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悪魔の植物と言われた『ジャガイモ』


【ジャガイモの原産地】

ジャガイモの原産地は、南米のアンデス山地である。
コロンブスのアメリカ大陸発見以降、ヨーロッパの人々が南米を訪れるようになり、16世紀にヨーロッパに持ち込まれた。現代のヨーロッパ料理では、ジャガイモは欠かせない。土地がやせていて麦類しか作れなかったヨーロッパにとって、やせた土地でも育つジャガイモは、まさに救世主のような存在だった。今でもドイツ料理に代表されるように、ヨーロッパではジャガイモはかせない食材となっている。

【悪魔の植物】

しかし、見たことも聞いたこともないアメリカ大陸の作物が、簡単にヨーロッパの人々に受け入れられたわけではなかった。ジャガイモのことを知らないヨーロッパ人の中には、芋ではなく、ジャガイモの芽や緑色の部分を誤って食べてしまうこともあったという。これは大事件である。
ジャガイモの芽や緑色に変色した部分は、食べてはいけないと言われている。ジャガイモは、芋は無毒だが、ソラニンという毒を含む有毒植物である。ソラニンはめまいや嘔吐などの中毒症状を引き起こす。その致死量はわずか400mgというから、かなりの毒の強さだ。ジャガイモはナス科の植物で、ナス科の植物には有毒なものが多い。

さらに、ジャガイモは「聖書に書かれていない植物」であった。聖書では、神は種子で増える植物を創ったとされている。ところが、ジャガイモは種子ではなく芋で増える。ヨーロッパの人々にとって、芋で増えるジャガイモは奇異な植物だと思っただろう。西洋では、聖書に書かれていない植物は悪魔のものである。そして、シャガイモは「悪魔の植物」というレッテルを貼られてしまったのである。

中世ヨーロッパは、魔女裁判などが盛んに行われた時代でもある。そして、ついには悪魔の植物であるジャガイモも裁判に掛けられてしまうのである。世の中の生物は雌雄によって子孫を残す。しかし、ジャガイモは種芋だけで繁殖する。これが性的に不純とされて、ジャガイモは有罪判決となってしまうのである。その刑罰は、驚くなかれ「火あぶりの刑」である。直火でこんがり焼いたジャガイモからは、良い香りが漂ったような気もするが、人々はこれを見ても美味しそうだとは思わなかったのだろうか。

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