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自分史コラム:好きが高じてドラマは生まれる

みなさん「蕎麦」はお好きですか?
私はとにかく蕎麦が好きで、おそらく外食で一番食べているのが駅そばと言っても過言ではありません。ラーメンやハンバーガーに比べてはるかにヘルシーだし、安いし、できたら全国の「駅そばめぐり」をしたいほどです。

もちろんちゃんとした蕎麦屋も大好きですが、悩みは近くになかなかおいしい蕎麦屋さんがないこと。
郊外に住んでいる私のような人にとっては、車で行きたいというほどの蕎麦屋さんって実はあまりないのが現実ではないでしょうか。

そんななか、私が大好きな蕎麦屋に「千花庵」があります。
すでに10年以上前「十割(蕎麦粉100%)蕎麦の概念が変わりますよ」と知人に紹介されて連れて行かれた鎌倉の本店。

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一口食べただけで、その繊細な味と豊かな香り、適度な歯ごたえとのど越しにビックリしました。
 
それまで十割(蕎麦粉100%)蕎麦というのは、茶色く短く太い「田舎そば」というイメージで、それはそれで味があって好きだなと思っていたのですが、千花の蕎麦は聞いたとおり、全くその概念を覆すもの。
私は「これが本当の蕎麦なんだ!」と一発でファンになってしまいました。
今日はその蕎麦がつないだご縁で起きた、私の自分史エピソードをお話ししたいと思います。

「文化としての蕎麦」を継承するための学校つくり

食後、店主の鈴木さんのこだわり、蕎麦に対する思い、千花庵を大きくしていく計画を聞き、ますます意気投合。
「この人がやるならこれは実現するかもしれん」と思った私は「もしチャンスがあれば一緒になにかできたら!」と話しました。
 
その数年後、彼は横浜の「野毛」に二号店を出店。
私は当時横浜に住んでいて、野毛への出店を切望していたので、それを聞き歓喜しました。野毛は狭いエリアに700以上の飲食店が並ぶ繁華街。
ことあるごとに通い、横浜以外からも食通のお友達をお連れして、そのたびに聞く「この蕎麦は凄い!」という言葉にニンマリしていました。

その間にも、鈴木さんは休みの日、何度もビジネス構想や、その時の悩みなどを聞かせてくれました。その構想の一つに「蕎麦打ち学校」がありました。

「私たちが親しんできた町の蕎麦屋さんは、実は近年後継者不足でどんどん廃業して減っています。私はそれがとても残念で、将来は学校をつくって優秀な蕎麦打ちをたくさん養成し、日本の食文化である蕎麦をちゃんと未来に継承したいんです。そのときはぜひお手伝いをよろしくお願いします。」

彼の言葉に私も「もちろんです。大好きな蕎麦と、その文化を継承するのに私ができることでお役に立てるなら。」と話してきました。

そば

そこから数年。
今年のはじめ、彼が「いよいよ構想を実現するときがきました。物件が野毛に見つかったので、蕎麦学校をはじめます」と言ってきました。
物件は野毛の本通りに面した元カバン屋。なかなか貸し出されなかった物件が、本当にタイミングよく貸してもらえることになり、長年聞いていた彼の構想が一気に現実化することになりました。

最高のチームワークがなし得た奇跡

計画が具体的にスタートしたのは今年2020年の8月、オープンは11月に決定。
ビジネスプランはあれど、教室の名前からキャッチコピーなどの文言、お店の内外装、チラシ、ウェブサイトも作らねばならず、かなりスケジュールはタイトでした。

そこで私が主に文言を担当し、そのほかについては心から信頼する友人のデザイナーやクリエイターに依頼したところ、みんなが忙しいなか二つ返事で引き受けてくれ、急ピッチでいろいろなことが完成していきました。

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デザイナー、ライター、webクリエイター、建築家からなる最高のチーム。

まずは店名と、店の顔ともいえるロゴマーク。

名称は誰にでも親しみやすくスタイリッシュなイメージにしたいと「工房」や「アトリエ」などの案から「スタジオ」に決定。このあたりは私と妻の会社 Two Doorsが担当しました。
 
北欧と和モダンをベースに、蕎麦を切る包丁をモチーフにしたロゴは、大手企業のパッケージデザインを手掛ける株式会社プランタの高野さん作。いくつかのステキな案のなか、メンバーの全会一致で決定しました。

コンセプトに基づいた内外装をお願いしたのは、横浜のまちづくりにも積極的に関わる一級建築士 角野渉さんの角野デザインノード

そして最後に残った最難関のWebサイト制作は、彗星のごとく現れて、予約システムをデザインと併せ完璧に組んでくれた座組株式会社の眞弓さん。

本当に嬉しかったのは、全員がプロとしての仕事をしつつ、楽しみながらいろいろな提案をしてくれること。アドバイスしあいながら、さらにクオリティがあがっていきました。
これまでいろいろなプロジェクトをやってきましたが、短い期間のなか、こんなにスムーズな展開は珍しいと思います。

そしてついに11月11日(水)「蕎麦打ちStudio CHIHANA」 がオープンしました。
何年も前から話してきた構想が、やるとなったらいきなり動き出した。感無量ではありますが、ここまでのスピーディかつスムーズな展開に不思議な気分です。

外観


蕎麦打ちStudio CHIHANAは、火〜日の午前11時30分〜午後8時30分までの6クラスを予約可能。道具もすべて貸し出しで、いつでも手ぶらで好きなときに蕎麦が打てます。

また鈴木氏ならではの「初めてでもおいしい十割蕎麦が打てる」独自のメソッド。
もちろん技術は深めれば深めるほどその先がありますが、自分でおいしい蕎麦5人分を初回から打てて持ち帰れるというのが最大の魅力です。


私も先日ひさしぶりに打ち、家で食べました。
細く切るのは難しいので、3回目とはいえ太さはご愛嬌ですが、蕎麦の味がすばらしい。満足度がとにかく高いのです。

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こうして走り出したばかりの蕎麦打ち教室事業ですが、友人知人はもちろん、通りがかりや、SNSで発見してくれた方などの予約もありがたいことに増えています。
「これまで食べたお蕎麦のなかで一番おいしかった」とコメントをくれたり、10回目の結婚記念日に初めての蕎麦打ちをしに来てくれたご夫婦もいらっしゃいました。

そんな反応を見るたび、千花庵のファンだった私としては「そうでしょう!」ととても嬉しい気分になったり感動したりしています。
私自身も、シンプルながらも奥の深い蕎麦打ちの魅力に「次はさらにおいしい蕎麦を打ちたい」とハマりはじめました。

自分を信じれる生き方をめざして

この事業がこんなに早くいい形で実現するとは予想できませんでしたが、「好きが高じるとドラマを生む」ということを私は実感しています。

もちろん、これからいろいろな問題や試練もあるでしょう。
しかしいろいろ経験したなかで生まれた「好きなことや希望を捨てずにいけば実現すると自分を信じれる生き方」を私は大事にしたいです。
なによりそのほうが楽しいから。

時代はどんどん変わっています。人生って思うほど長くない。
青臭いと言われようがなんだろうが、好きなこと、夢や希望を持って生きていきたいと思います。

ロゴのコピー


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