甦るフランク・ロイド・ライト(15)Hanna邸
ハンナ邸 Hanna–Honeycomb House
前回、ジェイコブス邸により、私の住宅は、一気に進化した。しかし、低予算にしすぎて、芸術ポイントも限界まで絞ってしまった。私のデザインは、予算を積まれれば、もっとすごい。
今回は、初期ユーソニアン住宅の芸術的側面が爆発しているハンナ邸をご紹介したい。
なぜ六角形なのか
ハンナ邸は別名、ハニカムハウスと呼ばれている。平面グリッドが、六角形でハニカム形状だからだ。ハチの巣みたいじゃ。
なぜ、六角形を採用したか、ご説明しよう。
私は、箱を好まない。
箱の中では、息が詰まって窒息する。箱は、空間を殺し、その死んだ匂いがする。
生きられた空間のために、箱を消すことが、私の建築のテーマの一つだった。
箱の解体のために、まず隅柱を疑った。(上図)
彼らがエッジを強調し、箱を箱たらしめている。
邪魔でしかない。私はキャンチレバーを導入し、隅柱を取っ払った。隅柱を排除した途端、空間が呼吸し、正気を取り戻した。
これが箱の解体がスタートだ。当初、隅柱があったキャンチレバーの下には、オープンスペースが生じ、空間がみるみる脱走し始めた。
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私の箱の解体への探求は止まらない。
さらなる空間の解放を目指して、グリッドの開発を進めた。私は幾何学の魔術師だ。
やはり正方形グリッドが良くない。直角が隅柱と同様に、箱感を増長させる。
均質な箱を生成する悪きものだ。
脱箱型のために、私は、直交グリッドを疑った。その際、登場したのが、六角形グリッド(ハニカムプラン)だった。
この砂漠のキャンプ(上図)が六角形の初出しであったが、1929年の株式市場の暴落のため、実現はしなかった。私の不遇の時代だ。
ハンナ邸が、ハニカムプランの最初の実現作になる。(下図)このような挑戦的な平面計画を承諾したハンナ夫妻に感謝したい。ハンナ邸の平面には、箱を想起させる直角などない。
ジェイコブス邸より複雑だが、100坪37,000ドル(インフレ後784,194ドル)なので、現代における坪単価117万円程度にまとまった。
ハニカムプランは、空間の流動化を促す。箱の存在感は消え、空間のつながりが強調される。
空間同士が、泡のようにぷくぷくつながり出す。
箱と人間という古き悪しき関係を脱し、新たなる空間と人間の関係が明らかになった。
ハニカムプランは、ハンナ邸後しばらく続ける。
その後、正三角形や、正三角形を2つ組み合わせた菱形に進化する。ディテールを最適化できた、菱形平面が作品数としては一番多いが、晩年には六芒星平面にもトライした。(下図たち)
ディテールの開発
ハニカムプランを構想したのは良いが、構法を最適化したジェィコブス邸と違って、ハンナ邸の建設には困難を極めた。現場の施工者たちは、我々の図面を見て途方にくれた。彼らは直角の取り合いしか作ったことがなかった。それでは箱の解体は進まない。
そのため、全ての取り合いの詳細を図面化する必要があった。
しかし、この経験が後に生きてくる。
ハンナ邸以降、60・120度の取り合いを連発するのだが、ハンナ邸で詳細図を作成したことにより、どんな納まりにも対応可能になった。
屋根の修辞
ハンナ邸のハニカムプランの第一の目的は、箱の解体にある。内部空間の解放だ。箱が遮る空間の響きを自然へ開放することだ。隅柱を無くし、キャンチレバーで、屋根を空に向かって跳ね出した。
その副産物として、屋根もより自由になった。
壁の存在感が薄まることにより、屋根の意義が高まった。今まで内部の人間を護るのみの機能が、環境をも優しく包み込めるようになった。
ハンナ邸の敷地は、敷地内に高低差があり、屋根も小刻みに分節しながら適応した。
屋根同士は、木の葉のように軽やかに重なる。
大地と屋根の良好な関係が、箱を解体することにより、達成された。
箱の解体は、私の作品で見出すことができる共通のテーマだ。現代でも言及され続けているテーマだ。私の作品を見返す時、気にしてくれたら幸いじゃ。
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ハンナ邸で、住宅での箱の解体をご説明した。
次回は、スケールを上げた箱の解体を実践したJohnson Wax社屋を予定しておる!