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アートビジネスはコロナでどう変わっているか

歴史の変遷はあとから振り返らなければわからないことも多いと思いますが、渦中にいてこそレポートできるライブ感もあるのではないかと思い、見聞きしたことを書き綴っています。

前回のコロナ襲来、大相撲千秋楽に続き、アートビジネスについて書いてみたいと思います。

1.アート・バーゼル香港の開催中止で戦慄!

アート業界にとって最初のコロナショックはアートフェアの中止ではないかと思います。

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世界のアートフェアの最高峰といえば、アート・バーゼルですが、毎年、3月にアート・バーゼル香港が開催されます。

アート・バーゼル香港は、中国大陸と繋がっている香港での感染リスクが高いと判断し2月に中止判断がでていました。それはアートビジネスに関わる方々にとって大きな衝撃で、いろんな方が速報をSNSにあげていました。

大規模なアートフェアにはそれこそ世界中のギャラリーが集まるので、1ヵ月以上前に船便で作品を送ります。既に配送手配済みのギャラリーも多々ある時期での中止判断に、ことの重大性をあらためて認識させられました。

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「あのアート・バーゼルが中止判断するとは!?」
日本のアートビジネス業界の面々に戦慄が走ったと思いますが、今から振り返れば、さすが、妥当で素早い判断だったと思わざるを得ません。

2.日本最大のアートフェア東京は開催2週間前に中止判断、そして秋には復活!?

しかし、アート・バーゼル香港の中止発表があった2月時点では日本はまだコロナがくすぶっている状態。東京オリンピックも控えている中で、皆がやせ我慢をしていました。日本はコロナを乗り越えられると。

日本のアートビジネス界隈では、日本最大のアートフェアであるアートフェア東京の開催可否を固唾をのんで見守っていたと思います。

アートフェア東京は毎年、アート・バーゼル香港の少し前に開催されており、2020年は3月19日-22日の予定でした。

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ところが、2月後半には企業が続々とリモートワークの準備に入り、政府からも不要不急のイベントは自粛するように要請が出始めます。続々とイベントがキャンセルされていきました。

これは日本政府お得意の自粛要請です。あくまで主催者の自主判断とされ、同調圧力と忖度によってなし崩し的にイベントを開催しにくくするのが目的でした。

3月4日、開催まであと2週間と迫った中、アートフェア東京から中止のプレスリリースが打たれました。相当悩んだ末でのぎりぎりの判断だったと思います。

出展を予定していたギャラリー関係者も残念な反面、感染症の不安から解放されたという人も多かったと思います。

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あいまいな日本の感染症対策の中で、ぎりぎりまで判断に迷うところだったと思いますが、結果として英断だったと思います。

同じ時期に強行開催したK-1さいたまアリーナは県知事が会場にまで来て開催取りやめを依頼するような大騒ぎになり、主催者はワイドショーの非難の矢面に立たされました。(格闘技ファンとしてはとても残念でした。)

その後、正式にオリンピック延期判断がでたのが3月24日でした。4月7日には緊急事態宣言が出るので、いかにオリンピック開催という旗を降ろさないために皆が忖度していたかがわかります。

なお、アートフェア東京は早くも9月17日に天王洲アイルでのアートフェアを開催予定であり、11月6日には昨年に続き京都・二条城でアートフェアを開催する予定です。

ギャラリー各社も感染症対策をしながらギャラリーを開いているところなので、今度こそはという想いも強いと思いますが、昨今の第二波による感染者の増加をみながら、また固唾をのんで見守る日々が続きそうです。

3.進むようで進まないアート販売のオンラインシフト

アートフェア東京の中止をうけて、Art Scenesというサイトでアートフェアに出展予定だったギャラリー各社の任意による作品販売が行われました。

世界のアートフェアでも中止になったところはオンライン展示に切り替えたところが多かったようです。

フィジカルにアートに接することができないため、一気にオンライン販売が進むかと思われましたが、売上自体は限定的だったようです。

アートフェア東京の2019年の売上が29.7億円でした。一方、オンラインでは、アートフェア東京の公表によれば商談取引額は1億円だったようですが、日経ビジネスの「フェア中止で大打撃 旧態依然のアート市場は変われるか(5月25日)」という記事によると5月半ば時点で1千万円の売上だったということでした。

興味深いのは、2003年から続くアートのオンライン販売サイトタグボートでは、4-5月の売上は4割増加した(平均単価14万円)と日本ネット経済新聞の記事で語っています。

コレクター向けの高額作品はギャラリストがコミュニケーションをしながら販売するためオンラインでの販売は難しいですが、比較的手ごろな作品は、部屋に留まることが増えたことで需要が増したと言えそうです。

4.オンラインアートイベントの開催活発化

そもそもこれまで、ウェビナーといわれるオンラインイベントなるものがほとんど普及してきませんでしたが、5月頃から一気に増えました。

今や、会社のメールアドレスには毎日、ウェビナー開催のお知らせが届いています。

アート業界も例外ではなく、その口火をきったのはArtScouterで、ゴールデンウィークに入る前の4月には大手ギャラリーと組んでアーティストトークを連続開催していました。

緊急事態宣言下で、ウェビナーの物珍しさもあり、これまで東京でしか聴くことができなかった大手ギャラリー所属アーティストのトークを視聴する方が日本中からオンラインに集まってきていました。

その後、オンラインアート販売各社もアートの知識を伝えるようなウェビナーを連日開催しています。

オンラインイベントが今後も継続して開催されると考えると、オンラインで自身のコンセプトをうまく話せることがアーティストにとって新たに求められる能力になる可能性があります。(もちろんすべてのアーティストではないですが。)

また、オンラインでの演出や、そもそも視聴してくれるアート愛好家の獲得がギャラリーやオンラインアート販売サイトにとってますます重要なポイントになりそうです。

5.Matterportがアートビジネスを変える!?

2月ごろから日本で本格化したコロナウィルスの感染拡大は美術館にも影響を与え、緊急事態宣言の間は休館する美術館が相次ぎました。

特に、企画展の開催期間中の美術館はせっかく展示した作品が途中からお客様に観てもらえないことになって途方にくれたのではないかと思います。

そこでいち早く動いて、衝撃を与えてくれたのが森美術館の「未来と芸術展」でした。Matterportというサービスを用い、3D空間で動画による解説と組み合わせたオンラインサービスは、まさに未来感のある芸術そのものでした。

パソコンやスマホではなく、大きなテレビにつないで3Dの「未来と芸術展」をみると、これだけで十分に楽しめるコンテンツになっていることがわかります。

その後、東京国立近代美術館でも「ピーター・ドイグ展」でMatterportが使われていました。確かに絵画作品の質感までは伝えられないですが、それでも会場の雰囲気を楽しむのに十分なサービスに仕上がっていたように思います。

美術館が今後、どのようにMatterportを活用するかは未知数です。特に企画展は作品を世界中から借りていることが多く著作権の処理も煩雑でしょうし、Matterportでの公開が入場者を増やすのか減らすのかも不透明です。

一方で、興味深い動きとして、テヅカヤマギャラリーやコヤマトミオギャラリーといった日本のトップギャラリーがMatterportで個展の紹介を始めています。

オフラインでフィジカルにアート作品を展示しつつ、その様子を動画やMatterportで紹介しているのです。

複雑に思えるMatterportですが、実はiPhoneで無料のアプリをインストールし、順番に室内を撮影して回れば簡単に3Dの展示空間を生み出すことができます。

できるだけ多くの方に作品を観てもらいたいビジネスサイドのアート関係者にとって、個展の開催期間だけでなく、個展終了後も展示風景をアーカイブとして残したいはずです。

なぜなら、後日、そのアーティストに注目した人に、各作品がどのように展示されていたのかをみせられることで、作品の価値をきちんと伝えられるからです。

もちろん、Matterportがその3Dアーカイブのデフォルトになるかはわかりませんが、今後、テクノロジーを取り入れてギャラリーの形態も変わっていくのは間違いないでしょう。


以上、ざくっとですがコロナウィルスの影響が始まってから、8月上旬の今に至るまでのアートビジネス界隈の動きをまとめてみました。

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