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自分史コラム せめて今日くらいは憲法を感じたい

今日5月3日は憲法記念日です。
普段の生活のなかで「憲法」に触れることってほとんどないですよね。

でも現在の日本国憲法は、76年前、実に310万人以上の日本人が犠牲になった第二次世界大戦の反省のもとに生まれた、と思ったら、いてもたってもいられなくなり、せめて今日くらいはこれを読んでくれる人と一緒にその重さを感じたいと、これを書くことにしました。

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そもそも憲法ってなに?最も知っておかねばならないこと

まずはこれがないとはじまらない、と調べていて発見した下記サイト。

憲法とは何かを子供向けにわかりやすく簡単に説明しました

憲法は子どもも含め全国民のものですから、日本の将来を担う子どもがその意味を分からなければダメですよね。このサイトはとても分かりやすいので、ぜひ読んでほしいです。

忙しい人のために一言でいえば、
「憲法は日本国民が国(政府)に守らせるための最強の法律」
ということ。

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法律って国民が守るもんじゃないの?と間違えがちですが、実は国民が、国(政府)のやることが暴走しないように守らせるものなんです。
これを「立憲主義」と呼びますが、それを分かりやすく説明したのがこの本です。子どもでもわかるものですので、ご紹介しておきます。

憲法と立憲主義の定義を大原則として、
・なぜこれを変えたい!と声高に叫ぶ人がいるのか?
・そういう人たちは誰なのか?
・そしてその結果、私たちはどうなるのか?

を考えることが、私たちにはいま絶対に必要だと思うのです。

現憲法ができたときのストーリー

大原則は理解したとはいえ、 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義(戦争放棄)という三本柱以外に、本当にその成り立ちを自分で理解しているのか、改めて調べてみました。もう少し知りたいと思った方はお付き合いください。
これらの経緯について、全部で8回にわたり書かれた連載を見つけました。
連載:今憲法を考える 日本国憲法ができるまで① なぜ、日本国憲法が制定されたか

「生長の家」という宗教団体のサイトで、思想的にもいろいろと意見のある方もいますが、この内容については非常に客観的に分かりやすく書かれているので、あえて載せます。
詳しく知りたい方はぜひ読んでいただければと。
 
ともあれ、11章103条からなる現憲法は、1945年終戦後に連合国から出されたポツダム宣言に基づき、幣原喜重郎内閣をはじめとする日本政府と、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の激論のすえ1947年から施行され現在にいたります。

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当初の日本政府案は、天皇主権で国民の人権も法律で制限できるという、明治の大日本帝国憲法の修正版のようなものでしたが、それが却下されGHQ案をもとに新憲法が制定されました。
 
そのため一部の人は「押しつけ憲法だ」と、戦後一貫して憲法改正を訴え続けています。
しかし調べてみたところ、当時日本政府以外に十数種の草案が多くの日本人によって協議されており、GHQはそれらを参考にして自らの案を作成したことが分かりました。
 
また憲法について戦後ずーっと議論の対象となる第9条(戦争放棄)は、幣原首相からの提案で、それを受けたGHQ最高司令官マッカーサーが「腰を抜かすほど驚いた」という事実も、この連載を読んで詳しく知りました。
ちなみに1946年、毎日新聞が国民にむけて実施した憲法改正草案のアンケートによれば、象徴天皇制への賛成85%、戦争放棄への賛成は70%だったという事実もあります。

さらに驚いたのは、日本国憲法制定においてGHQよりも上位の存在であった連合国11カ国の極東委員会が、新憲法が本当に国民の賛意を得ているかを確かめるために、当時の吉田茂内閣に打診したものの、憲法の見直しを求める声は政治家からも国民からもあがらなかったという事実です。

ここでも改めて、前述した3つのことを今こそ私たちは考えねばならないと思うのです。

そしていまの状況は?

そうしてこれまできた日本国憲法は、戦後75年のあいだ何度も改正という声があがりながらも一度も変えられることなくきました。

その理由として、その手続きが下記のとおりとても大変だということがあります。
 1.衆議院で100名、参議院で50名以上の賛成をもとに、改正案の提出
 2.その後、両院で総議員の3分の2以上の賛成
 3.国会の発議により提案
 4.国民投票で有権者の過半数の賛成
 5.天皇の名で公布

しかしそんなに大変な改憲について、事態はかなり切迫しています。
自民党をはじめとする政権与党は、4の「国民投票」に関する法律(憲法ではありません)を改正する案をこの5月6日に採決しようとしています。
2018年以来、継続審議になっていたものが、この連休明けに決められようとしているのです。 

全部で7つの項目からなるこの案、昨年からtwitterを中心に #国民投票改正案に抗議します というハッシュタグをつけて反対の声が大きくあがっています。
その最も大きな問題点は、改憲をしたい人たちが資金力をいかしてTVなどでCMを打つことの規制がないというところ。
 
今の日本においてTVでバンバンと「憲法改正は必要だから国民投票しましょう」と連呼されたら、なにも考えないまま「変えないとダメなのか」となってしまうことを懸念しているのです。
その他にもいくつかあるので、友人の若いママさんが作ってくれた分かりやすい画像で許可を得て公開します。

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さあ、あなたはどう思いますか?と聞きたいところですが、私の意見もちょっとだけ聴いてください。

いろいろ書きましたが、私はこう思っています。


この投稿は、なるべく中庸で理性的に憲法について理解してもらい、いろいろな人に考えてもらいたいと思っていたのですが、やはりまとめにあたり、自分の意見を書くことにしました。
 
私は今の日本でこの議論を早急にすすめることには大反対です。
今の政治の質、そして国民の質がそこまで到達していないことを前提に、反対の意を表明せざるを得ません。 

2011年からなにも進んでいない原発事故の処理、それを差し置いて進む再稼働問題、森友・加計学園問題をはじめとして数え切れないほどの汚職、コロナウィルス対策、経済格差の激化など、どれをとっても私たち国民の命を左右する憲法を彼らの主張に委ねることに同意できないのです。

しかも政権与党である自民党の人たちの本音ともいえるこの動画を見て、その思いは決定的になりました。中には前首相の安倍さんや、よく見知った顔の政治家がいますよね。
字幕がうるさいですが、もしまだ見てない人がいたらぜひ観てください。約2分ちょっとの短いものです。

どうでしょうか。私個人の意見ならともかく、これ見せられちゃうと、どうにも恐ろしいとしかいいようがない。

国民主権でなくなる、基本的人権や平和主義はいらない???
しかもあれだけメチャクチャな政治をしている人達が???
一生懸命憲法について詳しくないのに考えて書いてきたけども、この人たちに自分ら、子どもたちの将来を任せられるの!?
 
やっぱりどんな綺麗事を言われても、この人達に従うのだけはイヤだ。
そう断言させてもらうしかありません。

しかし、彼らは一応国民に選挙で選ばれた政治家。
こうした人達を選んだ国民の意識レベルが実は最大の問題ということも理解しています。

例えばこの投稿だって、おやすみのときに眉間にシワ寄せて政治のダメさとか、憲法なんて読みたくないという人が大多数というのが現実。
お金儲けや美容、ダイエット、お笑いみたいな話題のほうが圧倒的に多いわけで、日本人が75年前に310万人死んだなんて知らない人がほとんどでしょう。

でもそんな状況を肌身に感じているからこそ、1年に一度くらいは憲法を思いきり語ってもいいはず、といてもたってもいられなくなったのです。

最後に

結局のところこういうまとめになってしまいましたが、いろんな意見があるでしょうし、それを言う権利こそ今の憲法が保証する「基本的人権」です。

「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」
18世紀のフランスの哲学者ヴォルテールが残した、私が大好きな言葉があります。高校のときに聴いて感動しましたが、これって基本的人権ですよね。

でも、これをいらないという人たちが憲法改正をうたうなら、もういろいろと細かいことを知らないでも反対するしかチョイスはありません。
なんでかって、私は彼らの奴隷じゃないんですから。

しかし、最後にあたり、今一度この投稿を書くことにした理由に冷静に戻りたいと思います。
この憲法は、310万人を超える日本の、さらにいえば世界全体で5〜8,000万人ともいわれる犠牲を払い、その反省のもとにつくられたものであるということ。

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そこには犠牲者や家族なども含めた、莫大な数の論理も理屈も飛び越えた悲しみと怒り、絶望の感情があり、それは紛れもない「事実」なのです。
 
それを戦後76年目の憲法記念日に際し「考える」よりも「感じたい」と思い、あえてタイトルを「感じたい」にしました。
 
感情的になっても…というのは痛いほど分かります。でも、その根っこの根っこはその犠牲を感じれるかどうかこそ。
だからこそ今の政治家たちに任せた憲法改正には反対なのです。

最後の最後に、もしかしたらこの先変わってしまうかもしれない、現日本国憲法のなかで私が大好きな前文、それを小学校6年生が一生懸命暗証した動画を記して、このコラムを終えたいと思います。
 
当初の目的とはちがい、極めて主観的、感情的な書き方に変容してしまったこの投稿。
長いあいだお付き合いいただきありがとうございました。

日本国憲法前文

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

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