなれば、部屋をより広く使えるし、掃除の手間も減る。これにテレビの保有でかかるNHK受信料が含まれて、テレビという家電は、月額9000円強の負担を私に与えていることになる。にもかかわらず、私はその金額に見合う役割を、すでにテレビに求めていない。9000円で他にできることを考えれば、全く割に合わないと思った。

ではテレビがない場合はどうなるのか。もとより民放は見ていなかったし、どうしてもというなら今はTVerなどのサービスがある。ニュースは従来のネットでも良いしYoutubeで垂れ流しも可能である(なんなら、即応性はテレビより早い)。あとは映画ともう1ジャンルだが、これらはアマプラ等の各種配信サービスで合計1000円程度(アマプラは通販での利点も大きい)で、過去も含めてCMも挟まず見放題にできる。内容だけなら、月額8000円も節約できて、かつコンテンツは充実するのである。

代わり、テレビに代わるモニターがいるが、これを照明型プロジェクターにすれば場所を取らない上、120インチ程度の大画面が実現できる。プロジェクターの性質上、画面がしっかり見える程度には部屋を薄暗くする必要はあるが、これは調光可能なスマートLEDライトで柔軟的に解決できた。

チャレンジ精神で試してみたが、結果的に大成功だった。もう、テレビのある生活には戻れないほどに、である。

多様なサービスが溢れる時代。固定概念を捨て、「自分」に本当に必要な要素を、細かい単位で取捨選択し、それぞれを特化サービスに置き換えて組み合わせ、生活空間を構築することが現代では可能であり、それが充実した生活と節約につながる。

今の日本では、切り捨てられる側の者たちが既得権益を失うまいと、必死に見苦しく足掻いているところを見かける。この膿を私たちは、若年層を見習って断固拒否せねばならない。さもなければ、いずれ日本自体が世界から切り捨てられる。実際私も、上記の生活改善で利用している殆どが、海外製品と海外サービスなのだから。

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